司法のありかた

2017年6月14日 (水)

玄海原発裁判の敗訴

News & Letters/571
住民訴訟、沖縄の訴訟、そして原発の訴訟では、住民側がほとんど敗訴する。
それは権力の意思を忖度する裁判官が日本の裁判所、特に最高裁で支配的であるからだ。
玄海原発再稼働差止の裁判の今日の判決もその一つである。
私もたくさんの住民訴訟をやり、次々と敗訴を重ねてきた。
だが、私は、ほとんどすべての裁判で、法律的にも論理的も私の勝利であったと総括している。
相手側の弁護士もそれをよく知っていると思う。裁判の後こっそり是正したりしているのである。
佐賀地裁の今回の敗訴判決について、果たして実際は勝利であった、といえるであろうか。
判決文の骨子を見る限り、そうは言えないとおもう。
最重要争点の規準地震動の経験式について電力会社や規制委員会の入倉三宅方式に対して
反原発側は、武村方式を対置した。裁判所は一発でこれを葬った。
批判には、外在的と内在的の二つの方法がある。電力会社の方式にこちら側の方式を対置するのもいいが、敵側の論理の矛盾を突く内在的批判は極めて有効である。
武村方式を対置するだけでなく、地震本部が出した新レシピの方式を出して権力内部でも電力会社の規準地震動では、原発は安全ではないということを証明するべきであろう。政府の出した新レシピで玄海原発直近の竹木場などの活断層を計算すれば、九電の現行の規準地震動の想定が崩れるということを示すべきであった。
権力内部の矛盾を衝き裁判官を動揺させなければ勝てる見込みはない。
裁判には負けても、だが法律的にも論理的にも我々の勝利だ、分かる者にはわかる、ということが言えなくてはならない。
私は、これまでの原発訴訟で、使用済み燃料の問題の争点化が極めて弱いと考えている。
原発の稼働上の問題と同等の危険性を持つものとして使用済み核燃料の処分を問題にすべきであった。
これが争点化されていれば、電力会社も政府もろくに答えられないから裁判官も住民敗訴の判決の書きようがないだろう。
敵の重大な弱点を衝くことを怠っては勝利はおぼつかない。
大事なことは、今はいくら負けても、実際は勝利していた、といえるほどの論理を尽くしたのか、なのである。
私自身の反省として、弁護士先生や一部専門家に訴状や準備書面をすべてゆだね金と動員だけで裁判に参加しているだけでは住民訴訟とは言えないということである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年3月30日 (木)

伊方原発広島地裁判決と高知新聞記事

News & Letters/563

大阪高裁の逆転判決に続いて、伊方原発の差止仮処分申請却下された。
理由はまだわからなが、国民は暗澹たる気持ちだ。
この不当判決が出る日の高知新聞の朝刊で広島地裁での裁判の争点について解説記事があった。

この記事では「基準地震動」が争点となっている。
しかし、この記事をいくら読んでもその「争点」がはっきりしない。
中央構造線断層帯の地震動の評価が争点であるとするが、「住民側は様々な学説を引用」て、現行の基準地震動は過小評価だという、としか説明されていないから、意味が不明である。

原告住民側の裁判記録を見ればわかるが、原告が主張している根拠は、IAEAの国際基準とそれを具現化した日本政府の推本が出したレシピである。レシピといわれるのは正確には「震源断層を特定した地震の強震動予測手法」のことであり、その最も新しいのが2016年6月10日にでたものである。これによればほとんどすべての日本の原発は稼働できない。

今回の伊方判決ではどうもその判断を避けたようであるが、最大の争点は、日本政府が出した地震評価の方式を規制委員会や電力会社が拒絶している事実について裁判所だけでなく、国民や報道各社がどう考えるのか、ということなのである。

政府推本が出している地震評価方式は、高知新聞が言うような「学説」の一つではなく、日本の大方の地震学者の一種の統一見解なのである。

レシピは、規準地震動に関する地震学者の統一見解であり、この見解は、全国の都道府県の地震についての指針であり、原発についても最低限これを踏まえなければならない規準なのである。従って報道各社がこのレシピについて何も報道しないのはなぜなのかが問題になる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

大阪高裁の判決

News & Letters/562

高浜原発についての大阪高裁の判決は、玄海原発の福岡高裁判決(2016年6月27日)と基本的に同じ趣旨で、司法は行政に従う、原子力規制委員会という行政機関が決めた安全基準に適合しておればそれでよい、というものである。これはもう裁判所の自殺のような判決である。

この判決の趣旨について何ら法的根拠も示されていない。行政の決めたことについて批判的に分析することもしない。
安倍政権の意思を忖度したものというべきであろう。これは、憲法第76条第3項の規定
「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法および法律にのみ拘束される。」

に違反する。良心や憲法や法令を打ち捨てて行政の決めたでたらめな基準に従って、権力の奴隷となる。

地裁段階では、まだ裁判官に良心が残っているものもいるが、高裁になると感性がほとんど麻痺していくのであろうか。
もともと国家権力を守る擁壁としての裁判所に多くを期待するのが間違いなのである。
裁判の意義は、勝つことによって人民の権利を守ることであるが、裁判を通じて真実を人民に知らせ、闘いを広めることにある。

そして、敗北の主な理由は、裁判官の良否にあるのではなく、人民の間に真実が十分浸透せず、そのため権力側がでたらめなことを言い続けることができている状況にある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年3月19日 (日)

前橋地裁判決の新聞評価

News & Letters/557

昨日3月18日の高知新聞の社説で前橋地裁判決について論評があった。
「市民感覚から言っても明快な判決ではないか」と支持した。

そして、結論として「国や東電は今一度、被害者救済の在り方を見直すべきだ。」
過去の事件についての評価でしかも裁判所の判決であれば、手放しで賛同するのも容易であろう。

しかし、今回の前橋地裁の判決は、過去の事故による被害の救済だけが問題になったわけではない。
原発の安全性、危険性を認知しながら対策を打たなかった電力会社や国の在り方を焦点にしている。

それは特に、地震の専門家による政府が出した二度にわたる指針(特に2002年7月の「長期評価」を、同じ政府機関である原子力関係機関が無視した
事実について厳しく責任を問うという判決になっている。訴訟記録を読んでいないが新聞報道などで判断するに、原告の被害者側は、そのことを申し立てたと考えられる。
裁判所側としても、自己の判断ではなく政府推本(地震調査研究推進本部)の知見をもとに原発側の非を論難できたのである。

高知新聞などマスコミ側の問題は、

第1に、

二度にわたる政府の来るべき大地震や大津波についての指針が出たにもかかわらず、原発側がこれを無視し続けてきた事実をなぜ克明に報道しなかったのか
被害を受けた後になって、しかも裁判所判断の後にこれらを明らかにして何の意義があるであろうか。

第2に

、問題は現在だ。政府推本は、昨年6月に来るべき地震の算定方式を国民の安全側に改正(改正レシピといわれる)した。
これによればほとんどの原発の現行の規準地震動を大きく超え、原発の稼働ができない。
玄海原発でもある学者の試算ではその原発の規準地
震動520ガルを大きく超え1000ガル近くの値が出るという回答が私になされた。
この改正レシピは衝撃的であり、脱原発全国弁護団会議の海渡、河合弁護士連名の規制委員会あての要請書も出され、各地(玄海原発以外)の住民訴訟で大きく取り上げられている。

マスコミや学者にとって過去の事件についての批判的評価は容易である。かれらはしかし、現在のついての評価は常に大丈夫という。
常に過去は悪く、現状は良好だという。

福島原発については、前橋地裁判決のように過去はだめだった、という。しかし、現状の原発については過去に対する批判のメスは振るわない。
原発に関して特に基準地震動について政府の正規の地震評価の総本山が出している算式を、原子力委員会や電力会社がこれを拒否、無視している。
この重大な事態、反逆行為について、報道は何も取り上げない。
大事故が起こった後で、またぞろ、実はこうであった、こうではなかったと、いくら論評しても後の祭りだ。

過去の事案について振るったメスを、現在の事案にこそ腕をめくって振るうべきだ。
規制庁や電力会社が政府推本の出している方針に逆らった事実は過去だけでなく現在も進行中なのである。
しかもこれは国民全体の生命に直結する事案なのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月21日 (月)

原発の規準地震動

News & Letters/536

九州の玄海原発に対して二つの訴訟団がある。私が所属しているプルサーマル裁判の会と「原発なくそう九州玄海原発訴訟」の会である。両方に特徴のある有意義な訴訟だ。
だが、共通したものがある。両方の訴状や準備書面を見ても政府「地震調査研究推進本部」の「修正レシピ」又は最近の「新レシピ」が出てこない点である。

他の原発の裁判では住民側が政府作成のそのレシピを強く押し出して、それで計算せよ、そうするとほとんどの原発はそれぞれの電力会社が作成し規制委員会が認めた基準地震動を超過し、再稼働ができなくなる。と主張している

。両方の規準地震動に対する批判、一方では入倉方式はだめだ武村方式を使えという主張、他方では基準地震動が過去の地震の平均像にすぎず、平均を超える地震動が無視されているから、基準地震動そのものが無効だ、という主張はその通り正しいと思う

しかし、その主張に加えて、政府作成のレシピの試算を示すことを入れてもその主張を何も損なうことはないだろう。むしろ、それぞれの主張を補強する証拠となるし、裁判官や一般国民には分かりやすい。規準地震動というのは原発が受けるであろうと想定される最大の地震動のことである。

各原発の定めている基準地震動は政府の作成した計算方式で計算した地震動の数値を大きく下回り、原発施設の耐震性がない、という話は難しい地震学の話が分からない者でもだれにでもわかるし、素人の裁判官に受けやすいだろう。まさか政府の定めている計算方式を裁判官が電力会社と一緒になってこれを否定するわけにはいかないだろう。

裁判に勝利する、原発を止める、ということより以外の目的があるのではないか、という深い疑念を持たざるを得ない

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年10月 4日 (火)

東洋町長による不正融資事件

平成23年に起こった東洋町長による不正融資事件は、今二つの裁判に発展している。
一つは、原町長松延宏幸にその不正融資の責任を直接問う裁判であり、これは高知地裁(原告住民敗訴)→高松高裁(原告住民勝訴)→最高裁(原告住民敗訴)→高松高裁(原告住民敗訴)→原告住民最高裁へ上告という自体になっている。これについて上告理由書を掲載します。

上告理由の最も重要な点は、裁判所はいずれも本件貸付金の制度は一般に交付されていず無効だと判断している。

すなわち町長が一般の住民に知らせず特定の者にのみ知らせてこの制度を実行したという事実は裁判所も認容した。
そうすると、このような行政は憲法14条の平等原則に違反することになる。

もう一つの裁判は、上記の裁判で松延宏幸町長が不正融資の責任を逃れたとしても1000万円貸し付けの公金が現時点で一銭も返済されていない以上は、松延宏幸にその貸付金の回収義務は発生している。納期を過ぎた貸付金については地方自治法や町の財務規則(第30条)に基づき法的措置(差し押さえなど滞納処分)をしなければならない。
松延宏幸はこれを放置している。

現在これについては東洋町の監査請求を経て高知地裁に債権回収の怠る事実があるとして提訴している。
これについても訴状を掲載します。

平成28年(行サ)第6号
損害賠償請求行政上告提起事件
上告人 澤山保太郎
被上告人 東洋町長松延宏幸
          上告理由書
                        平成28年9月7日
最高裁判所御中
                        上告人 澤山保太郎
【一】、上訴権について

本件において平成26年12月18日の第2審高松高等裁判所の判決の後、被上告人は平成27年2月5日最高裁に上告及び上告受理申立をした。
しかしこの上告又は上告受理申立は平成14年に改正された地方自治法(242条の3「訴訟の提起」が追加された)に照らせば、最高裁がこれを受理したのは間違いであり、民事訴訟法第316条第1項第1号に該当し無効であると考える。

この主張は、上記上告及び上告受理申立に対する本件上告人(当時被上告人)の「答弁書」また、差戻し審の高松高裁での審理において主張したが、最高裁も高裁もこれについて判断をしなかった。

本件は地方自治法242条2の1項4号規定(これを単に4号規定と呼ぶ)に基づく住民訴訟であり、被告 東洋町長 松延宏幸 であって、
町長という執行機関を当事者とする訴訟という事で、町長側は応訴したことになっている。
したがって本件は応訴であるから、地方自治法第96条1項12号(訴訟の提起の議会議決 これを単に「12号規定」と呼ぶ)に該当しない、東洋町議会の議決はいらないということになる。

①応訴したということもあり、また、②「12号規定」が適用されるのは、首長ら執行機関ではなく「普通地方公共団体が当事者となる・・・訴訟の提起・・・」となっているからである。
しかし、上告人は、これまでの「4号規定」訴訟について、首長側が上訴する場合「12号規定」の適用の要否について新たなる判断が必要であると考える

理由:
1、改正される前の「4号規定」では、住民訴訟は直接首長や職員を相手に損害賠償請求の訴訟を起こすことになっていた。しかし、平成14年以降現行の「4号規定」では、「執行機関」の長や職員を当事者とする住民訴訟は、新設された242条3の2項以下の規定に見るとおり、究極的には普通地方公共団体が、首長や職員に対しての訴訟に転化することになった。すなわち住民の起こす訴訟の究極目的は当該普通地方公共団体をして、問題を起こした長や職員に対して損害賠償の訴訟を起こさせることを求めるものと変更された。住民訴訟は必ず当該普通公共団体による訴訟にまで発展するわけではないが、最終的には地方公共団体が訴訟で決着させることになった。

税金などの支払い督促は普通地方公共団体の長の事務であるが、これ自体は訴えの提起ではない。しかし、異議が出されると訴訟に移行するので議会の議決が必要とされている。(昭和59年5月31日最高裁第一小法廷判決)
地方自治法242条3の第3項で、提訴する場合には「12号規定」の議決は不要でほとんど自動的に地方公共団体が当事者とする訴訟に移行することになっている。
したがって、現行地方自治法では、「4号規定」による訴訟は、当該普通地方公共団体を当事者とすると考えられる。

2「12号規定」では、地方公共団体が提訴する場合に議会の議決が必要で応訴の場合は議会議決は不要とされている。
ところで、住民訴訟で首長や職員が訴えられて首長らが敗訴した後上訴する場合は、これは応訴でなく提訴であると考えられている。
通説(「逐条地方自治法」長野士郎著平成8年4月20日発行 学陽書房 289頁)では、「訴訟を提起された場合、その判決に不服ありとして地方公共団体が上訴する場合には議会の議決を得なければならない。」とされている。
議決を必要とするという「12号規定」は本件のような執行機関を当事者とするが、やがて当該普通公共団体を当事者として登場させる場合には、敗訴後の上訴についてはこれを適用させるべきである。
  「4号規定」の訴訟が当該普通公共団体を前面に引き出すことを目的とし、究極的には当事者として登場することになることは地方自治法第242条3の2項、3項、4項、5項の各規定から明らかであ。
従って本件は、上告提起の重要な手続きを履践していず、民事訴訟法第316号第1項1号に該当して上告を受理することは出来ないはずである。
  ちなみに、被上告人が本年2月24日に東洋町議会議長に対し、当該議決についての公文書開示請求をしたが、町議会議長は被上告人に、その公文書は存在していない、本件上告の提起及び上告受理申立てについて議会に議案を上程されていない、と回答している。

 【二】、原判決の問題点と批判

一、事件の経過

 本件は平成23年夏の台風により高知県東洋町の沿岸漁民がその漁具などを被災し、これにつて地元漁業組合(野根漁協と呼ぶ)が町役場に支援を求め、被上告人東洋町長が被災漁民のうち特定の一家に野根漁協を経由する形で1000万円を又貸し融資をした事件であるが、住民がこの融資を不正であるとして訴訟を起こしたものである。
 訴訟は町側の融資手続き上の瑕疵(特に貸付規則)と漁業組合側の借受手続上の瑕疵(特に理事会の成立)をめぐって争われた。

①第1審高知地裁判決(平成25年9月20日 棄却)では、貸付規則については公布されており瑕疵はないが、漁業組合の借受を決議した理事会の成立については、「理事会決議には手続上の瑕疵がある可能性がある。・・・上記瑕疵が組合員の総意でもって追認されたとは言い難い。・…この点において違法な公金の支出という余地がある。」と判断したが、町長側に「その違法性を認識していたと認めるに足りる証拠はない。」として住民側を敗訴とした。

②第2審高松高等裁判所判決(平成26年12月18日 1部認容)では、貸付規則は公布された事実がないとしてこれを無効とし、漁協理事会についても、決議に参加した理事6人の中に特別利害関係者が2名入っており、理事会は成立していないとしてこれを無効と判断し、町長松延宏幸に、貸し付けて返済される見込みがない1000万円全額について弁済責任を認定した。

③最高裁第二小法廷の判決(平成28年1月22日)では、町長側の上告を認め、漁協理事会は、特別利害関係者を除いて残り4人の理事の全員が賛同しており理事会は成立したとえ本件貸付規則が無効なものであっても町長の裁量で遂行したものと考えられるから本件貸付は合理的なものである、と判断し、高松高裁に差し戻した。

④差戻し高松高裁判決(平成28年7月15日判決 控訴棄却)は、上記最高裁の判決と全く同趣旨である。理事会も成立しており、貸付規則は無効であるが、貸付は町長の裁量行為で何の問題もない、というものであった。

二、差し戻し高裁判決の問題点

1、判断と事実認定の矛盾

原判決21頁上段で「本件規則は、地方自治法第16条5項において準用する4項の定める公布手続きを欠いたものであり、効力を生じていないというべきである。従って本件貸付が本件規則に基づいて行われたものということはできない。」という。
 しかし、公布手続きに瑕疵があり効力を生じていないという事実はそのとおりであるが、「本件貸付が本件規則に基づいておこなわれたということはできない」というのは事実に反するし、原判決自身の記述(原判決6頁「本件貸付に至る経緯等」)に反する。

①「東洋町議会は、・・本件規則に基づく貸付資金としての1000万円・・」6頁下段
②「野根漁協は、・・・本件規則に基づき ・・・本件申請をした。」6頁最下段
③「松延は・・・本件申請に基づき・・・野根漁協に対し、1000万円を貸し付けることを決定する旨・・・・」7頁上段
④「野根漁協は、・・・・本件規則2条(1)に基づき本件申請をするとの本件理事会決議をした。」18頁上段
⑤「東洋町議会は・・・本件規則に基づく貸付資金としての1000万円の歳出・・・」 
          18頁下段
⑥「野根漁協は・・・東洋町に対し本件申請をした。野根漁協はその際、申請書・・とともに添付書類として・・・理事会議事録、・・・確約書、・・事業計画書、・・・償還計画書・・・を提出した。」19頁下段
⑦「初回の返済まで1年以上据え置き以降5年間の分割払い」23頁下段
⑧「・・台風6号の被害復旧に限ってその資金を野根漁協に無利子で貸し付け、理事の連名による確約書の提出以外には担保を求めない・・・・」27頁中段・・・
このように、原判決の大半の頁で本件規則に基づいて貸付が行われたことを詳述している。前掲原判決の文章「本件貸付が本件規則に基づいて行われたということはできない」は、本件裁判の最も重大な事実についての認定と、判決に直結する判断が根本的に矛盾し、その矛盾について合理的な説明がなされていない。

2、無効な規則に基づき実行

本件貸付は、原判決の認定する通り、本件貸付規則に基づいて実行された。
 このことについては、第1審~最高裁に至る間、上告人も被上告人も何ら争うものではない。そして、国民の福祉に関することで民衆に公布されていない法令(条例・規則含む)は無効であり、本件貸付規則も公布されていないので無効であった。
 従って合理的に本件行政行為を理解する方式は、本件貸付は無効な規則に基づき実行された、という風に把握されねばならない

3、憲法第14条法の下の平等の否定

国民の権利や福祉に関する事業で一部の者以外は国民全般に知らされていないことを理由として無効な法令(法令の目的や様々な手続の規定を含む)だと断定されて、それが実行された事件について、裁判所はどのような判断をするべきであろうか。
 例えば国民に公布されずに何らかの新しい刑法が施行される場合、それが国民のためにいいものであれば、法務大臣の裁量権で実行され得るということになるのであろうか。
 刑罰がある法令を知らされていない国民がその法令に違反したということで罰せられるということが「合理的」だといえるであろうか。

 あるいは、国民全般には知らせず一部の者にだけ知らせて国民への新たな給付事業が実行された場合、それはいい事業であるから厚生大臣又は地方首長の裁量権でやっても構わない、ということになるのだろうか。その給付事業を定めた法令や条例規則を知らされていない国民の受ける経済的不利益、不平等な取り扱い、知らせてもらった一部の国民の不当な特権は、日本国憲法のどの条項に適い、「合理的」な行政だといえるのであろうか。
 本件の場合、貸付規則は無効であるというが、その無効の内容は、貸付規則を住民一般に知らせなかった、という無効であり、ごく一部の者にだけ知らせその者らのみに申請手続きの書類を渡して貸付事業を実施した、というものであるが、これが「合理的」であるというには、日本国憲法から法の下の平等などの基本的人権に関する憲法の規定を削除する必要があるのではないか。

 憲法第14条第1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定している。ここに列挙された人種、信条、などのほかにも例えば衆議院選挙での議員定数の不均衡(1票の価値の不平等)などが法の下の平等原則違反とされている。
 国民の福利に関する法令が、国民全般に知らされず、一部の者にだけ知らされて施行された場合、知らされなかった国民は経済的に不平等な扱いを受けたことになり、法の下の平等が拒絶されたということになる。

本件の場合も本件規則の存在が住民全般(少なくとも被害漁家全員)に知らされず、一特定漁家にのみ知らされて実行された場合、知らされなかった者については行政施策が施される機会が奪われたということになり、不当な差別を受けた、法の下の平等が侵害されたということになるであろう。
 本件貸付規則は無効であるが、事実として本件貸付はその無効な規則に基づいて手続等がなされた。無効な法令に基づく行為、法の下の平等を侵害する行為を、首長の裁量行為だと言い換えても、日本国が憲法に基づき統治されている以上、憲法違反の事実を「合理的」だなどということはできない。

三、本件理事会の不成立

 原判決は24頁~25頁において、平成23年11月3日開催の理事会について、本件についての最高裁第2小法廷判決と同じ趣旨でその有効な成立を認めた。
 しかし、第1審から最高裁、原判決に至るどの時点でも、野根漁協の理事が誰であったかについて一度も確定していない。

 原判決は、上告人が提出した書証(項39号証、33号証)について「控訴人の指摘する上記報告書中の記載は、これを裏付ける証拠がないし・・・本件理事会決議当時の理事がこの記載通りであったと認めることはできない。」といって、甲11号証、甲21号証の別紙4No1 などに署名押印している6名の理事(桜井菊蔵、井崎勝行、松吉孝雄、松吉保、桜井勇、松吉保彦)を「本件理事会の決議をしたものと認める」というのである。

上告人が出した平成23年当時の野根漁協の理事会の構成メンバーの書証は、野根漁協が作成し県庁に届けたものであって、これ以上に理事会メンバーを「裏付ける証拠」などはどこにもない。その理事や役員は平成21年6月の野根漁協の総会で選任(任期3年)されたものであって、平成22年、平成23年度に有効なものであった。任期期間中数名が辞意を表明し辞表も出していたが、新たな後任の選任行為はなされなかったから、辞表を出した理事も野根漁協定款の規定で引き続き理事の任務を果たす義務があったものである。
 原判決は、「議事録「」や「確約書」に署名押印している理事が、真実の理事であるということをいかなる証拠に基づいて判断したのであろうか。

 特別利害関係人についても松吉保彦と松吉保の二人だけしか認定していないが、松吉孝雄も融資を受けた小式網の松吉保の実弟であり明らかに特別利害関係者である。
 原判決も最高裁判決も、理事の構成メンバーについて証拠に基づいて判断をしていない。
誰が特別利害関係人なのかについても無知のまま判例を適用し、数の計算をしている。
 正規の理事会名簿について一つも審理せず、上告人の出した確定的な証拠を否定し、何の証拠もないのに一方の拵えた理事名簿を採用した原判決は、少なくとも審理不尽であり、虚偽の事実に基づく判断として非難される。

 挙げられている「議事録」や「確約書」で署名押印している理事そのものについて現在の野根漁協や上告人が、それを認めないと主張している。
野根漁協の当時の正規の理事は甲第39号証や33号証であって、その正規の理事で判断すると、特別利害人2名(松吉保彦、松吉孝雄)をのぞいて本件理事会の決議に出席できるものは6名(桜井菊蔵、井崎勝行、桜井勇、桜井淳一、桜井春雄、松田博光)であり、松吉保は正規の総会で選任された理事ではない。そのうち出席したのは桜井菊蔵、井崎勝行、桜井勇の3名にすぎず、これでは特別利害関係者を除く理事6名の過半数に達していないのである。

四、首長の裁量と法治主義

1、原判決は、本件貸付規則は無効であるが、首長の裁量権限で貸付を行ったものであるので本件貸付は適法である、とした。
しかし、いくら裁量行為であるとしても貸付けに係る公金の支出については地方自治法、各地方自治体の財務規則など厳しい規定があり、それに基づかずに公金の支出をすることは許されていない。貸付は裁量行為ではない。
 本件について最高裁が高裁に差し戻しをしたのは、最高裁が判断した事項以外のその他に違法行為がなかったかどうか審理せよということであった。
 例えば、東洋町の財務規則第39条では、支出命令をする場合には、「支出の内容を示し、債務の履行の確認を証する書類を添付しなければならない。」として貸付金の場合の添付書類としては、「貸付金の支出については、名称、金額、目的、根拠規定等の事項」を示す証拠が必要だとされている。この財務規則は全国共通のものであって貸付金の支出の際には、貸付金の根拠規定の書類すなわち貸付規則の第何条に該当するものかを示さねばならない。首長の自由裁量というわけにはいかないのである。
 
2、原判決が、「普通地方公共団体は、制定された条例、規則に基づく場合のほか、裁量により他者との間で消費貸借契約を締結することができる。」という。
 しかし、消費貸借契約であれ請負契約であれ、およそ公金の支出の原因となる行為については全て法令や条例規則に基づかねばならない。
 第一に公益目的があり、平等原則が守られ、既定の適法な手続きに従わねばならない。
 原判決が言うように制定された条例や規則があるのにこれに基づかずに、長の裁量で施策がなされてもよいということになれば、法治国家の実質がなくなってしまう。
 確かにに災害被災者を救済するのに、補助金制度を使うか、貸付金制度を使うか、あるいは別個の条例規則を作って対応するか、その内容も有利子にするか無利子にするか、
 償還期間はどの程度にするかなどは首長の裁量に任されていると言えるだろう。
 あるいは又、法令の定めや条例規則の定めがない分野の事業では、どうしても首長の裁量で事業が選択され、遂行されるという場合もあるかもしれない。
 しかし一旦、これと決めたら、その制度に関する法令、規則に従わねばならないし、なければ制定しなくてはならない。

3、憲法第31条は、「何人も、法律に定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。」と定めている。これは刑法に関することであるが、その枠を超えて法律に基づく行政行為(行政手続)一般をも規定するものと解釈されている。
 法律に基づく行政 は今日行政法学五の基本テーマであり、特に公金の支出など財務会計行為については、厳格に法律に基づいて執行されねばならない。上掲の原判決の判示は、制定された法令や条例があってもこれを無視して首長の裁量で行政を行ってもよいという途方もない無法行為の容認であり断じて許されない違憲判断である。

以上の通り原判決は憲法違反や、理由齟齬、理由不備など重大な欠陥があり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと思料する。

東洋町職員措置請求書
                    平成28年7月  日
東洋町監査委員殿
                    請求者
                    住所
                    氏名           職業
                        
(措置請求の趣旨)

東洋町は平成23年11月に野根漁協を介して特定漁家に対し1千万円の貸し付けを行ったが、現在において1銭の返済も受けていない。1年間の据え置き期間を置きその後毎年200万円の返済を受けることになっているが、町長はこれまでその徴収を怠り、今後もそのまま放置する可能性がある。町長松延宏幸は、速やかに本件貸付金の回収をする義務があり、そうしないなら、松延宏幸自身がこれの全額賠償責任がある。

(請求の理由)

東洋町は、平成23年11月野根漁業協同組合に対し、特定漁家に対して又貸し資金として1千万円(無利子)を貸し付けた。返済は貸し付けた年度を除外して翌年から年に200万円となっていた。新聞報道では、現在まで東洋町は貸付先関係者から1銭も返済金を徴収していない。

平成25年度から計算してもすでに4年目(24年度から計算して5年目)であり、このまま未回収では1千万円がまるごと町の損害金となる。この貸付金については現在の漁協は理事会、組合員総会で正規のものではないとして否認している。
しかし、貸付当時の漁協理事を名乗る者に責任があることは明らかであり、また、その理事の手による返済について滞納した場合法的措置を取られても構わないという「確約書」も東洋町は徴取している。

町長松延宏幸は貸付金のうち少なくとも3年度分の徴収を怠っていることは明らかであり、残る2年度分も徴収しない可能性がある。
東洋町は、すみやかに、又貸しを受けた漁家(その連帯保証人)又は当時の野根漁協理事を名乗る者らから本件1千万円の返済金を徴収するか、それともこの貸付を実行した町職員に弁済させるなど適切な措置を取る義務がある。

よって地方自治法第242条の規定に基づき、住民監査請求を行う。

 (添付書類)1、借用書
  同    2、確約書(6名分)
  同    3、確約書(2名分)
  同    4、高知新聞記事(平成28年7月16日号)

訴   状
          高知県安芸郡東洋町大字河内405番地1         
          原告 澤山 保太郎
          高知県安芸郡東洋町大字生見758番地3      
                被告 東洋町長 松延 宏幸

  損害賠償請求事件 
 訴訟物の価額 160万円
貼用印紙額  1万3000円

   【請求の趣旨】

1、被告は、東洋町長松延宏幸に対し、東洋町財務規則第30条に基づき前任の野根漁業協同組合理事らに対して貸付金1000万円の弁済を確保する法的措置(滞納処分)をとらなかったことによる損害金(少なくとも600万円)を松延宏幸が町に対して弁済することを求めよ。

2、訴訟費用は被告が負担する。
との判決を求める。

【第1、当事者】

1、 原告は、東洋町の住民であって、本件について平成28年7月19日に東洋町監査委員会に住民監査請求をし、平成28年9月15日付の請求棄却の通知を受けたものである。

2.被告東洋町長松延は、平成23年4月から現在まで東洋町長であり、本件貸付を実行し、その貸付金を回収する義務あるものである。

【第2、請求原因】

一、監査委員の請求棄却理由

前記東洋町監査委員の棄却理由によると、松延宏幸東洋町長は、
①平成25年度分、②平成26年度分、③平成27年度分について納入通知書や督促状
を野根漁業組合(以下野根漁協と呼ぶ)に書留郵便などで送付しており地方自治法240条第2項、地方自治法施行令第171条の義務を履行し、かつ東洋町財務規則第29条に基づき期限を付けて督促状を出しているから、松延宏幸に本件貸付について違法行為はない、というものである。

二、しかし、仮に、上記①、②、③、の督促等の行為が事実有効に行われたとしても、地方自治体は、滞納金についてただ督促状を発行しておればよいというものではない。
前記東洋町財務規則の第29条に続く、第30条第1項には
「歳入管理者は、前条の場合において、当該督促を受けた者が指定された期限までにその金額を納付しないときは、法第231条の第3項の規定により地方税の滞納処分の例により処分することができるものについては、速やかにその処分に着手しなければなら ない。」との規定があり、第2項には

「2 前項の場合において財産の差し押さえについては、町長が、その命じた職員をして行わせるものとする。」との規定がある。上記①,②,③についてはすでに指定した納期を過ぎているか、間もなく過ぎるものである。
東洋町財務規則第30条に基づき松延宏幸は、「地方税の滞納処分の例により」本件貸付金の滞納について処分をする義務がある。

少なくとも、平成25年度分、26年度分、27年度分、各200万円の債権について法的な滞納処分を取らないのは、違法であり、松延宏幸に弁済の義務がある。
また、28年度分、29年度分の各200万円についても督促する相手が間違っているなどの理由で回収する見込みが全くなく、回収しようとする意思さえ不明確である。
三、本件貸付金は、東洋町が、平成23年6月の台風で東洋町沿岸の多数の漁業者が甚大な被害を被り、その救済策として、被害漁具などの修繕などのために1000万円を限度とする貸付金制度を設けたものである。しかし、松延宏幸はこれを一般に公布せず野根漁協を迂回して特定一漁家にだけこの資金を全額融資することにした。

 迂回融資された漁家は、この資金を申請した通りの使途に使用した形跡は全くなく、融資金を得て間もなく漁業から手を引き、返済の意思は毛頭見せていない。
 しかし、野根漁協はこの借受けについては正規の理事会、正規の総会の決議を経過していず、返済の義務を否定していて督促状等も全て東洋町役場に返えしているとのことで、本件貸付金の弁済は全く見通しが立っていない。
四、被告は、松延宏幸が、野根漁協に対して本件貸付金について納付書や督促状等を送付したというが、野根漁協は別訴事件において本件貸付金を否認している。
実際本件貸付金について野根漁協の理事会、野根漁協の組合員総会においてこれを借り受けるという正規の決議は存在していない。後の野根漁協組合員総会においてこれを明確に否定している。

 但し、平成23年11月本件貸付金1000万円の借受けについて当時野根漁協理事会を名乗る「理事」達が、この借受け金について返済の責任を取るとの「確約書」(甲第3号証)が存在し、それによると、差し押さえなど法的措置を取られても構わないという趣旨の誓約が明記されている。松延宏幸もその「確約書」を信じて本件貸付金を融資したと推定される。

従って、松延宏幸が本件貸付金返済の督促をする相手は、1000万円の又貸しを受けた本人(松吉保、松吉保彦親子)を含む「確約書」に署名している当時の「理事」を名乗る者に対してするべきであり、そのことが分かっていながら無関係な野根漁協に対して、督促を繰り返すのは、真面目に公金の回収をする意思がないことの証左である。
従って、無関係な団体に納付書や督促状などを送ったとしてもそれらは何の意義もなく、これまで全く借金の督促をしなかったと同然であって、これからも同じである。

 【立証方法】

一、甲第1号証  監査請求書 
二、甲第2号証  監査請求棄却通知書 
三、甲第3号証  「確約書」   
  四、甲第4号証  支出命令書
  五、甲第5号証  貸付金規則
  六、甲第6号証  借用書
  七、甲第7号証  償還計画書
八、甲第8号証  東洋町財務規則(抜粋)
     【添付書類】
一、訴状副本 1通
二、甲号各証 各1通
平成28年9月  日
高知県安芸郡東洋町大字河内405番地1
                   澤山 保太郎
高知地方裁判所 御中

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年9月18日 (日)

沖縄の裁判

News & Letters/519

マルクス主義の国家論からすれば、国家は公共性を被った暴力装置である。
その暴力装置は、軍隊であり、警察であり、行政機関・・・・、監獄、そして裁判所だ。
裁判所は、三権分立で独立した法の番人であり裁判官は憲法と己の良心にのみに拘束されて
自由な判断を下すもの、という建前になっている。
普段は、そのような公正中立、公共への奉仕という仮面が、本当のようにふるまう。
裁判も時々そんな感じでいい判決が出るときもある。裁判官も漫画「家裁の人」のような立派な人がいるということは確かだ。

福井地裁や大津地裁の原発裁判の裁判官も健在だ。
しかし、場面が違えば、裁判所も国家権力の暴力装置であることの馬脚を現してくる。
私が知る限りその場面はおよそ3つある。沖縄であり、部落(狭山事件)であり、そして住民行政訴訟だ。

今回の福岡高裁那覇支部の裁判長の下した判決は、憲法に照らしてとか、法令に適合するかとかいう判断基準をかなぐり捨てて支配権力の政策の支持をあからさまに表明し、裁判所本来の国家の暴力性の発動の結果であった。

日米安保体制での日本における軍事基地は憲法(9条 外国兵を代替的に武装させ戦争行為をさせる)に適合するのか、その軍事基地の大半を沖縄に偏在させることの憲法(第14条など)上の正当性はあるのか、今回の辺野古への移転は環境等の法令・規則に適合しているのか、手続きは適法(前の知事の認可の取り消しが有効)か等が裁判官の判断の基準でなければならない。我々は何も裁判官に、歴代内閣の安保政策への支持表明を期待したわけではないし、普天間と辺野古の比較をしてくれといっているのではない。

今回の判決文の要旨を見ても、憲法第76条3項に定められた裁判官の姿、良心と、憲法と法律にだけ拘束される独立の存在という規定を完全に踏みにじっている。憲法違反の判決というべきである。

最高裁は今回の裁判に備えて、あらかじめ裁判官の入れ替えをやり、最高裁のエリートを今回の裁判に派遣したといわれる。
もはや司法は、日米政府の走狗になって、国辱裁判を恬として恥じない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年7月 5日 (火)

丸山長寿園控訴理由書

News & Letters/495

   控訴理由書

平成28年(行コ)第25号  
                   平成28年7月1日

高松高等裁判所殿

                 高知県安芸郡東洋町河内405番地1
                       控訴人 澤山保太郎
                 高知県室戸市佐喜浜町1374番地
                        同  楠瀬立子
                 高知県室戸市吉良川町甲4015番地
                        同  田原茂良
                 高知県安芸郡奈半利町乙478番地1

            被控訴人 安芸広域市町村圏特別養護老人ホーム組合
                   同代表者組合長 齋藤一孝                    
                 高知県安芸郡奈半利町乙478番地1
               同 安芸広域市町村圏特別養護老人ホーム組合 
                                   組合長齋藤一孝 

【控訴理由の要旨】

原判決の本件行政財産の処分についての①事実認定とそれが地方自治法第238条の4第1項に②違反し、本件行政財産の処分、民間団体への施設の無償譲渡は③無効である、との判断、及び当時の組合長であった小松幹侍の組合長としての④過失・注意義務懈怠の責任の認定、①②③④は正当と考える。がしかし、小松幹侍の⑤賠償責任を否定する原判決の結論は、①~④の前提と賠償責任の結論が著しく撞着・齟齬をきたしていて、きわめて不合理であると考える。

本件処分(行政財産の無償譲渡)が違法、無効であり、長としての過失・注意義務違反が認定され、その行為によって、組合が数億円もの本件財産を喪失した以上は、その賠償責任が問われるべきである。
原判決にはそのほかにも法令の解釈に重大な誤りがあり改めて正しい判断を求める。

【控訴理由】

【一】原判決の主たる判断の正当性と欠陥

 1、本件処分の違法・無効性の判断

原判決「第三 当裁判所の判断」の3 争点(2)(無償譲渡処分の違法性)について(16頁)で
「本件契約は、地方自治法第238条の4第1項の規定に違反してされたものであり、同条の4第6項の規定により、無効である。よって、本件契約に基づく本件無償譲渡は、地方自治法に違反した違法な財務会計行為であったというべきである。」
と断定した。本件訴訟の主要な争点について控訴人の主張を認めた。

 行政財産の用途廃止以前に民間団体との間で譲渡契約をし、その契約に基づいて譲渡を実行した。これを地方自治法第238条の4第1項違反だとするのは何人も否定できない。本件譲渡契約及びその実行は地方自治法で制禁されている行政財産に私権を設定する行為であることは明らかであり、原判決はこれを認定しこの行為を無効であるとした。

また、原判決は、17頁中段で、
「被告らは、本件契約をめぐる瑕疵は治癒されていると主張する。地方自治法第238条の4第1項に違反する契約は同条第6項の規定により無効になるところ、無効な行為は、追認によっても、その効力を生じないから(民法119条本文)、事後に本件施設の建物等の用途が廃止され、その後に本件施設の建物等が現実に譲渡されたからといって、本件契約が有効となるものではない。」
と判示し、被控訴人の行為の違法性と無効性を確然と認定した。このゆるぎない認定による本件訴訟の結論はおのずと明らかである。

2、手続きさえすれば行政財産を用途廃止できるのか

ただ、この判断には、控訴人が原審において主張してきた稼働中の行政財産の処分(民間に譲渡)自体の違法性については判断をしていない。本件においては必ずしもそこまで判断する必要性はないが、事件の重大さの認識において、特に賠償責任の判断において相当な影響を及ぼす余地が出てくる。

原判決は、平成26年4月1日に本件施設の用途を廃止したことについては問題がないと考えている様子である。

原判決には、用途を廃止してその後に譲渡契約を結んで稼働中の行政財産でもこれを処分しておれば、何も違法性はなかった、という甘い認識が潜在している。
行政財産の用途は、それを管理している行政機関がこれを管理条例や規則から削除するなどして普通財産に落とし、一定の手続きをすれば自由に処分できるのか、という根本問題については、肯定しているようである。

しかし逆に、もし本件のように収容者が満杯状態の公の施設(行政財産)でも手続きさえすればこれを売却など自由に処分することが許されるのであれば、地方自治法第238条4の第1項の規定は、何の存在意義もないということになるであろう。
直前まで行政財産であっても0.1秒の瞬間も普通財産にしたという実績があれば、民間へ処分できるということになる。本件の場合は平成26年3月31日の23時59分59秒・・・までは行政財産で、翌4月1日の午前0時より民間の所有になった、行政財産を居ながら民有に転化した場合でも地方自治法第238条4第1項の制禁条項の適用は免れられるということになるのか。

後で詳しく見る原判決の最後尾21頁で「小松は、本件契約の締結を、本件施設の建物等が普通財産となる平成26年4月1日以降にすべきところを、早まって、未だ本件施設の建物等が行政財産であった平成25年12月25日にしてしまったものにすぎない。」
・・・にすぎない との判断には、稼働中の行政財産でも手続きさえすれば普通財産と同じように売却でも譲渡でも行政機関がこれを自在にする事ができるという謬見が根底にあるものと考えられる。

3、何の公益目的もなく行政財産の用途を廃止することは許されない

本件の行政財産の譲渡という行為も行政行為である。

①学説によれば、「行政行為は、公益の実現を目的とするものであり、従って、事情の変
遷に即応し、その結果が常に公益に適合することを必要とする。行政行為が一旦適法有効になされた後においても、事情が変遷し、それを存続せしめることが、公益に適合しないことになった場合においては、これを公益に適合せしめるために、原則としてこれを撤回することができ、また必要に応じ、公益に適合する新たな行政行為をなし得るものとしなければならぬ。」(甲第18号証 田中二郎 「行政法総論」)
 公の施設の用途廃止は行政行為の撤回に当たるであろう。その撤回には行政機関の意思だけではなく合理的な理由と公益性が担保されていなければならない。

②また、従来の行政行為を存続させることが後発的な事情の変化や施設などの老朽化など
でかえって公共性を失い公益目的にそぐわなくなった場合、当該行政行為の存続をやめ
る、撤回するということになるが、その場合でも、その撤回行為はあくまでも公益目的
であり、また受益者に対する補償や代替などを配慮しなければならず、為政者が自由勝
手に公の施設を廃止したり、許認可を撤回したりすることは許されていない、とする学
説が支配的である。(甲第19号証 海野敦史「行政法綱領」)

③また、これを公物の管理とみても、その公物の消滅原因が明確でなければこれを消滅させることはできない。
 「公用廃止行為は、公共用物が公物としての機能を失い、当該公物を公共の用に供する必要がなくなった場合、公物としての性質を喪失させる行政行為である。」

 (甲第20号証 原龍之介「公物営造物法」)

 本件の場合、行政財産を民間に譲渡する行為には何の公益性もないし、公物を消滅させる外形上の腐朽性もあり得ない。公共用に稼働中の行政財産を廃止するには、廃止すること自体にそれ相応の公共性、公益性がなければならない。公共施設を丸ごと私権に供するために行政行為(公用廃止)を遂行することは許されるはずがない。

④稼働中の行政財産を廃止するなどという暴挙を可能にする手続についてはもちろん、行政財産の処分についての手続規則はどこの自治体でも持っていない。
唯一つ控訴人が見つけたのは東北の東通村の規則(事務取扱要綱 甲第21号証)があるが、この要綱でも行政財産の処分の要件は、機能喪失または必要性の喪失に限られている。
  本件行政財産を用途廃止することが許される理由は何も存在しない。
 原判決は、フル稼働中の行政財産でも手続きさえすれば譲渡や売却が可能であるのかのような謬見を前提にして結論を下したと考えられる。

 本件では、平成25年12月25日で本件施設が未だ行政財産の段階で、譲渡契約を結ぶという決定的な私権設定の事実があるので、必ずしも行政財産の廃止について如上の認識がなくとも、正しい結論は可能であったが、如上の認識の欠如が、判決文最後尾の賠償責任についての奇怪な結論の伏線になった憾みがある。

二、組合長小松幹侍の責任についての判断

原判決は、20頁上段、「(小松の不法行為責任の有無)」についてで、
「被告組合の組合長である小松が、平成25年12月25日、むろと会との間で、本件契約を締結し、それに基づき平成26年4月1日にむろと会に対して本件施設の建物を譲渡したことは、上記3で説示した通り、違法な財務会計行為であるところ、前記認定事実によれば、小松は、その前提となる事実、すなわち、本件契約当時、本件施設の建物等は未だ被告組合が運営する特別養護老人ホームの用に供されていたとの事実を認識していたものと認められる。

そうである以上、小松は、本件契約が地方自治法第238条の4第1項に違反する違法なものであると認識すべきであり、平成25年12月25日の時点においては、本件契約を締結すべきではなかったといえる。それにもかかわらず、小松は、被告組合の組合長として尽くすべき注意義務を怠り、過失により、本件契約を締結し、平成26年4月1日、本件施設の建物等をむろと会に譲渡したものと認められる。」
と明瞭に小松幹侍の組合長としての責任、注意義務の懈怠、過失を認めた。

小松は、地方自治法の規定を知らなかったというわけにはいかない。知らなかったとしたらそれ自体が重大な過失である。およそ地方自治体の首長の任務は、公金及び公有財産の管理が最重要事項の一つであり、巨額の価値をもつ公有財産を私人や私企業にタダで譲渡するなどということはあり得ない事件であって、本件行為は地方自治法第238条4の第1項が禁じていることであり、この条項のど真ん中のストレートに違反したものである。
その行為が違法・無効であり、それを執行した首長の過失を認定したのであるから、判決の結論は、一直線に首長の賠償責任に帰着するはずである。

三、賠償責任の回避

1、如上の通り原判決は、小松幹侍組合長の不法行為とその有責を認定したが、判決文最後でわけのわからない理由を述べて、本件組合に損害が発生していないということでその賠償責任を否定した。すなわち、原判決は20頁後半部で、「もっとも、前期認定事実によれば・・・・」の文言のもとに、にわかに論調を変え、小松幹侍組合長の本件無償譲渡の経過をそのまま認め「小松は、本件契約の締結を、本件施設の建物等が普通財産となる平成26年4月1日以降にすべきところを、早まって、未だ本件施設の建物等が行政財産であった平成25年12月25日してしまったものにすぎない。」

(下線控訴人)という風に一個の判決文でありながら別人が書いたかのようにその不法行為、その瑕疵の過小評価に転じた。小松組合長らは、順序を間違えた、早まったに過ぎず、結果は同じだから問題にならないというような口吻を弄しだしたのである。
そうして原判決は次のようにいう。

「そうすると、①小松が注意義務を果たしたとしても、②平成26年4月1日には、本件施設の建物等の用途が廃止され、被告組合はむろと会に対して譲渡されていたといえるから、③小松が平成25年12月25日に本件契約を締結し、これに基づき、平成26年4月1日、本件施設の建物等がむろと会に譲渡したということをもって、④被告組合に賠償されるべき損害が発生したということはできない。したがって、小松が不法行為に基づく損害賠償責任を負うとは言えない。」(①②③④は控訴人  原判決21頁)
この判旨はきわめて難しいが読み解くと次のようになろうか。

①小松が注意義務を果たし、12月25日に契約を締結せず、4月1日に用途廃止をし
たうえで契約を締結し、そうしてむろと会に本件施設を譲渡するという正規の手続きをとったと仮定した場合、②小松はそうすることも可能であった(早まってそうしなかっただけだ)し、いずれにしても用途は廃止され無償譲渡が実行されたといえるから、
③契約と譲渡の順序を逆にしただけをもって④損害が発生した、賠償責任を負うとは言えない、ということであろう。

要するに事後に追認されたから問題がないというのである。

2、しかし第一に、小松が「注意義務を果たしたとしても・・・」という事実に反する仮定の話をもって、判決文の流れを逆転させ、その中核部分を書くことが許されるであろうか。本件の事実の経過は、行政財産についてこれを私法上の譲渡契約の対象とし(私権を設定)、その契約の履行として「用途廃止」・譲渡を遂行したのである。そのことは原判決(15頁中段に「本件無償譲渡は、被告組合とむろと会とが対等な立場で締結した私法上の契約を履行したもの・・・」)にあるとおりであって、これは被控訴人の主張でもあった。
原判決は自らが認定した不可逆の事実を、想定でもって逆転させ、その倒錯した事実に基づいて判断をしたものであって到底受け入れられない。

3、また既述の通り、第二に、この判断は、前掲原判決17頁中段の次の文章と根本的に対立する。
「被告らは、本件契約をめぐる瑕疵は治癒されていると主張する。地方自治法238条の4第1項に違反する契約は同条第6項の規定により無効になるところ、無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない(民法119条本文)、事後に本件施設の建物等の用途が廃止され、その後に本件施設の建物等が現実に譲渡されたからといって、本件契約が有効になるものではない。」(原判決17頁中段)

追認によっても無効な行為を有効にはできない。これは事実に基づく当然の法的判断であり、何人も覆すことはできない。
理由も説明せず同一の争点について自らの判断を真っ向から否定し正反対の判断をするというのは、判決文において人格の分裂的事態を来しており、この事態は何人にも容易にわかることであるから、何か、どうしても裁判の他方に賠償責任を負わすわけにはいかないなど訴訟外の事情を考慮したとしか考えられない。

【二】そのほかの争点と原判決の誤り

一、条例改正行為の行政処分性について

原判決は、14頁~15頁で本件処分の取り消し請求については、これを認めないと判断した。その理由として
「本件無償譲渡は、被告組合とむろと会とが対等な立場で締結した私法上の契約を履行したものにすぎず、公権力の行使としてされたものでないから、行政処分にはあたらない。」といって本件処分の取り消し請求を不適法として却下した。

しかし、原判決は、14頁下段で平成26年4月1日に「本件設置管理条例を改正し、・・・本件施設の建物等の用途は、同日をもって廃止されたものということができる。」と認定した。そうすると、横浜市保育園廃止処分取消請求事件(平成21年行ヒ75)平成21年11月26日第一小法廷の最高裁判例では、用途廃止の条例の「制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。」とされているから、原判決はこの最高裁判例に反するものということになる。

いうまでもなく、住民訴訟は財務会計上の行為や怠る事実の違法を対象とするだけでなく、行政事件訴訟法第43条の適用を受けて、行政処分の取消し請求も可能である。
控訴人は、本件条例(正式には組合規約)改正で丸山長寿園が組合の事務対象施設から削除されたという事実を最高裁判例に基づき行政処分性があると主張するものである。

二、地方自治法第238条の3違反について

 原判決は、17頁~18頁で本件無償譲渡先のむろと会の役員が本件組合の職員ではないとして、地方自治法に違反しないという。しかし、原判決も「むろと会は本件施設で勤務する職員による組合である本件職員組合が中心となって設立された団体であると認められる・・・」とか、「むろと会が本件職員組合が中心となって設立されたという経緯があった・・・」という事実は認めている。

 特定の公の施設を管理運営する職員達が設立したその団体に、その施設を委譲した事実を認めるならば、また、被控訴人も一貫してその事実を主張してきたのであるから、その団体の理事会の役員を職員以外の者に就任させていたとしても、実質的にはその職員が本件施設の委譲を受けたものと判断される。部外者を役員に付けたのは、地方自治法に制禁の法律があることを知り、それの脱法目的であることは明白である。
脱法目的で据えた役員が職員ではないことは当然であり、これを理由に挙げて適法だとするのは、余りにも不当であろう。むろと会の役員達は職員組合の謂わば代理人であり同体であるから、実質的に地方自治法第238条の3に違反していると判断されるべきである。

三、随意契約の方式違反について

 原判決は、18頁~19頁において、本件譲渡契約が随意契約で行われたことは問題がないという。
「本件契約は、価格の高低のみを比較することによって本件施設の運営主体を選定することができるような性質のものではなく、競争入札による方法が適するものでないから地方自治法施行令第167条の2第2号にいう「その他の性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当するというのである。

しかし、この該施行令の規定する内容は建造物、あるいは施設の譲渡契約を含むとは到底思えないもので、物品の製造や売り払い等の契約の規定である。甲第16号証を見ても「性質又は目的が競争入札に適しないもの」の範疇に本件施設の無償譲渡が入るとは考えられない。すなわち、地方自治法施行令第167条2第2号の規定は、

①不動産の買い入れ又は借入れ、
②普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修繕、加工、または
③納入に使用させるため必要な物品の売り払い、その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。 
(①②③は控訴人)
という文言で構成されている。不動産については買入れと借入れだけであり土地や建造物の売却や譲渡などがこの規定に入っているとは解釈できない。下線部の「その他の契約でその性質又は目的が・・・」のその他というのも文理上、①、②、③、特に③に関連するもので、それら以外のどんな契約にも広く適用されるというものではないと考えるべきである。むしろ、その性質から云えば公有財産の譲渡や売却は基本的に随意契約は許されるべきではなく、公開の入札に付する義務のあるものと考えるべきである。

拡大解釈するにしても甲第16号証の滋賀県の事例程度のものにすぎない。
随意契約で土地や建物の売却などは同地方自治法施行令167条2の1号規定(売買、貸借、請負その他の契約)に入るものであり、その場合金額上の厳しい制限が加えられていて、本件では金額上論外となる。不動産(公有財産)の売却や譲渡は、少額のものは別として、むしろその性質上、随意契約は許されていないと理解すべきである。

本件施設の場合はタダだから「価格の高低」ははじめから問題外で、低所得者をも収容する良好な経営者を選定するだけであるから、要件を定めたうえ、経験あり能力がある人材や企業を広く公募していわゆるプロポーザル方式などを取り入れた選定を遂行するべきであり、そうすることには何ら差し障りはない。

黒字経営で、億単位の公有財産が無償譲渡される好条件では、経営応募者は全国から殺到したと考えられる。

該施行令167条2第1項2号の物品や不動産などの契約の場合と同じレベルで選定するということの方が異常であり不適当であろう。本件の場合こそ、その性質や目的が競争入札に最適なのである。

そもそも、本件では、競争入札とか随意契約とかいう正規の手続きの選択どころではないのであり、はじめからむろと会に無償譲渡することが決められていた。むろと会は企業としては福祉事業の経営実績が皆無であり、事務所も持っていない幽霊団体であった。
平成25年8月1日付の福祉法人むろと会の設立認可申請書では、むろと会の事務所は高知県室戸市室戸岬町1675番地、すなわち丸山長寿園となっていた。民間団体が勝手に公の施設をその事務所としていたのである。

原判決は、随意契約の相手としては最もふさわしくない団体を選定した被控訴人の行為を是認したのである。

四、室戸市契約規則及び室戸市財産交換条例等の違反について

1、地方自治法第292条の解釈

 原審で控訴人は、仮に本件施設を普通財産として本件無償譲渡をしたとしても、適法な手続きを履践していない、すなわち室戸市の条例の規定では普通財産の無償譲渡は許されていない、という批判をし、その根拠として地方自治法第292条の規定を挙げた。このことについて、原判決は、19頁中段で地方自治法の適用を否定した。
地方自治法第292条は、一部事務組合など地方公共団体の作る事務組合について、組合が簡単な条例又は規則(規約)以外に普通地方公共団体のように条例規則を整備していない場合がほとんどである実状を踏まえ、これを補完する手立てを講じたものであり、構成団体の条例・規則を準用して使うことを認めたものである。

地方自治法第283条でも、事務組合の名称とか構成団体、事業の対象、組織などごく基本的な事柄を規約として定めることを義務付けているだけである。
したがって、本件組合も簡単な規約以外に、支出負担行為の決裁、公金支出、財産管理など日常の事務を遂行する上の条例・規則をもっていない。故に地方自治法第292条の規定に従って当然構成団体の主な市町村のそれらを準用しないでは、業務を遂行できないし、本件組合も暗黙のうちにそうしてきたはずであった。

しかるに原判決は被控訴人の原審での主張をうのみにし、地方自治法第292条の文章を誤解し、その順守を否定した。この条文の正しい解釈は本件訴訟にも重大であり、今後全国の事務組合の運営上重要であるので、ここにその条文を検討する。

地方自治法第292条

地方公共団体の組合については、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、都道府県の加入するものにあっては都道府県に関する規程、市及び特別区の 
 加入するもので都道府県の加入しないものにあっては市に関する規定、その他のものにあっては町村に関する規定を準用する。(下線部控訴人)

ここで問題なのは、前段下線部の「法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか」の意味であるが、これは明らかに国の法律や政令に存在する事務組合についての規定については、言うまでもなく順守しなければならないからこれは除外し、これら法令の規定のほかの、都道府県や市町村に関する規定(すなわち条例や規則など)を準用せよ、という趣旨であることは明瞭なのである。地方自治法の解説書ではこの法律で除外される法令とは、地方自治法、同施行令での事務組合についての規定をはじめ、公選法第267条、地方税法第1条第4項、地方公務員法第7条第3項・・・などとされている。

ところが原判決は、「同条の文言上、同条にいう「規定」とは、「法律又はこれに基づく政令の規定」を意味するものと解するのが自然である・・・・」というのである。
準用すべき都道府県や市町村に関する規定とは、遵守するのは当然のことだからこの292条の法律の準用を定める規定から除外するとされた、その国の法令のことであるというのである。除外すると明記されたものを準用せよというのは土台無理な話である。それでは諸々の法律や政令で規定されたものを除いて、そのほかに、法律や政令で都道府県や市町村についての規定とはどんなものがあるというのであろうか。

地方自治法の事務組合についての他の条項で例えば252条の12、同条16、同条17の第4項、同条17の3の第1項などでは、市町村の条例・規則が法令として準用が定められている。たとえば、地方自治法第252条の17の1第4項では
「第2項に規定するもののほか、第一項の規定に基づき派遣された職員の身分取扱いに関しては、当該職員の派遣した普通地方公共団体の職員に関する法令の規定の適用がある者とする。・・・」

「普通地方公共団体の職員に関する法令」とは一般職員等の給与支給条例のことであり、このように地方自治法の事務組合についての法令では、都道府県や市町村の条例や規則も法令として又は法令に並列して準用が定められているのである。
地方自治法292条は事務組合について包括的に法律や政令以外の法令(都道府県・市町村の条例・規則)の準用を指示したものであることは明白である。

2、普通財産としてもその無償譲渡は許されていない

原判決や被控訴人がこの地方自治法第292条をここまで曲解するのは、それの正しい解釈が、本件無償譲渡の違法性に直結する問題を内包しているからである。
 すなわち、本件無償譲渡は行政財産に私権を設定しこれを直接処分したということで地方自治法第238条4の第1項に真っ向から違反したのであるが、仮に百歩譲ってこれが普通財産に適法に転化されて処分されたという主張に話を替えるとしても、それでは普通財産として実際に適法な手続きをして処分をしたかどうかが問題となる。
そこで問題となるのが地方自治法第292条に基づき「室戸市有財産交換等条例3条」の規定に本件無償譲渡は違反している、という控訴人の主張であり、被控訴人らは、これについてまともに答えられない。

 準用されるべき「室戸市有財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」第3条において、行政財産はもとより普通財産でも、民間団体に譲与することも無償で貸し付けることも許されていない。それが許されるのは相手が市町村など公共団体か、農協などの公共的団体に限定されていて、公益法人でも一般企業には許されていない。
したがって、本件無償譲渡処分は、行政財産である場合はもとより、仮にこれを普通財産としても、法令違反となっている。

 被控訴人が地方自治法292条の準用規定を曲解しこれをかたくなに拒むのは、ここで被控訴人が決定的な破綻をきたすからである。すなわち、本件施設を用途廃止し普通財産に転化して譲渡したから適法である、という主張が根底から崩れるからである。
 地方自治法292条は本件組合の財務会計行為について構成団体(市町村の場合は市 本件組合では市は室戸市と安芸市)の条例・規則の適用を義務付けており、「室戸市有財産の交換、譲与、無償貸付けに関する条例」第3条(「安芸市財産条例」第3条も同様)の規定に逸脱する行為は違法である。

【三】結論

原判決は、地方自治法第238条4の第1項の規定に基づき本件無償譲渡を違法であり、同条第6項の規定で無効であると判示し、組合長小松の注意義務懈怠、過失を認定した。
そして、財産について違法・無効な行為によって組合がその所属する丸山長寿園の施設の全てを失ったのであり、巨額の損失を被ったことは明らかである。
本件施設の無償譲渡は、これが行政財産であればもとより、たとえこれが普通財産であっても、法的に許されない。

違法・無効・有責の認定に反して、本件無償譲渡によって損害は発生していないから、賠償責任も存在しないとした原判決の結論は、著しい理由不備又は理由齟齬をきたしている。
また、地方自治法第292条の曲解、地方自治法施行令167条の2第2号規定の法外な拡大解釈など法令解釈の明らかな間違いがあり、これら法令を正しく解釈すれば、本件無償譲渡の行為が救い難いほどに深刻な違法行為の重畳であって、その賠償などの責任が厳しく問われる必要があることは明らかである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年6月29日 (水)

玄海原発プルサーマル控訴審判決

News & Letters/494

        辛酸入佳境

2016年6月27日福岡高裁で佐賀県玄海町でMOX燃料を燃やすプルサーマル原発第3号機の運転差し止め事件につき佐賀地裁判決を上塗りする判決が下された。

高裁での審理は3回でおざなりそのものであり、九電側の安全主張・政府の許可基準に合格しているから安全だという主張をそのまま認めたものであった。

要するに政府の許可基準という高度に科学的な領域の行政には司法は口出しをしない、というこれまでの原発敗訴事件の踏襲なのである。

一昨年の福井地裁樋口英明裁判長、今年3月の大津地裁山本嘉彦裁判長らの判決の流れに背を向けるものである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年5月29日 (日)

安芸広域市町村圏特別養護老人ホーム組合への措置請求

News & Letters/491

        措置請求書

安芸広域市町村圏特別養護老人ホーム組合殿
                       平成28年5月27日
                       澤山保太郎
                       田原茂良
                       楠瀬立子

丸山長寿園無償譲渡の違法・無効判決について

          記

1、平成28年5月17日、高知地方裁判所民事部は、平成26年4月1日に民間団体むろと会に貴組合(当時組合長小松幹侍室戸市長)に所属していた丸山長寿園の無償譲渡の行為について地方自治法第238条の4第1項の規定に違反し、この無償譲渡を無効であると断罪した。

そして、その無法行為の原因として、当時の組合長小松幹侍の「尽くすべき注意義務を怠り、過失」によるものであると断定した。判決では、行政処分性はないとして取り消し請求の訴えを否定し、賠償責任も否認したが、貴組合がした無償譲渡の行為については明確に違法・無効であることを言明し、さらにその「無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない」と断定された。

行政側に傾く住民訴訟では極めて異例な判断である。たとえこの訴訟が上級審にかかって、賠償責任などが争われるとしてもこの違法・無効の判断がゆるぐことはありえない。
2、したがって、私たち原告は、この判決の趣旨に基づいて貴団体が、組合を構成する芸西村から東洋町に至る全市町村民に謝罪をしたうえ、以下の措置を取ることを要求する。

①むろと会から丸山長寿園の経営を取り戻すこと、
②平成26年4月1日以降の経営上の利益を全額回収すること、
③また、むろと会役員などに支払った報酬などは不当であり、全額回収すべきこと

 その他丸山長寿園が貴組合に所属するものとしての必要な措置を直ちに講ずることを求めるものである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

ふるさと産品の開発 | り・ボルト社 | ウェブログ・ココログ関連 | エッセイ | オンブズマン町長の視点 | ニュース | パソコン・インターネット | ヘーゲル哲学 | ホワイトビーチ・ホテル | マスコミの報道のありかた | マルクス・ノート | ローカルエネルギー | 三位一体改革と地方自治 | 世界の核事情 | 世界遺産 | 交通問題 | 人権問題 | 住民参加のありかた | 住民監査請求と地方自治 | 佐賀での講演会と交流 | 佐賀との交流 | 健康づくり | 公務員の気概 | 別件やみ融資事件 | 医療・福祉の問題 | 南海地震対策 | 原子力政策と地方自治 | 原子力産業の是非 | 反核運動 | 司法のありかた | 国との折衝 | 国政問題 | 国政選挙 | 土佐電鉄バス | 土佐電鉄問題 | 地域のリーダー | 地方の公共交通のありかた | 地方自治と原子力政策 | 地方自治の学校 | 地産地消 | 報道のありかた | 大月町低レベル放射性廃棄物問題 | 守口市との交流 | 室戸市の改革 | 室戸市政 | 市民オンブズマンの観点 | 市民自治のありかた | 市町村合併問題 | 平和の問題 | 心と体 | 情報公開 | 情報公開のありかた | 情報化時代について | 憲法改正問題 | 政治思想ノート | 教育のありかた | 教育委員について | 教育行政のありかた | 文化・芸術 | 旅行・地域 | 日本の歴史 | 日本国憲法と地方自治 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 最高裁の判例 | 有機農業 | 東洋町のあるものさがし | 東洋町の改革 | 東洋町の教育問題 | 東洋町の歴史 | 東洋町よもやま話 | 東洋町不正融資事件 | 東洋町庁議 | 東洋町役場の日常 | 東洋町町会議員の解職請求(リコール)に関する裁判 | 東洋町町長選挙2015 | 東洋町議会報告 | 東洋町議会選挙 | 核廃棄物拒否条例 | 歴史観・世界観 | 民主主義の実現と最高裁 | 民主主義は産業 | 水産業について | 水産物 | 海の駅東洋町 | 環境にやさしいまちづくり | 環境問題 | 生涯学習 | 生見海岸 | 甲浦地区 | 町政 | 町長日誌 | 白浜海岸 | 県闇融資事件 | 社会問題 | 社会思想 | 福祉問題 | 経済・政治・国際 | 育児 | 観光開発 | 読書ノート | 警察・司法のあり方 | 農産物 | 近隣市町村との交流 | 道の駅・海の駅開設の為に | 部落解放運動 | 野根地区 | 関西地区との交流 | 防災対策 | 青少年教育 | 食育 | 高レベル放射性廃棄物最終処分場 | 高知県政 | 高知県議会 | 高齢者問題 | NUMO