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2023年6月

2023年6月 8日 (木)

虚偽の哲学「梅原日本学」

『日本思想の古層』(2017年8月10日藤原書店 梅原猛 川勝平太)という本を読んでいる。
川勝氏は梅原猛の哲学を賛嘆して次のように言う、
「・・・日本において信仰が芸術に昇華したことは疑いないところである。芸術は文化の花である。

 

「花」自体が信仰と芸術の統合シンボルになる。・・・・芭蕉は「西行の和歌における、宗祇の連歌における、雪舟の絵における、利休が茶における、その貫通するものは一なり。しかも風雅におけるもの、造化にしたがひて四時を友とする。見るもの、花に非ずという事なし。おもふところ、月にあらずといふ事なし。像、花にあらざるときは、夷狄にひとし」(『笈の小文』)と言った。」

 

梅原日本学という哲学の中核的思想は 草木国土悉皆成仏 という概念であり、それは縄文時代以来の日本の基層をなす文化・信仰である、という。それはそうかもしれないが、「夷狄」を差別・排撃する芭蕉の芸術論を称揚するのとどういう整合性があるのだろうか。

 

芭蕉の「笈の小文」は上の引用に続いて「心花にあらざる時は鳥獣に類ス。夷狄を出、鳥獣を離れて、造化にしたがひ造化にかへれとなり。」
造化とは天地自然のことか。しかし夷狄も鳥獣も草木国土悉皆のうちに入るのではないか。夷も狄も人間である。

 

梅原人間学は、西洋の哲学ではなく東洋の思想、特に空海の密教を高く評価する。しかし、空海こそは、その有名な「性霊集」でその夷狄である蝦夷を「非人」と激しく非難し断じた最初の人間であった。梅原ら日本の美学をいう連中は、その思想の根底に日本の神道的な聖と俗、貴と賎の感情的概念を持っている。梅原は蝦夷を縄文の血を引くもので、後から入って来て大和朝廷を樹立した朝鮮系の人間集団によってカースト的差別を受けてきたと正しく位置付けていた。(『海人と天皇』268頁)

 

私は、蝦夷に対する激しい差別と収奪の名残が部落差別の原因だという考えをもって部落史を研究している。だから、梅原の日本学には大いに期待してその著作をよく読ましてもらったが、上に引用した芭蕉の美学論の差別性の無批判的な評価はいただけない。部落問題をまともに考えられない学者は、結局そこで陥穽に落ちてその思想の学問性を崩してしまうのである。

 

 

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2023年6月 1日 (木)

危機感のない世界

G7の会議も室戸のような小さい地方の議会もなべて等しく危機感がない。
G7の会議にウクライナのゼレンスキー大統領が現れたのはいいが、本例ならデンマークのグレタさんが
登場すべきであった。

G7会議では、全員が核が大好きな連中ばかりだからこれらに核廃絶などを期待するのが初めから間違いだ。
アメリカは広島長崎に原爆を落としたことを少しも反省しないし、日本はサディストの様にアメリカの核
の傘を懇望し、イギリスやフランスなどNATOの組も核が大好きでやめられない。

ロシアや中国など核の塊のような連中とG7の核愛好家連盟とがしのぎをけずっている。
彼らには地球の現在の危機的状況は全然見えないし見ようともしない。

この夏も次の夏、次の冬も、毎年毎年地球の灼熱化、極寒冷化、異常降雨と異常干ばつ、人類だけでなくあらゆる生物が地上では生存できなくなる事態が始まっているのに、核での脅し合いと通常兵器の打ち合いに熱中している大人帯を
グレタさんはどう見ているのだろうか。

地方自治体も、地球の現状、異常気象や気温の灼熱化などについては全く無関心で別世界の話のようだ。
今に何の作物もできないぐらいの灼熱がやってきて田畑が干上がり、暑くて家にもおられない、飲み水もないという事態がきたらどうするのか、そんなことが起こるなどとは全く誰も考えない。天下泰平がずっと続くと考えている。

異常気象や洪水、干ばつがどんどん襲ってくれば、自然災害だけでは収まらない、追い詰められた人間の集団が異常行動をとりだすだろう。暴力が暴れだし社会的動乱が全世界で噴出しだす。弱肉強食時代が支配する。生物の中で人類が一番先に絶滅するだろう。化石燃料の使用を直ちにやめなければならない。だが、それ自体がほとんど進まないばかりか、逆行状態だ。

地球灼熱化はどんどん進む。
例えば、50度を超える灼熱を防ぐために田畑には熱射を防ぐ大規模の網が必要、農業用の水を確保するための膨大な貯水槽の建設、熱射を避ける横穴居住域の開発、・・・・・・少しでも子孫が延命できるようないろいろな対策が必要である。

国がやらなければ都道府県や市町村が今すぐに対策を始めねばならない。
G7やG20にグレタ・ツーンベリさんを呼んで会議に出席してもらわねばならない。

現代の革命家は、我々が何をなすべきか、はっきり示さねばならない。ウランを含む化石燃料使用による地球の異常化に有効に対処するには、現在の帝国主義的政府やスターリン主義的国家の存続を許すわけにはいかない。
労働者市民の全世界的な蜂起と自己権力の樹立が必要なのである。

グレタさんを中心に全世界の国の労働者市民の代表が一堂に会し、地球の気候変動的危機に有効に対処する政策を決め、それを実行する権力を持たねばならない。Down with Imperialism ! Down with Stalinism ! のスローガンが今より以上に真実であるときはない。

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