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2020年2月16日 (日)

検事長の定年延長事件

東京高検の検事長の定年問題が重大な政治問題となってきたのは当然である。

時の権力が司法を思いのままに動かすという深刻な事態の背景には、日本の民主主義の脆弱性が横たわっているように思われる。

第一に三権分立ということの法的根拠が明確でない。日本国憲法ではそれが明示されていない。
むしろ、一権独裁という感じだ。国会で多数派が内閣を構成するから総選挙後直ちに立法と行政の2権が多数党に取られる。

そして最高裁長官もその判事も総理大臣が人事権を持つから司法も取られ、三権が一権(行政権)に収斂される。

それまで高級官僚の任命などには政府は遠慮していたが五年前の内閣人事局の設置によって官僚組織の首根っこが押さえられた。

私は提案する。日本国憲法の精神は明確だから、法律で三権分立を明確に定めるべきである。

そして、内閣の人事権が司法に及ばないこと、検察庁を含む各省庁の官僚の人事権にも内閣が干渉できない
ことを明確にすべきである。そして官僚についてもキャリア・ノンキャリアの差別を撤廃すること。

ここで憲法第15条第1項が重要である。

憲法は、国民固有の権利として国民が公務員を選任、罷免するとなっている。
しかしその実施方法を担保する法令がないので空文化され、憲法上何の権限もないのに総理大臣や首長が勝手気ままに人事権を振り回し、三権分立の建前をぶっ壊しているのである。

15条が言うこの公務員というのは、何も公職選挙法で選ばれる議員や首長に限られていることではない。

野党は、政府の独断専行・法令無視についてその度に驚いて異議を述べるが、そのような消極的な姿勢ではなく、日頃民主主義を保証・補強する法令を提案するなどもっと積極的な攻勢を持つべきだ。

私は、10数年前小さい町の首長であったが、毎年の人事異動については、まず全職員の希望をアンケートにとり、実際の移動の調整については総務課長にやらせ、特別に不適任と思われる場合以外は、口出しをしなかった。

選挙で選ばれ政治性を持つ首長が人事を切り盛りすれば必然的に中立であるべき行政職員が党派性を帯びるからである。

選挙で選任する場合とは違う憲法で謳われた国民の公務員任免権が空疎になっていること、これが、今回の検事長問題の基底にある。少なくとも、国や地方自治体の不法行為や不公正な公務員人事について国民が、現在の住民監査・住民訴訟制度程度のチェックができるような制度を作るべきだ。

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