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2016年7月 5日 (火)

丸山長寿園控訴理由書

News & Letters/495

   控訴理由書

平成28年(行コ)第25号  
                   平成28年7月1日

高松高等裁判所殿

                 高知県安芸郡東洋町河内405番地1
                       控訴人 澤山保太郎
                 高知県室戸市佐喜浜町1374番地
                        同  楠瀬立子
                 高知県室戸市吉良川町甲4015番地
                        同  田原茂良
                 高知県安芸郡奈半利町乙478番地1

            被控訴人 安芸広域市町村圏特別養護老人ホーム組合
                   同代表者組合長 齋藤一孝                    
                 高知県安芸郡奈半利町乙478番地1
               同 安芸広域市町村圏特別養護老人ホーム組合 
                                   組合長齋藤一孝 

【控訴理由の要旨】

原判決の本件行政財産の処分についての①事実認定とそれが地方自治法第238条の4第1項に②違反し、本件行政財産の処分、民間団体への施設の無償譲渡は③無効である、との判断、及び当時の組合長であった小松幹侍の組合長としての④過失・注意義務懈怠の責任の認定、①②③④は正当と考える。がしかし、小松幹侍の⑤賠償責任を否定する原判決の結論は、①~④の前提と賠償責任の結論が著しく撞着・齟齬をきたしていて、きわめて不合理であると考える。

本件処分(行政財産の無償譲渡)が違法、無効であり、長としての過失・注意義務違反が認定され、その行為によって、組合が数億円もの本件財産を喪失した以上は、その賠償責任が問われるべきである。
原判決にはそのほかにも法令の解釈に重大な誤りがあり改めて正しい判断を求める。

【控訴理由】

【一】原判決の主たる判断の正当性と欠陥

 1、本件処分の違法・無効性の判断

原判決「第三 当裁判所の判断」の3 争点(2)(無償譲渡処分の違法性)について(16頁)で
「本件契約は、地方自治法第238条の4第1項の規定に違反してされたものであり、同条の4第6項の規定により、無効である。よって、本件契約に基づく本件無償譲渡は、地方自治法に違反した違法な財務会計行為であったというべきである。」
と断定した。本件訴訟の主要な争点について控訴人の主張を認めた。

 行政財産の用途廃止以前に民間団体との間で譲渡契約をし、その契約に基づいて譲渡を実行した。これを地方自治法第238条の4第1項違反だとするのは何人も否定できない。本件譲渡契約及びその実行は地方自治法で制禁されている行政財産に私権を設定する行為であることは明らかであり、原判決はこれを認定しこの行為を無効であるとした。

また、原判決は、17頁中段で、
「被告らは、本件契約をめぐる瑕疵は治癒されていると主張する。地方自治法第238条の4第1項に違反する契約は同条第6項の規定により無効になるところ、無効な行為は、追認によっても、その効力を生じないから(民法119条本文)、事後に本件施設の建物等の用途が廃止され、その後に本件施設の建物等が現実に譲渡されたからといって、本件契約が有効となるものではない。」
と判示し、被控訴人の行為の違法性と無効性を確然と認定した。このゆるぎない認定による本件訴訟の結論はおのずと明らかである。

2、手続きさえすれば行政財産を用途廃止できるのか

ただ、この判断には、控訴人が原審において主張してきた稼働中の行政財産の処分(民間に譲渡)自体の違法性については判断をしていない。本件においては必ずしもそこまで判断する必要性はないが、事件の重大さの認識において、特に賠償責任の判断において相当な影響を及ぼす余地が出てくる。

原判決は、平成26年4月1日に本件施設の用途を廃止したことについては問題がないと考えている様子である。

原判決には、用途を廃止してその後に譲渡契約を結んで稼働中の行政財産でもこれを処分しておれば、何も違法性はなかった、という甘い認識が潜在している。
行政財産の用途は、それを管理している行政機関がこれを管理条例や規則から削除するなどして普通財産に落とし、一定の手続きをすれば自由に処分できるのか、という根本問題については、肯定しているようである。

しかし逆に、もし本件のように収容者が満杯状態の公の施設(行政財産)でも手続きさえすればこれを売却など自由に処分することが許されるのであれば、地方自治法第238条4の第1項の規定は、何の存在意義もないということになるであろう。
直前まで行政財産であっても0.1秒の瞬間も普通財産にしたという実績があれば、民間へ処分できるということになる。本件の場合は平成26年3月31日の23時59分59秒・・・までは行政財産で、翌4月1日の午前0時より民間の所有になった、行政財産を居ながら民有に転化した場合でも地方自治法第238条4第1項の制禁条項の適用は免れられるということになるのか。

後で詳しく見る原判決の最後尾21頁で「小松は、本件契約の締結を、本件施設の建物等が普通財産となる平成26年4月1日以降にすべきところを、早まって、未だ本件施設の建物等が行政財産であった平成25年12月25日にしてしまったものにすぎない。」
・・・にすぎない との判断には、稼働中の行政財産でも手続きさえすれば普通財産と同じように売却でも譲渡でも行政機関がこれを自在にする事ができるという謬見が根底にあるものと考えられる。

3、何の公益目的もなく行政財産の用途を廃止することは許されない

本件の行政財産の譲渡という行為も行政行為である。

①学説によれば、「行政行為は、公益の実現を目的とするものであり、従って、事情の変
遷に即応し、その結果が常に公益に適合することを必要とする。行政行為が一旦適法有効になされた後においても、事情が変遷し、それを存続せしめることが、公益に適合しないことになった場合においては、これを公益に適合せしめるために、原則としてこれを撤回することができ、また必要に応じ、公益に適合する新たな行政行為をなし得るものとしなければならぬ。」(甲第18号証 田中二郎 「行政法総論」)
 公の施設の用途廃止は行政行為の撤回に当たるであろう。その撤回には行政機関の意思だけではなく合理的な理由と公益性が担保されていなければならない。

②また、従来の行政行為を存続させることが後発的な事情の変化や施設などの老朽化など
でかえって公共性を失い公益目的にそぐわなくなった場合、当該行政行為の存続をやめ
る、撤回するということになるが、その場合でも、その撤回行為はあくまでも公益目的
であり、また受益者に対する補償や代替などを配慮しなければならず、為政者が自由勝
手に公の施設を廃止したり、許認可を撤回したりすることは許されていない、とする学
説が支配的である。(甲第19号証 海野敦史「行政法綱領」)

③また、これを公物の管理とみても、その公物の消滅原因が明確でなければこれを消滅させることはできない。
 「公用廃止行為は、公共用物が公物としての機能を失い、当該公物を公共の用に供する必要がなくなった場合、公物としての性質を喪失させる行政行為である。」

 (甲第20号証 原龍之介「公物営造物法」)

 本件の場合、行政財産を民間に譲渡する行為には何の公益性もないし、公物を消滅させる外形上の腐朽性もあり得ない。公共用に稼働中の行政財産を廃止するには、廃止すること自体にそれ相応の公共性、公益性がなければならない。公共施設を丸ごと私権に供するために行政行為(公用廃止)を遂行することは許されるはずがない。

④稼働中の行政財産を廃止するなどという暴挙を可能にする手続についてはもちろん、行政財産の処分についての手続規則はどこの自治体でも持っていない。
唯一つ控訴人が見つけたのは東北の東通村の規則(事務取扱要綱 甲第21号証)があるが、この要綱でも行政財産の処分の要件は、機能喪失または必要性の喪失に限られている。
  本件行政財産を用途廃止することが許される理由は何も存在しない。
 原判決は、フル稼働中の行政財産でも手続きさえすれば譲渡や売却が可能であるのかのような謬見を前提にして結論を下したと考えられる。

 本件では、平成25年12月25日で本件施設が未だ行政財産の段階で、譲渡契約を結ぶという決定的な私権設定の事実があるので、必ずしも行政財産の廃止について如上の認識がなくとも、正しい結論は可能であったが、如上の認識の欠如が、判決文最後尾の賠償責任についての奇怪な結論の伏線になった憾みがある。

二、組合長小松幹侍の責任についての判断

原判決は、20頁上段、「(小松の不法行為責任の有無)」についてで、
「被告組合の組合長である小松が、平成25年12月25日、むろと会との間で、本件契約を締結し、それに基づき平成26年4月1日にむろと会に対して本件施設の建物を譲渡したことは、上記3で説示した通り、違法な財務会計行為であるところ、前記認定事実によれば、小松は、その前提となる事実、すなわち、本件契約当時、本件施設の建物等は未だ被告組合が運営する特別養護老人ホームの用に供されていたとの事実を認識していたものと認められる。

そうである以上、小松は、本件契約が地方自治法第238条の4第1項に違反する違法なものであると認識すべきであり、平成25年12月25日の時点においては、本件契約を締結すべきではなかったといえる。それにもかかわらず、小松は、被告組合の組合長として尽くすべき注意義務を怠り、過失により、本件契約を締結し、平成26年4月1日、本件施設の建物等をむろと会に譲渡したものと認められる。」
と明瞭に小松幹侍の組合長としての責任、注意義務の懈怠、過失を認めた。

小松は、地方自治法の規定を知らなかったというわけにはいかない。知らなかったとしたらそれ自体が重大な過失である。およそ地方自治体の首長の任務は、公金及び公有財産の管理が最重要事項の一つであり、巨額の価値をもつ公有財産を私人や私企業にタダで譲渡するなどということはあり得ない事件であって、本件行為は地方自治法第238条4の第1項が禁じていることであり、この条項のど真ん中のストレートに違反したものである。
その行為が違法・無効であり、それを執行した首長の過失を認定したのであるから、判決の結論は、一直線に首長の賠償責任に帰着するはずである。

三、賠償責任の回避

1、如上の通り原判決は、小松幹侍組合長の不法行為とその有責を認定したが、判決文最後でわけのわからない理由を述べて、本件組合に損害が発生していないということでその賠償責任を否定した。すなわち、原判決は20頁後半部で、「もっとも、前期認定事実によれば・・・・」の文言のもとに、にわかに論調を変え、小松幹侍組合長の本件無償譲渡の経過をそのまま認め「小松は、本件契約の締結を、本件施設の建物等が普通財産となる平成26年4月1日以降にすべきところを、早まって、未だ本件施設の建物等が行政財産であった平成25年12月25日してしまったものにすぎない。」

(下線控訴人)という風に一個の判決文でありながら別人が書いたかのようにその不法行為、その瑕疵の過小評価に転じた。小松組合長らは、順序を間違えた、早まったに過ぎず、結果は同じだから問題にならないというような口吻を弄しだしたのである。
そうして原判決は次のようにいう。

「そうすると、①小松が注意義務を果たしたとしても、②平成26年4月1日には、本件施設の建物等の用途が廃止され、被告組合はむろと会に対して譲渡されていたといえるから、③小松が平成25年12月25日に本件契約を締結し、これに基づき、平成26年4月1日、本件施設の建物等がむろと会に譲渡したということをもって、④被告組合に賠償されるべき損害が発生したということはできない。したがって、小松が不法行為に基づく損害賠償責任を負うとは言えない。」(①②③④は控訴人  原判決21頁)
この判旨はきわめて難しいが読み解くと次のようになろうか。

①小松が注意義務を果たし、12月25日に契約を締結せず、4月1日に用途廃止をし
たうえで契約を締結し、そうしてむろと会に本件施設を譲渡するという正規の手続きをとったと仮定した場合、②小松はそうすることも可能であった(早まってそうしなかっただけだ)し、いずれにしても用途は廃止され無償譲渡が実行されたといえるから、
③契約と譲渡の順序を逆にしただけをもって④損害が発生した、賠償責任を負うとは言えない、ということであろう。

要するに事後に追認されたから問題がないというのである。

2、しかし第一に、小松が「注意義務を果たしたとしても・・・」という事実に反する仮定の話をもって、判決文の流れを逆転させ、その中核部分を書くことが許されるであろうか。本件の事実の経過は、行政財産についてこれを私法上の譲渡契約の対象とし(私権を設定)、その契約の履行として「用途廃止」・譲渡を遂行したのである。そのことは原判決(15頁中段に「本件無償譲渡は、被告組合とむろと会とが対等な立場で締結した私法上の契約を履行したもの・・・」)にあるとおりであって、これは被控訴人の主張でもあった。
原判決は自らが認定した不可逆の事実を、想定でもって逆転させ、その倒錯した事実に基づいて判断をしたものであって到底受け入れられない。

3、また既述の通り、第二に、この判断は、前掲原判決17頁中段の次の文章と根本的に対立する。
「被告らは、本件契約をめぐる瑕疵は治癒されていると主張する。地方自治法238条の4第1項に違反する契約は同条第6項の規定により無効になるところ、無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない(民法119条本文)、事後に本件施設の建物等の用途が廃止され、その後に本件施設の建物等が現実に譲渡されたからといって、本件契約が有効になるものではない。」(原判決17頁中段)

追認によっても無効な行為を有効にはできない。これは事実に基づく当然の法的判断であり、何人も覆すことはできない。
理由も説明せず同一の争点について自らの判断を真っ向から否定し正反対の判断をするというのは、判決文において人格の分裂的事態を来しており、この事態は何人にも容易にわかることであるから、何か、どうしても裁判の他方に賠償責任を負わすわけにはいかないなど訴訟外の事情を考慮したとしか考えられない。

【二】そのほかの争点と原判決の誤り

一、条例改正行為の行政処分性について

原判決は、14頁~15頁で本件処分の取り消し請求については、これを認めないと判断した。その理由として
「本件無償譲渡は、被告組合とむろと会とが対等な立場で締結した私法上の契約を履行したものにすぎず、公権力の行使としてされたものでないから、行政処分にはあたらない。」といって本件処分の取り消し請求を不適法として却下した。

しかし、原判決は、14頁下段で平成26年4月1日に「本件設置管理条例を改正し、・・・本件施設の建物等の用途は、同日をもって廃止されたものということができる。」と認定した。そうすると、横浜市保育園廃止処分取消請求事件(平成21年行ヒ75)平成21年11月26日第一小法廷の最高裁判例では、用途廃止の条例の「制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。」とされているから、原判決はこの最高裁判例に反するものということになる。

いうまでもなく、住民訴訟は財務会計上の行為や怠る事実の違法を対象とするだけでなく、行政事件訴訟法第43条の適用を受けて、行政処分の取消し請求も可能である。
控訴人は、本件条例(正式には組合規約)改正で丸山長寿園が組合の事務対象施設から削除されたという事実を最高裁判例に基づき行政処分性があると主張するものである。

二、地方自治法第238条の3違反について

 原判決は、17頁~18頁で本件無償譲渡先のむろと会の役員が本件組合の職員ではないとして、地方自治法に違反しないという。しかし、原判決も「むろと会は本件施設で勤務する職員による組合である本件職員組合が中心となって設立された団体であると認められる・・・」とか、「むろと会が本件職員組合が中心となって設立されたという経緯があった・・・」という事実は認めている。

 特定の公の施設を管理運営する職員達が設立したその団体に、その施設を委譲した事実を認めるならば、また、被控訴人も一貫してその事実を主張してきたのであるから、その団体の理事会の役員を職員以外の者に就任させていたとしても、実質的にはその職員が本件施設の委譲を受けたものと判断される。部外者を役員に付けたのは、地方自治法に制禁の法律があることを知り、それの脱法目的であることは明白である。
脱法目的で据えた役員が職員ではないことは当然であり、これを理由に挙げて適法だとするのは、余りにも不当であろう。むろと会の役員達は職員組合の謂わば代理人であり同体であるから、実質的に地方自治法第238条の3に違反していると判断されるべきである。

三、随意契約の方式違反について

 原判決は、18頁~19頁において、本件譲渡契約が随意契約で行われたことは問題がないという。
「本件契約は、価格の高低のみを比較することによって本件施設の運営主体を選定することができるような性質のものではなく、競争入札による方法が適するものでないから地方自治法施行令第167条の2第2号にいう「その他の性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当するというのである。

しかし、この該施行令の規定する内容は建造物、あるいは施設の譲渡契約を含むとは到底思えないもので、物品の製造や売り払い等の契約の規定である。甲第16号証を見ても「性質又は目的が競争入札に適しないもの」の範疇に本件施設の無償譲渡が入るとは考えられない。すなわち、地方自治法施行令第167条2第2号の規定は、

①不動産の買い入れ又は借入れ、
②普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修繕、加工、または
③納入に使用させるため必要な物品の売り払い、その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。 
(①②③は控訴人)
という文言で構成されている。不動産については買入れと借入れだけであり土地や建造物の売却や譲渡などがこの規定に入っているとは解釈できない。下線部の「その他の契約でその性質又は目的が・・・」のその他というのも文理上、①、②、③、特に③に関連するもので、それら以外のどんな契約にも広く適用されるというものではないと考えるべきである。むしろ、その性質から云えば公有財産の譲渡や売却は基本的に随意契約は許されるべきではなく、公開の入札に付する義務のあるものと考えるべきである。

拡大解釈するにしても甲第16号証の滋賀県の事例程度のものにすぎない。
随意契約で土地や建物の売却などは同地方自治法施行令167条2の1号規定(売買、貸借、請負その他の契約)に入るものであり、その場合金額上の厳しい制限が加えられていて、本件では金額上論外となる。不動産(公有財産)の売却や譲渡は、少額のものは別として、むしろその性質上、随意契約は許されていないと理解すべきである。

本件施設の場合はタダだから「価格の高低」ははじめから問題外で、低所得者をも収容する良好な経営者を選定するだけであるから、要件を定めたうえ、経験あり能力がある人材や企業を広く公募していわゆるプロポーザル方式などを取り入れた選定を遂行するべきであり、そうすることには何ら差し障りはない。

黒字経営で、億単位の公有財産が無償譲渡される好条件では、経営応募者は全国から殺到したと考えられる。

該施行令167条2第1項2号の物品や不動産などの契約の場合と同じレベルで選定するということの方が異常であり不適当であろう。本件の場合こそ、その性質や目的が競争入札に最適なのである。

そもそも、本件では、競争入札とか随意契約とかいう正規の手続きの選択どころではないのであり、はじめからむろと会に無償譲渡することが決められていた。むろと会は企業としては福祉事業の経営実績が皆無であり、事務所も持っていない幽霊団体であった。
平成25年8月1日付の福祉法人むろと会の設立認可申請書では、むろと会の事務所は高知県室戸市室戸岬町1675番地、すなわち丸山長寿園となっていた。民間団体が勝手に公の施設をその事務所としていたのである。

原判決は、随意契約の相手としては最もふさわしくない団体を選定した被控訴人の行為を是認したのである。

四、室戸市契約規則及び室戸市財産交換条例等の違反について

1、地方自治法第292条の解釈

 原審で控訴人は、仮に本件施設を普通財産として本件無償譲渡をしたとしても、適法な手続きを履践していない、すなわち室戸市の条例の規定では普通財産の無償譲渡は許されていない、という批判をし、その根拠として地方自治法第292条の規定を挙げた。このことについて、原判決は、19頁中段で地方自治法の適用を否定した。
地方自治法第292条は、一部事務組合など地方公共団体の作る事務組合について、組合が簡単な条例又は規則(規約)以外に普通地方公共団体のように条例規則を整備していない場合がほとんどである実状を踏まえ、これを補完する手立てを講じたものであり、構成団体の条例・規則を準用して使うことを認めたものである。

地方自治法第283条でも、事務組合の名称とか構成団体、事業の対象、組織などごく基本的な事柄を規約として定めることを義務付けているだけである。
したがって、本件組合も簡単な規約以外に、支出負担行為の決裁、公金支出、財産管理など日常の事務を遂行する上の条例・規則をもっていない。故に地方自治法第292条の規定に従って当然構成団体の主な市町村のそれらを準用しないでは、業務を遂行できないし、本件組合も暗黙のうちにそうしてきたはずであった。

しかるに原判決は被控訴人の原審での主張をうのみにし、地方自治法第292条の文章を誤解し、その順守を否定した。この条文の正しい解釈は本件訴訟にも重大であり、今後全国の事務組合の運営上重要であるので、ここにその条文を検討する。

地方自治法第292条

地方公共団体の組合については、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、都道府県の加入するものにあっては都道府県に関する規程、市及び特別区の 
 加入するもので都道府県の加入しないものにあっては市に関する規定、その他のものにあっては町村に関する規定を準用する。(下線部控訴人)

ここで問題なのは、前段下線部の「法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか」の意味であるが、これは明らかに国の法律や政令に存在する事務組合についての規定については、言うまでもなく順守しなければならないからこれは除外し、これら法令の規定のほかの、都道府県や市町村に関する規定(すなわち条例や規則など)を準用せよ、という趣旨であることは明瞭なのである。地方自治法の解説書ではこの法律で除外される法令とは、地方自治法、同施行令での事務組合についての規定をはじめ、公選法第267条、地方税法第1条第4項、地方公務員法第7条第3項・・・などとされている。

ところが原判決は、「同条の文言上、同条にいう「規定」とは、「法律又はこれに基づく政令の規定」を意味するものと解するのが自然である・・・・」というのである。
準用すべき都道府県や市町村に関する規定とは、遵守するのは当然のことだからこの292条の法律の準用を定める規定から除外するとされた、その国の法令のことであるというのである。除外すると明記されたものを準用せよというのは土台無理な話である。それでは諸々の法律や政令で規定されたものを除いて、そのほかに、法律や政令で都道府県や市町村についての規定とはどんなものがあるというのであろうか。

地方自治法の事務組合についての他の条項で例えば252条の12、同条16、同条17の第4項、同条17の3の第1項などでは、市町村の条例・規則が法令として準用が定められている。たとえば、地方自治法第252条の17の1第4項では
「第2項に規定するもののほか、第一項の規定に基づき派遣された職員の身分取扱いに関しては、当該職員の派遣した普通地方公共団体の職員に関する法令の規定の適用がある者とする。・・・」

「普通地方公共団体の職員に関する法令」とは一般職員等の給与支給条例のことであり、このように地方自治法の事務組合についての法令では、都道府県や市町村の条例や規則も法令として又は法令に並列して準用が定められているのである。
地方自治法292条は事務組合について包括的に法律や政令以外の法令(都道府県・市町村の条例・規則)の準用を指示したものであることは明白である。

2、普通財産としてもその無償譲渡は許されていない

原判決や被控訴人がこの地方自治法第292条をここまで曲解するのは、それの正しい解釈が、本件無償譲渡の違法性に直結する問題を内包しているからである。
 すなわち、本件無償譲渡は行政財産に私権を設定しこれを直接処分したということで地方自治法第238条4の第1項に真っ向から違反したのであるが、仮に百歩譲ってこれが普通財産に適法に転化されて処分されたという主張に話を替えるとしても、それでは普通財産として実際に適法な手続きをして処分をしたかどうかが問題となる。
そこで問題となるのが地方自治法第292条に基づき「室戸市有財産交換等条例3条」の規定に本件無償譲渡は違反している、という控訴人の主張であり、被控訴人らは、これについてまともに答えられない。

 準用されるべき「室戸市有財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」第3条において、行政財産はもとより普通財産でも、民間団体に譲与することも無償で貸し付けることも許されていない。それが許されるのは相手が市町村など公共団体か、農協などの公共的団体に限定されていて、公益法人でも一般企業には許されていない。
したがって、本件無償譲渡処分は、行政財産である場合はもとより、仮にこれを普通財産としても、法令違反となっている。

 被控訴人が地方自治法292条の準用規定を曲解しこれをかたくなに拒むのは、ここで被控訴人が決定的な破綻をきたすからである。すなわち、本件施設を用途廃止し普通財産に転化して譲渡したから適法である、という主張が根底から崩れるからである。
 地方自治法292条は本件組合の財務会計行為について構成団体(市町村の場合は市 本件組合では市は室戸市と安芸市)の条例・規則の適用を義務付けており、「室戸市有財産の交換、譲与、無償貸付けに関する条例」第3条(「安芸市財産条例」第3条も同様)の規定に逸脱する行為は違法である。

【三】結論

原判決は、地方自治法第238条4の第1項の規定に基づき本件無償譲渡を違法であり、同条第6項の規定で無効であると判示し、組合長小松の注意義務懈怠、過失を認定した。
そして、財産について違法・無効な行為によって組合がその所属する丸山長寿園の施設の全てを失ったのであり、巨額の損失を被ったことは明らかである。
本件施設の無償譲渡は、これが行政財産であればもとより、たとえこれが普通財産であっても、法的に許されない。

違法・無効・有責の認定に反して、本件無償譲渡によって損害は発生していないから、賠償責任も存在しないとした原判決の結論は、著しい理由不備又は理由齟齬をきたしている。
また、地方自治法第292条の曲解、地方自治法施行令167条の2第2号規定の法外な拡大解釈など法令解釈の明らかな間違いがあり、これら法令を正しく解釈すれば、本件無償譲渡の行為が救い難いほどに深刻な違法行為の重畳であって、その賠償などの責任が厳しく問われる必要があることは明らかである。

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