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2016年5月16日 (月)

野根漁協1000万円不正融資結審

News & Letters/486

野根漁協への松延宏幸東洋町長による不正融資事件の(高松高裁)はたった一度で結審となって、判決は7月15日ということになった。
虚偽の理事名簿が功を奏して最高裁で差戻しを勝ち取った東洋町。
一度は松延宏幸に1000万円の支払いを命じた高裁がどのような判決をするのか興味深い。
あくまでも行政に勝たせるために尽力するのか。それにしても虚偽の理事をでっちあげるなど数々の違法行為をしてきた行政をかばいきれるのか。原発裁判など、行政の悪をかばい立てることを仕事にする日本の司法、「法服の王国」の闇はいよいよ深い。この闇がいつ晴れるのか。

平成28年(行コ)第8号 損害賠償請求控訴事件
控訴人 澤山保太郎
被控訴人 東洋町長松延宏幸
        控訴人準備書面(4)
                  平成28年4月18日
高松高等裁判所 殿
                  控訴人 澤山保太郎

控訴人は以下の通り、被控訴人準備書面(1)について陳述する。
被控訴人準備書面(1)について

一、本件理事会の理事名簿を実証するもの

被控訴人は、控訴人が提出した甲第37号証の2(野根総会議事録)、及び甲第39号証(県庁への業務報告書)について、
「いずれも本件で問題となっている平成23年11月3日の本件理事会当時の理事を直接証明するものではない。」
と主張する。
しかし、平成23年11月3日当時の本件理事会の理事について、野根漁協の組合員総会で選任した事実を直接証明するのは上掲の甲第37号証の2、及び甲第39号証である。野根漁協定款では理事の選任の方法は2種定められている。すなわち、

①一つは、正規に選挙管理委員を任命し、立候補者を募り組合員の投票によって選出する。
②今一つは、漁協の総会で選出する方法である。
③の総会の場合はもちろん臨時総会と言うこともあり得る。

いずれにしても役員の任期は3年間であり、その選出は、組合員の総意によって決定される。野根漁協では②の組合員総会方式が3年ごとに取られてきた、という。
本件当時の理事の選出行為は平成21年の上掲「平成21年度野根漁協総会議事録」やそれを反映した「平成21年度業務報告書」の示すとおりであり、それ以外には存在しない。総会議事録が第1の証拠であり、監督官庁である県庁への業務報告書はそれを反映したものにすぎない。

通常は、平成21年度に選出行為があれば、平成22年度、平成23年度には選出行為は存在しない。平成23年度もこの理事の任期が続行中であり、これら理事の選出の事実について、別箇の証拠があるわけではない。
被控訴人は、最高裁へ提出した上告受理申立書に掲示した理事が正規に選出されたものであるという事を立証する義務がある。それを実証する野根漁協の総会なりの議事録があるのか、被控訴人の主張は漁協の業務の実態についての無知から発したものである。

二、甲第21号証別紙1「動議1」の理事名について

被控訴人は上掲甲第37号証の2、甲第39号証の理事が甲第21号証の別紙1の「動議1」と相違している、と主張している。
これは、確かに差戻し前の高松高裁の判決文で指摘されていた。
高松高裁の指摘は、控訴人が書証(甲第33号証)として提出していた役員名簿(甲第37号証の2、甲第39号証と同じもの)について、甲第21号証別紙の名簿と相違していて真偽の判定がつかないと判示していた。高松高裁は、甲第21号証別紙「動議1」の名簿を調査特別委員会の主張(あるいは控訴人の主張)であると誤認したものと考えられる。
甲第21号証は、「特別調査委員会中間調査結果報告書」というタイトルがつけられている。それは、

①「東洋町漁業災害対策資金借入についての中間調査報告書」(平成24年9月10日付)
②「特別監査報告書」(平成24年8月8日付) 別紙5
③「東洋町漁業災害対策貸付金借入についての中間調査報告」

(平成23年9月10日付) 別紙7

の三つの文書が主内容で、後は特別調査委員会が集めた資料であって、これら添付資料については、特別調査委員会の主張するところのものではない。
 上の①の中間調査報告書によると、この「動議1」は、平成23年11月9日に開かれた野根漁協臨時総会で、ある組合員から提出されたもので総会では取り上げられなかったものであって、調査特別委員会の資料として綴じられていたものである。
 調査特別委員会も、当時の野根漁協の執行部もこの「動議1」についてこれを認めたわけではないし、「動議1」が議決されたということでもない。あくまで組合員から出た一つの問題提起の資料にすぎない。

当時野根漁協は「組合長」(桜井菊蔵)らが勝手に本件借入を行う上でにわかに理事に任命するなど理事について無茶苦茶なことをしていた。
しかし、①の中間調査報告書では、特別調査委員会は、役員は正組合員が総会においてこれを選挙するという定款のとおりであり、理事会のみで承認された理事は認めない、という立場を明確にしている。また上の③の文書でも、特別調査委員会は本件確約書についても「総会において承認されていない理事がおり、署名・押印されている。」と指摘するとおりであって、当時の正規の理事が平成21年度の総会で選出されたものだという認識のもとに判断していることは明らかである。

三、にわか「理事」松田安信、松吉裕也について

 確かに被控訴人準備書面がいうように甲第41号証の1、同号証2と甲第21号証の二人の署名した「確認書」の内容とは矛盾する。だから、控訴人は正規の理事でもない者が署名押印したものであるのでその「確認書」は無効だと主張しているのである。
松吉裕也君は、当時も今も、若い漁協の事務員である。事務員は職務専念義務があり、職務外に漁業を営むことは不可能であり組合員にはなれないから、通常、漁協の役員や理事にはなれない。

また、野根漁協では理事(雇用主)と被雇用者(事務員)との兼任は認めないことになっているという。この事実については、県下の漁協関係者はみんな知っていて、被控訴人も知る立場にある。被控訴人は、町役場でも首長や幹部職員の場合、職員組合から脱退するという慣行はよく知っているはずである。松吉裕也君が漁協の事務員として働いていることは、役場幹部や水産関係職員もよく知っていることがらである。「確認書」は、本来理事になれない者に理事だとして署名押印させたと考えられる。

また、松田安信は現在高知県警に収監中であるが、日ごろから理事に選出されるような素行の持ち主ではないことは被控訴人が知悉している。その素行についてはここではプライバシイに係ることだからつまびらかにはしない。

この二人が、仮に理事として署名押印をしたという文書を見たとき、まさにそのとき、野根漁協の理事たちの選出の経緯について被控訴人がただすべき契機となったはずのものである。すなわち、通常の場合、この二人が漁協理事に名を連ねた文書が上がったら、その文書を疑う必要がある、というものであろう。

四、特別利害関係人松吉孝雄について

 被控訴人は、野根漁協の理事で本件11月3日の理事会に出席したという松吉孝雄について「松吉孝雄が松吉保の弟かは知らないが、・・・弟といっても、本件貸付によって直接に利益をうける者ではないから、・・・・・特別な利害関係があるとは言えない。」という。
松吉孝雄が本件貸付金の実際の借り手である松吉保の実弟であることは戸籍謄本のとおりである。理事や取締役の2親等の者が特別利害関係人であることは会社法上の常識であり、内閣府令(「企業内容等の開示に関する内閣府令」)第1条31号にも明記されている。
松吉孝雄も同じ漁協に属し、別の小敷網漁を営んでいて、松吉保と互いに助け合って生活をしてきたことはいうまでもない。最高裁は、松吉孝雄が保と特別利害関係人であることを知らなかったといえるが、人口希少の町役場で数十年事務を執ってきた被控訴人がこれを知らなかったとは言えない。8人の理事のうち、特別利害関係人2人の理事(松吉保彦、松吉孝雄)を控除すれば6人が議決権者であり、そのうち3人(桜井菊蔵、井崎勝行、桜井勇)しか出席していないという事になるから、本件理事会は不成立である。

五、組合長桜井菊蔵について

1、平成23年11月3日の本件理事会は、組合長桜井菊蔵によって招集され、桜井菊蔵が議長となって開催したことになっている。しかし、この桜井菊蔵組合長という事実については疑義があり、その組合長就任は以下のとおり無効であると考える。
前組合長桜井淳一が平成23年10月4日に組合長の辞表を提出したのは事実である。
(甲第42号証)
そこで誰が招集したかわからないが、翌10月5日、野根漁協理事会が開かれたことになっている。この理事会議事録(甲第43号証)によると、出席した理事は全部で5人でその名前は、井崎勝行、桜井菊蔵、桜井勇、松吉孝雄、松吉保であるという。

しかし、下線のある松吉保は正規の総会で選出された理事ではないからそれを控除すると4人の理事で開いたという事になる。当時の野根漁協の理事定数は8人である。
8人のうち4人の出席では過半数に足らない。野根漁協定款第49条の3では、議決権を行使できる理事のうち過半数の出席がなければ理事会は開催されたことにはならない。
第1号議案は、桜井淳一組合長の辞任届の承認案(解任案ではない)だから、別段、控除すべき特別利害関係役員は誰もいない。

第2号議案も、新代表理事(組合長)選任議案だから、控除すべき特別利害関係人は誰もいない。野根漁協の当時の理事は8人であるから5人以上が出席しなければ理事会は開催され得ない。したがって、平成23年10月5日の桜井淳一組合長辞任承認、新組合長桜井菊蔵選任の理事会は成立していない。
桜井淳一組合長の組合長職辞任は承認されず、また、桜井菊蔵新組合長の選任もされていなかった。にもかかわらず、桜井菊蔵らは被控訴人らと共謀して強引に組合長の変更の登記をし、本件貸付金の借入の申請、実際の借入を実行した。当然法務局への登記も虚偽であって無効なものである。

2、野根漁協の定款第47条では、理事会は組合長が招集することになっている。
 しかし、辞任を表明していた桜井淳一組合長は自らの辞任と後任の選任について理事会を招集したことはないし、連絡もなかったからそれに出席もしていないという。
 したがって、平成23年10月5日の新組合長選任の理事会は組合長が全く関与せず、仮に定足数に足りて開かれたとしても無効である。
3、したがって、 桜井菊蔵 新「組合長」が招集した11月3日の本件理事会は招集権限のない者(にせの組合長)が招集した理事会であって無効である。
 そして、桜井菊蔵 新「組合長」の名前で出した甲第5号証など本件借入申請書関係書類もすべて無効である。したがって本件借入(貸付)行為そのものが無効なものであった。
     

平成28年(行コ)第8号 損害賠償請求控訴事件
控訴人 澤山保太郎
被控訴人 東洋町長松延宏幸

控訴人証拠説明書
           平成28年4月18日
高松高等裁判所 殿
                   控訴人 澤山保太郎

一、甲第42号証(写し)
 1、標記:野根漁協協同組合御中
 2:作成期日:平成23年10月4日
 3、作成者:桜井淳一
 4、立証の趣旨:

     長年組合長を務めていた桜井淳一は、本件貸付金に反対したため
     松吉保一族やそれと結びついた桜井菊蔵、井崎勝行らから非難され、
     組合長辞任を迫られて、辞任を表明した。但し理事職は辞任していない。

二、甲第43号証 (写し)
 1、標記: 理事会議事録
 2、作成期日:平成23年10月5日
 3、作成者: 野根漁協
 4、立証の趣旨:

この書証は、最近野根漁協から控訴人に提供されたものである。
本件当時平成23年10月5日に野根漁協が法務局に新しい理事長を登記する際に法務局に提出し、「原本還付」されたものである。
 本件貸付金事件の漁協側主要人物桜井菊蔵らが、野根漁協理事会を開いて桜井淳一組合長の辞任承認、新組合長桜井菊蔵選任の決議をしたという。しかし、8人の正規の理事のうち4人しか出席していないので成立したことにはならない。
 したがって、桜井菊蔵組合長名で申請した本件借入金は無効である。

三、甲第44号証 (写し)
 1、標題:借用書
 2、作成期日:平成23年11月22日
 3、作成者:松吉保彦
 4、立証の趣旨

 本件貸付金が、被災漁家である松吉保小敷にわたらず、別人に渡されていた事実を証するもの。

平成28年(行コ)第8号 損害賠償請求控訴事件
控訴人 澤山保太郎
被控訴人 東洋町長松延宏幸
控訴人準備書面(5)
                   平成28年4月19日
高松高等裁判所 殿
                    控訴人 澤山保太郎

控訴人は以下の通り、被控訴人準備書面(2)について陳述する。
被控訴人準備書面(2)について

一、被控訴人は、
「1、理事会の決議に瑕疵がないことは、従前の主張のとおりである」
という。

1、「従前の主張」すなわち、被控訴人準備書面(1)で本件理事会についての主張は
 (1)控訴人が提出した書証甲第37号証の2、甲第39号証の議事録や、業務報告書は平成21年度のもので平成23年度の本件理事会の構成理事の事実を直接証明するものではない。
 (2)また、これら書証は、甲第21号証別紙1の「動議1」の理事名とも一致しない。
 (3)甲41号証の1、及び2の松田安信及び松吉裕也の書面はいずれも甲第21号証の別紙の「確約書」の内容と矛盾する。
 (4)故に、(1)、(2)、(3)の事実は「最高裁判決が前提とした事実関係、すなわち、理事8名のうち6名が出席した理事会において、全会一致で、東洋町に対して本申請をする・・・・という事実認定を左右するものではない。」
 というものであった。
 (1)(2)(3)については控訴人準備書面(4)で説明し反論した通りであり、たわいもないものである。
 (4)については、すでに控訴人準備書面(1)及び(2)で詳しく反論してある。

2、なお、「最高裁判決が前提とした事実関係」というが、最高裁は何も本件に係る事実、野根漁協の真実の理事名簿について具体的に調査したり審理をしたわけではない。
最高裁は被控訴人が掲げた虚偽の理事名簿を鵜呑みにしそれを前提にして昭和54年の最高裁判例の論理を機械的に適用したにすぎない。今問題になっているのはその「最高裁判決が前提とした事実関係」=被控訴人の出した上告受理申立て理由書の理事名簿が真実かどうかなのである。

 それが、真実であるというのであれば、被控訴人は証拠を挙げて実証する必要がある。
その証明ができるのかできないのか、それさえ答えればいいのであって、他の些末なことを言い並べる必要はない。
 準備書面(1)(2)のどこを見ても被控訴人はそれを実証しようとしていないし、することができていない。
 控訴人は、甲第33号証の正規の理事名簿を立証した。最高裁のいう昭和54年の特別利害関係人に関する会社法上の事件の判例の適用は、あくまでも正式の理事に適用されるべきなのであって、虚偽の理事名簿に適用されてはならないのである。

3、なお、特別利害関係人のことでいうなら、本件理事会に出席したと称する理事は全員、本件借入について債務保証となる「確約書」(甲第10号、甲第21号証の別紙4)に署名押印していることは紛れもない事実である。
これは、本件貸付規則第5条の(3)にその義務が規定されていたからである。
この債務保証は、町に対して、組合(又は転貸相手の松吉保小敷)のためにするものであって、野根漁協全理事は組合又は松吉保との関係では特別利害関係人ということに予定され、実際そうなった。全員が松吉保との間で特別利害関係人であるとすると、平成23年11月3日の本件理事会の出席者は全員議決権がないということになる。無論利益相反の事実についての報告・承認もされていない。この点でも、本件理事会は成立していないと言える。

二、被控訴人は、
「2 野根漁協が、本件貸付に係る金員を原資として、松吉保彦に1000万円を融資していることは、本件貸付後の野根漁協と組合員との関係であって、本件貸付自体の効力に影響を及ぼさない。」という。
1、この記述は、控訴人が転貸し相手が相違している、松吉保が高齢で返済能力がないので又貸しのさらに又貸しをやっていると指摘していることについて、弁解しているつもりであろう。

しかし、本件貸付金は、最高裁判決も指摘しているように、野根漁協の借入申請書の添付資料として特定漁家、松吉保小敷の名が挙がり、その実績や被害状況が記載されていて転貸先が決められていた。松吉保彦は松吉保の息子であるが、当時別の企業体(東洋大敷)の漁労長であって、松吉保小敷には全く従事していないし、所帯も別個であった。
また、この被控訴人の主張は、転貸先が誰であろうと、被控訴人には関係がない、と言いたいのであろう。しかし、本件貸付規則第12条で町長は、「融資を受けた組合及び借入漁業者に対し、関係帳簿書類その他の必要な物件を検査し、または必要な報告を求めることができる。」とし、また、同規則第10条では、町長は「資金の貸し付けを受けた組合及び当該組合から転貸を受けた漁業者が、次の各号のいずれかに該当すると認めた場合は、組合に対して融資金額の一部又は全部について返済を求めることができる。」として、貸付金の目的外使用などを挙げて、転貸先の漁家にまで規制する趣旨を規定している。漁協に貸したから、あとは好きなようにせよという制度ではないのである。

いずれにしても本件貸付金が、被災漁家のうち定められた松吉保小敷に貸し付けられず、被災とは何の関係もない別名義の者に貸し付けられている事実は否定することはできない。したがって本件貸付金が誰の手に渡ったのか不明であり、誰から返済されるのかも不明であって、これによって本件貸付事業がまったく無法なものであったことは明らかであろう。

三、被控訴人は、

「3 野根漁協は、総会において、災害対策資金を借り入れる旨の定款変更をすることを決議・・・」 という。

1、控訴人がこの定款変更の総会の決議について再三反論したのであるが、被控訴人はその反論について何にも主張がなく、ただ決議した、決議した、を繰り返すのみである。
 控訴人はすでに何度もこの野根漁協平成23年11月9日の臨時総会では、本件貸付金にかかる定款変更は有効に決議されていない、と主張してきた。

2、その証拠は乙第1号証の臨時総会議事録そのものである。この議事録には1号議案として「定款一部変更承認のこと」と記載されているが、定款の何条を、どのように変更するか、記載したものがなく、何のことだかわからない。貸付とか借入れとかの言葉もなく、1000万円とかいう金額も何も見えない。ちんぷんかんぷんの禅問答である。
 これが議事録であるとは想像できるとしても、何か特定条項の定款変更の総会議事録だと判断できる人はどこにもいないであろう。この議事録で具体的に定款変更を伺わせる何かをつかめる人は誰もいないだろうか。定款変更の白紙委任でも取ったということであろうか。そんな決議は無効である。

2、甲第21号証で控訴人準備書面(4)で掲示した①の「東洋町漁業災害対策資金借入についての中間調査報告書」でも11月9日の臨時総会で本件貸付金にかかる定款変更がなされた趣旨の記載はなく、むしろ翌年第2回目の臨時総会で本件貸付金について初めて説明があったという報告がなされている。すなわち「第1号議案の際に東洋町漁業災害対策資金借入れのことに関して初めて当組合員である漁師に発表したのである。」と記載されているとおりである。(事件翌年のこの第2回目の臨時総会は1000万円借入れについて紛糾し「流会」になって終わっている。)

この中間調査報告書には11月9日の臨時総会では、組合員から役員の状況について「動議」が出されたが、そのことについては議事録に記載されていないという指摘もなされている。被控訴人は、この11月9日の臨時総会で、どのような定款の変更がなされたのか、定款第何条を変えて、または新たにつけ加えて、かくかく、しかじかの定款に変更したということを想像でもいいから提起するべきではないか。
また、被控訴人は、「この総会決議は、本件貸付申請の翌日にされたものであり、借入金の最高限度額を1000万円と定めたものと同視し得る。」という。
 貸付申請の翌日に開かれたということだけで、何の定款変更か記載のない議事録の内容が特定できるであろうか。組合員は、何も説明を受けていないのである。

 まして、仮に貸付事業についての定款変更だとしても、それがただちに「借入金の最高限度額1000万円」の決議と同視できるということになるのか、
 貸付と借入れとはまったく違う概念であり、経理上も別扱いである。法廷では普通の人間の論理でものを言うべきではないだろうか。

また、被控訴人は、
「本件貸付後に、知事が定款変更を許可している。そのため、定款に関することで、本件貸付が無効になることはない。」という。
定款変更についての知事の許可前に、本件貸付事業は実行されたことは代1審判決でも認定された。定款変更の許認可は事後追認が許される事案ではない。無許可の期間に実行した行為は無効である。無免許運転者が乗車後に免許を取得したからといって無免許運転の事実と犯罪が帳消しになるわけではない。

被控訴人は県の認可と実行行為が前後していることについて、一言の弁解もせず、それどころか事後に許可をしているから有効だ、と平然と述べている。
裁判所は無効なものは無効という判断をすればよく、これだけの重畳せる無法行為をかばう必要はない。

四、またさらに、被控訴人は、

「最高裁判決の認定のとおり、本件規則が効力を生じていないものであっても本件規則に基づく貸付と同様の目的を有する貸付をするに当たり、漁業協同組合の理事会の議決を要するものとすることは合理的なものである・・・・」という。
 確かに今回の最高裁判決には、これと同様な文言があった。しかし、最高裁は、①本件規則そのものが有効なものか、②また、本件貸付が本件規則と同様の目的で実行されたかどうか、③漁協組合の理事会が成立していたのかどうか、④漁協組合の理事会の議決だけで本件借入れが可能とされるのかどうか、⑤まして、本件規則が効力が生じているかどうか、効力がない場合でも本件貸付が有効といえるかどうか等々については最高裁として何も調査していないし、審理して、事実認定をしたわけでもない。

 「本件規則が効力を生じていないものであっても・・・」というぶっきらぼうな最高裁の判決文の意図が奈辺にあったかわからないが、それはあくまでも他の手続きなどが適法であればという前提であって、ほかに問題がなく、こと理事会については昭和54年の判例で適法だという判断を強調するのあまり出た言辞であろう。

 本件規則が無効であれば、それに基づく、あるいはそれと同趣旨で実行された本件貸付の有効性も問われることはいうを俟たない。事実について何の審理、何の論証もないことについて最高裁判決の一字一句を承詔必謹式にありがたく受け奉る必要はない。
 転貸しなど本件規則の違法性、本件規則の趣旨や各条項の規定に外れた行為の数々、そもそも本件規則を一般に交付しなかったなど本件規則にかかる重大な瑕疵の事実についてはすでに控訴人準備書面(2)で弾劾してある。それらにあげられた違法行為の数々は、被控訴人の裁量権を逸脱するものでないというのであれば、一つ一つ反論をすべきである。うそを並べて理事会の成立さえ認められれば、後はすべての問題がクリアされ本件貸付が「合理的」になるというのである。

 しかし、理事会の成立問題は重要ではあるが、本件に関係する手続き上の重大瑕疵のひとつに過ぎない。
 被控訴人は、本件理事会について虚偽の理事名簿をでっち上げ最高裁の裁判官をだまし差し戻し審を勝ち取った。しかし、その最高裁判決の前提である理事名簿の事実が真実であるとの立証はできないでいる。
その他の本件支出負担行為にかかる違法行為についてもまったく何の弁解もしていない。
 被控訴人の準備書面(2)のように立証もせずにただ断定口調で主張を繰り返すのでは、どだい、裁判にならない。

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