戦争放棄
News & Letters/484
日本国憲法9条の第1項は戦争放棄を掲げている。これについては2つの解釈がある。
ひとつは、この条項は侵略戦争を放棄しているのであって、自衛戦争は放棄していない、という解釈だ。
もう一つは、この条項は理念であって現実は別だ、という解釈だ。
侵略戦争を放棄するというのは戦前の不戦条約から始まっていて何も新しいことではない。
しかし、日本国憲法9条の戦争放棄の意味がそれにとどまるものではないことが第2項の武装放棄と軍隊の放棄の規定であり、それによって戦争放棄の戦争が自衛戦争も含むという事が明確にされたのである。
そして、この戦争放棄の規定が、理念だ、理想にすぎないという解釈については、憲法制定当時の歴史的事実を歪曲するものであると言わねばならない。
この9条を発案したのは、当時の総理大臣であった幣原喜重郎だ。
このことは幣原自身が自認している。その理由は、日本の侵略戦争に対する世界の非難、国民の悲嘆をかわし、慰藉するためには、二つのこと、すなわち戦争放棄と天皇の人間宣言が必要だと言っている。
幣原は、日本の戦争能力と天皇を神だとして天皇のためなら何でもするという国民性が恐れられていると痛感したから、日本国憲法でそれについての危惧を解消すること、日本はもうたこくみんをおびやかしはしないということを闡明しようとしたのである。この幣原の憲法に込める意向は、マッカーサーも了解し昭和45年頃に連合国軍の対日理事会やアメリカ議会でも証言し、自衛権による戦争の否認を憲法化することを明らかにした。
そして、次の総理大臣の吉田茂も国会で数度にわたって日本国憲法は侵略戦争はもとより自衛戦争も禁ぜられていることを言明した。
マッカーサーはもとより吉田茂もやがて日本に軍隊を作り自衛戦争を肯定させていくのであるが、憲法を制定した当時は本気で自衛のためでも軍隊や戦争は否定していた。
要するに戦争放棄、非武装は憲法の理念であると同時に日本国の現実の政策として選択されたのである。
それは、日本国が、アジア人民に与えた深刻な被害と日本国民に強いた犠牲の反省から出てきたものであり、日本民族が死滅にも値する罪に対する償いの証であった。何千万人もの無辜の他国民を死なせた罪に対して許しを乞うた証だ。
その証が認められたからこそ今我々が生きている。憲法9条は信頼回復の方策であり、そのおかげで国際社会で認められ、戦後を復興してきた。それを、憲法9条をないがしろにしては、日本人民は生き永らえる権原はない。
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