高レベル放射性廃棄物と憲法
News & Letters/460
使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、その後にできる高レベル放射性廃棄物の処理方法については、未だに処理方法が決まっていない、という誤った見解が時々見られる。
しかし、この処理方法はすでに2000年に「特定放射性物質の最終処理に関する法律」に法律で決められている。
すなわち地層処分である。2007年に東洋町民が戦ったのはまさにこの法律であり、その適用であった。
日本学術会議は、日本で高レベル放射性廃棄物の地層処分を安全に行うところはない、と断定したが、政府の地層処分の法律と方針は変わらない。
最近昨年12月政府は、地層処分の「科学的有望地」の候補地を選定することを閣議決定した。海岸や島嶼部で港の近辺を選ぶ様子である。もちろん「科学的有望地」といってもそれは、知事や市町村長が賛同し、反対運動の弱そうなところという政治的有望地が優先的に選ばれるであろう。
最近の国会の論戦でも、担当大臣や安倍総理は、まともに答えられない。
一般の産業廃棄物では、処理方法と処分地が決まっていなければその産廃を排出する事業は許可されないのに、最終処分場がない原発はどうして稼働がゆるされるのか。政府は今や答えるすべがないのである。
世界中でその処分場はどこにも作られていない。ヨーロッパ、アメリカ、中国、日本、・・・いたるところに処理することのできない超危険猛毒物がどんどん積み上げられている。それが最終的に無害となるのは100万年単位の時間がかかる。われわれは、一代の栄耀栄華の付けを果てしなく続く子孫人類にその処理を押し付けるのである。
これほどの犯罪は、如何なる悪逆非道の専制君主も及ばないだろう。
ところで、この最終処分地の選定は、政府が勝手にするわけにはいかない。
日本国憲法では96条で憲法改正の時には国民投票が義務付けられている。
その条の前の95条には、特定の法律を特定地域に実施する場合、その地の地方公共団体の住民による住民投票が義務付けられている。
高レベル核廃棄物の最終処分に関する法律を特定の地区で実行するには政府や国会でそれを決める前に当該地区の住民投票が必要である。
2007年4月に行われた東洋町長選挙は、いわば、住民投票的な選挙であり、高レベル放射性廃棄物の東洋町での埋設事業は拒絶されたのであった。
近いうちに「科学的有望地」とやらの候補地が選定され発表されるであろう。最終処分場を決定するには、少なくとも、当該地区(近隣市町村含む)の住民投票が必要であること、憲法95条の規定を政府に実行するよう働きかけねばならない。
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