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2015年12月

2015年12月 5日 (土)

高知県議会政務調査費控訴事件

News & Letters/450

平成24年度の高知県議会の政務調査費の交付について第1審高知地方裁判所 では、住民側が敗訴となった。
敗訴となったが、県議会は、裁判で争点となった宿泊費について今年度平成27年度から大幅な改正を行っている。
すなわち、宿泊費はこれまで領収書の添付不要、高額の定額支給とやりたい放題であったが、
→実費支給、領収書添付となった。また、市内に自分らが設けていた宿舎で泊まる場合は支払わない、ということである。
逆に言えば、これまで違法行為や詐欺まがいの政務調査費の請求がたくさんあったという事だ。
しかし、まだまだ改革の余地はある。第二の報酬政務調査費の廃止まで持っていくべきであろう。
高裁での裁判の焦点は、①尾崎知事の責任の有無、②監査請求期間の徒過などである。
知事は、政務調査費の交付事務は議会事務局長に委任しているから無責任である。と言って高知地方裁判所 をすりぬけたが、最高裁判例ではたとえ委任しても指揮監督権があることになっている。
私がした監査請求が1年以内という期間をすぎているから不適法である、という判決であるが、
議会事務局の資料の公開自体が翌年度の7月に行われていて、それから1年の計算をするのが当然であろう。
詳しくは、控訴理由書を見ていただきたい。

平成27年(行コ)第14号損害賠償請求控訴事件

(第1審平成26年(行ウ)第9号 損害賠償請求事件)

    控訴人 澤山保太郎

   被控訴人 高知県知事尾﨑正直

控訴理由書

                          平成27年11月23日

高松高等裁判所殿

                 高知県安芸郡東洋町大字河内1081番地1

                  控訴人 澤山保太郎

        高知市丸ノ内1丁目2番20号

              被控訴人 高知県知事尾﨑正直

【一】控訴人の原審での主張及び原判決の要旨

 1、事案の概要

  控訴人は、高知県民として、平成24年度高知県議会の政務調査費の交付について

住民監査請求(却下)を経て、高知県知事尾﨑正直(被控訴人)を相手に本件訴訟を起し

た者であるが、原審において請求は認められなかった。

  原審における控訴人の主張の要点は、原判決の冒頭(「1 事案の概要」)とほぼ同じである。

 知事の交付決定の不存在について

本件政務調査費交付金について被控訴人高知県知事は自ら交付決定をしなかった。

被控訴人は高知県会計規則第3条1項に基づき議会事務局長にその権限を委任していたというが、

委任されたという議会事務局長も本件交付条例第7条に基づく交付決定をせず、交付決定書、交付決定通知書も存在しない。この知事の交付決定に基づき政務調査費に関する一切の財務会計行為が始まるから、本件財務会計行為はすべてその前提を欠如していた。

そもそも、政務調査費の交付決定の各地方公共団体首長の権限は法的に議会の職員を含め余人には委任できない。地方自治法(153条及び180条の7)では、地方自治体首長の他の付属行政機関への財務会計事務などに関する権限委任は認められているが、立法機関である議会への権限委任は一切認められていない。

そしてまた、知事から権限の委任を受けたという議会事務局長も交付決定書を作成しておらず、各議員各会派へ政務調査費交付決定の通知書も発行していないから、本件交付金の交付は権限ある知事の交付決定がなく、議会事務局長ら議会事務局職員による越権行為によるものである。最重要な行政行為において明白かつ重大な瑕疵があり、その財務会計行為全体が無効違法である以上、その交付額全額が違法な公金の支出であって、少なくとも控訴人が返還請求を求めている金額はすべて返還する義務がある。 

  ② 「会派又は議員」について

地方自治法(100条第14項)では、政務調査費は「会派又は議員」に支給することができるとなっているが、高知県議会はこれを「会派及び議員」に支給すると読み替え各議員に会派分月額14万円と議員分14万円と2重に交付してきた。これは違法であるから議員なら議員のみの支給とするべきであり、そうであれば会派分は不当な支給であって少なくともその分は返還させるべきである。

  ③ 会派としての実体の有無

また、会派分として支給されている交付金は、会派としての活動の実績を前提とするが、本件の場合どの会派も会派活動による経費支出の形跡はほとんど全く存在せず、議員個人のてんでばらばらな任意の活動実績をそのまま会派活動なりと称しているに過ぎないものであって、会派活動の実体がないのに会派分の政務調査費を交付するのは違法である。少なくともごく一部を除いて会派分として支給した交付金は返還すべきである。

 宿泊費等証拠のない費用

また、会派分及び議員分として支給した本件交付金のうち、宿泊費及びそれに関連

する経費については、ほとんどの場合領収書などその経費支出を裏付ける証拠が提出されていない。これは本件条例の規定や高知県会計規則の規定、費用の裏づけ証拠の提出義務に違反していて、宿泊をしたかどうか事実そのものが証明されていないものに公金を出すのは違法であるから、少なくともその分については、返還させる義務がある。

 住民監査請求の期間

原判決では、上掲③④については監査請求の要件を満たしているとし、①、②については財産管理の怠る事実の違法としては認められないとされて不適法な監査請求とみなされ法廷での審理・判断から除外された。

本件では上掲①②については監査請求期間1年を超過しているが、これには正当な理由がある。すなわち高知県議会が本件政務調査費の各議員各会派からの収支報告書等の交付金の使途に係る一切の書類を会計年度を越えた翌7月になってからでないと公開しない。政務調査費に関する条例やまた本件にかかる支出負担行為などの財務会計行為が分かっていてもそれを裏付け検証する実際の資料が県民には全く手に入らない。

  従って監査請求期間は収支報告書などが開示された翌年度7月から起算するべきであるから、本件は十分期間内の請求であって適法である。

  これが控訴人主張の概要である。

2、原判決の趣旨

原審の判決中の「当裁判所の判断」は重大な点で矛盾するところがあり、また控訴人の重要な主張・立証を没却していて要旨をまとめ難いところであるが、次のとおりである。

  ① 被告適格については

控訴人が求めているのは、政務調査費について高知県が尾﨑正直にたいする損害賠償の請求権の行使であり、高知県知事はこの権利を行使する権限を有していて、この権限を議会事務局長に委任したわけではない、として被告適格だと判示した。(原判決9~10頁)すなわち原判決は、

「会計規則3条1項の規定によって、知事が議会事務局長に対し、違法に交付された平成24年度の政務調査費の返還請求を尾﨑が怠っていることにより発生した高知県の尾﨑に対する損害賠償請求権という債権を管理する権限を委任したということはできないし、このような債権の管理が、議会事務局長の所掌事務に属するかは、本件で提出された規則等によっては判然とせず、他にこれを認めるに足る証拠もない。」

(原判決10頁下段)と判断した。

  ② 監査請求前置主義については

  本件監査請求1(議員及び会派のいずれか一方の政務調査費の支給は返還させるべき)

  については、最高裁判例(昭和62年2月20日第二小法廷判決)の趣旨から、本件監査請求には地方自治法第242条2項の規定が適用され1年間の期間を徒過しているので不適法である。

  監査請求2及び3(会派活動の実体のない会派への政務調査費の交付金は返還させるべき、又領収書のない宿泊費等への政務調査費の交付金も返還させるべき)について

  は、地方自治法第242条1項の怠る事実に係る住民監査請求であるから、同条2項の適用はないので適法な監査請求である。

  ③ 争点についての裁判所の判断  

  監査請求①については却下。

監査請求2及び3については

「議会事務局長は、当該職にある間、地方自治法第153条1項の知事の補助機関である職員に任命されたものとされるとともに・・・、知事が、議会事務局長にその所掌事務に属する債権の管理に関する事務(県の債権について債権者として行うべき保全、取立て、内容の変更及び消滅に関する事務)の権限を委任したことは、前期1(2)のとおりである。」(原判決15頁後段)

  従って、

  「交付された政務調査費に係る不当利得返還請求権(債権)の管理に関する事務の権限は、知事が議会事務局長に委任したことになる以上、尾﨑自身は上記不当利得返還請求権を行使する権限を有するとはいえないことになる。」(16頁中段)

  請求②③については棄却ということであった。

【二】原判決の誤り及び控訴人の主張

一、 交付決定の不存在とこれについての裁判所の判断の脱漏

1、原判決は、冒頭の「事案の概要」で①~④の訴訟の内容をほぼ正しく要約した。

 すなわち、

  ①高知県知事の交付決定がなされずに交付された交付金は全額無効・違法である。

  ②地方自治法は「会派又は議員」のいずれかへの交付を規定しているのに被控訴人はその両方に交付し2重交付は違法である。

  ③宿泊費などで領収書など証拠のない支出について交付するのは違法である。

④会派活動の実体がないのに会派に支給したのは違法。

 (原判決2頁)

しかし、原判決の判断では①を没却した。

なぜ没却したか判決では示されていないが、上記一の2の②のとおり原判決の判断が控訴人の監査請求に従って、又はそれの内容に限局してなされており、実際の訴訟内容とは相違している。確かに控訴人は、知事の交付決定の不存在、交付決定通知書の不発行については監査請求段階では触れていなかった。

しかし、監査請求を前置した住民訴訟においては、事件が同一のものであればその事件の違法事由については、監査請求段階のもの以外の主張も許されており、裁判所が控訴人の原審での新たな主張を没却することは許されない。(最高裁昭和62年2月20日第二小法廷判決 )

おそらく原審裁判官は、住民訴訟で問題(争点)になり判断の対象とするのは監査請求書で主張された事項に限るものという誤った観念を持っていると考えられる。

しかも上掲①の内容(知事の交付決定の不存在)は、後の②③④の内容に直接連動しており、裁判所が判断を避けることはできない。監査請求と住民訴訟について誤った想念をもとにした原判決は、初めから破棄を逃れられないと考える。

2、交付決定にかかる知事(又は知事名義)の公文書は存在していない

被控訴人は、本件年度だけではないが、平成24年度の政務調査費の交付についても本件交付条例第7条に規定されている「政務調査費の交付の決定」という最も重要な行政行為をせず、そしてその交付決定を「会派の代表者及び議員に通知」すると言う行政行為をもしなかった。

 被控訴人は、上述のとおり、高知県知事は県の会計規則第3条1項に基づき政務調査費の交付に関する全ての事務遂行の権限を議会事務局長に委任したと主張しているが、その議会事務局長も知事の委任を受けた交付決定及び交付決定通知の行政行為をしなかった。監査請求前後の公文書開示から原審公判の過程を通じて被控訴人はそれらの証拠となる文書は一切開示又は提出していない。作成せず存在しないからである。

 政務調査費は地方公共団体の補助金の一種であるが、補助金は義務的経費ではなく財政にある程度の余裕があることを前提にし、それぞれの首長の交付決定という政治的判断の元で手続きが始まるのである。地方自治法でも政務調査費は「・・・交付することができる。」という規定になっていて、交付するかどうかは、知事や市町村長の裁量判断に依拠している。だから本来この判断については、知事や市町村長らはこれを他人にゆだねることはできない。たとえ委任されたと称する者があったとしても首長の名前でもって交付決定をしなければならない。この交付決定の決裁なしには、政務調査費の支出負担行為、支出命令等の財務会計行為はこれをすることはできない。敢えてした場合は越権行為であり職権乱用ということになる。

3、権限ある者の決裁文書不存在の意義

地方自治体の議会議員は地方自治法203条1項の規定で報酬の支弁を受け、又費用や手当を支給されることができることになっている。具体的にはこれは条例で定められる。

その正規の報酬や手当、費用弁償のほかに政務調査費が交付されるわけであるから、

政務調査費の交付は政党や議員に対し、国の政党助成金と同列の一種の補助金の交付と考えられる。

基本的には適化法(「補助金等に係る国の予算の執行の適正化に関する法律」)の適用を受けるものと考える。この法律では補助金の申請と交付決定についての規定は全体五章のうち第二章が当てられ、その章の大半を占めている。また、それに交付決定に関連して補助金の不正使用等への返還命令も1章がさかれている。交付決定は適化法の中核でありその重要性はこれによってうかがわれる。

行政法関係の学説によれば、行政行為が無効となる場合が種々挙げられているが、たとえば、決裁文書に権限ある者の署名や捺印が欠如している場合でもその文書は無効となる可能性があるとされる。無効な瑕疵ある文書による許認可や公金の支出行為、それにかかる事業遂行も無効となる可能性がある。

行政庁による補助金交付は私法上の契約などではなく適化法の実行行為であり行政行為とみなされている。

本件では、その文書に瑕疵があるかどうかではなく交付決定という決裁文書そのものが不存在であることが明らかである。行政行為はすべて文書によって担保されることは言うまでもない。

特定の事務事業の端緒となり、その事業に対する地方公共団体の首長の意思を担保する公文書が存在しない場合、権限ある者の決裁印も署名もありえないから事業を進める手続き事務は無効であるし事業自体も当然に無効となる。

たとえば、知事の補助金交付決定もなくその通知文書もないのに水産課が会計管理者と示し合わせてある漁業団体に勝手に補助金を交付することが許されるであろうか。

あるいはまた、学長が退学処分を決定していず、本人に学長名のその処分状が通知もされていないのに学生課の事務職員が勝手に特定学生を放校させることができるであろうか。裁判所は本件のこの交付決定不存在の事実について目をそらさず対処して判断を下すべきである。

4、知事の権限は議会事務局長に委任できない。

上掲の通り原判決は、被告適格の争点の判断で、知事が政務調査費にかかる損害賠償請求権に関する権限について、これを議会事務局長に委任したということはできないし、このような債権の管理が議会事務局長の所掌事務に属するという証拠もないと判示した。

(原判決10頁後段)この判断自体は全く正しい。

にもかかわらず、被控訴人は、その権限が委任されたとしてまるで正反対の判断をした。その根拠として高知県会計規則第3条の1で委任先に議会事務局長を指定していることを挙げ、その法的根拠として地方自治法第153条を挙げている。

高知県会計規則の規定はそのとおりであるが、しかし、地方自治法153条の規定は、権限の委任先として首長の直属の「補助機関である職員」か、又は首長が統括的に管理する「行政庁」に限定している。県議会は、首長の「補助機関」ではないし、「行政庁」でもない。県議会は立法機関であって行政機関ではないことは誰でも知っている。

従って高知県会計規則に知事の権限委任先の一覧に教育長らと一緒に県議会事務局長を入れたのは重大な誤りであり、無効な規定というほかはない。原審での控訴人の指摘で困った被控訴人は最後に「併任」(地方自治法180条3では「兼職」であるが、行政委員会との兼職であって議会事務局との兼職ではない。)という仕法を使っていると主張した。県庁知事部局の職員を同時に議会事務局の職務を執らせるということで知事の権限の委任を合理化しようとしたが、しかしこの「併任」(兼職)についても法的根拠がなく、被控訴人は地方自治法の逐条解説者の意見を引用して正当化しようとした。

その引用の解説書自身も、地方自治法180条3の規定は委員会と首長部局との間の兼職であって議会には当てはまらないと記述していた。

議会の経費に掛かる会計事務は、何も無理に議会事務局に委任しなくてはならないものではない。委任せずに知事(又は知事の命令で知事部局の出納・会計担当職員)が直接取扱い処理することが本来の姿である。現に議会事務局の職員への給料はそうしているのである。

他の行政機関と知事など首長部局間の事務の委任というのは、行政事務の簡素化、効率化の便法として採用してよいという意味で許されているのであって、委任できないものは、地方公共団体の予算の執行、費用の弁済事務はすべてその首長の担任事務であるから、首長自身が直接行わねばならない。(地方自治法第149条)

しかも交付決定という重要な事務は、委任されているという議会事務局長もこれを遂行していない。したがって本件政務調査費について交付決定がなされなかったのは被控訴人自らの責任の放棄であり、仮に委任が許されるとしても、委任業務が遂行されていないのであるから被控訴人の指揮監督上の懈怠の責任がある。委任した業務が遂行されたかどうかは委任者が点検しなければならない。委任業務が遂行されない場合は、委任者は指揮監督権限を行使してこれを実行させなければならないのは当然のことである。

被告準備書面がその根拠として引用した逐条解説書自身が併任(兼職)は議会には該当しないと記述していたことからすれば、被控訴人は知事の権限の議会事務局長への委任が不法行為であることを知っていたと考えられる。

また、仮に「併任」という手法で交付決定や財務会計行為を委任することが許されるとしても、それならばなおさら、知事の直接的な指揮監督がなされねばならないわけであるから、自らその指揮監督の行政事務ラインを構築しなければならなかったが、被控訴人は全くこれをしなかった。ただ「併任」の辞令を出せば後は能事了れりで済ましてきた。

5、全額返還か被控訴人による全額弁済の必要がある 

したがって本件政務調査費の交付は権限ある者の交付決定が欠如し、それに基づく各会派各議員への交付決定通知書が欠如しているから、本件に係る議会事務局長の支出負担行為、議会総務課長らの支出命令はすべて無効であり、会派分及び議員分のすべての政務調査費の交付金は高知県に返還させなければならいし、そうでなければそれら重要事務の違法状態を放置してきた被控訴人が全額賠償しなければならないと考える。

これは、本件政務調査費全額の交付が議会事務局長の越権行為という不法行為によって遂行されたものであり、特定の財務会計行為の違法行為を超えて一種の刑事事案であり、

最高裁昭和62年判例の適用外の事案というべきである。

二、〈監査請求1〉(議員及び会派2重の交付)についての原判決の判断の誤り

1、原判決は、これについて内容について何も判断せず、ただ、監査請求期間の徒過を指摘して却下した。

①監査請求期間の徒過についての誤った判断

〈監査請求1〉について原判決が不適法と判断した根拠は昭和62年2月20日最高裁第2小法廷の判決である。

原判決は、

ア)特定の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは、当該行為のあった日又は終わった日を基準として地方自治法第242条2項を適用すべきであり、本件〈監査請求1〉はこれに該当する、

イ)本件政務調査費の支出は、平成25年1月16日までになされ、本件監査請求は平成26年4月16日であった、

ウ)議員と会派の両方に支給されるというのは条例によって明らかで収支報告書の公開を待たずに判断することができるから遅延について正当な理由があるとは言えない。

という。

イ) については、事実である。

ア) 、ウ)については、本件監査請求書の内容について裁判官に誤解があると考える。

本件監査請求書の内容は財産(債権)の管理を怠る事実の事案である。

本件監査請求は、すべて本件政務調査費の交付は違法であるので返還という措置をとるべきだという主張で一貫している。

本件政務調査費の交付はすべて概算払いであり、概算払いの財務会計事務は支出命令・交付の時点で確定せず、その精算が完了した時点で終結する。条例の違法な規定に基づく行為であっても、債務が確定しないでは債権も確定しない。

地方自治法第242条1項の規定は、住民は、地方公共団体の長や職員などが

(1)違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結・・・

(2)又は、違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実があると認めるとき、監査委員に対し監査を求め、

→(3)当該行為を防止、是正、怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実に

よってこうむった損害を補てんするために、

(4)必要な措置を講ずべきことを請求することができる。

となっていて、控訴人は、(1)又は(2)の違法な公金の支出又は怠る事実の違法があると認めたので、(3)の当該行為によってこうむった損害を補てんするために(4)の「必要な措置」として交付金の返還を求めたのである。したがって、本件監査請求の趣旨では怠る事実の違法としてのみ立件したわけではなく、公金の違法な支出としても請求をしている。したがって昭和62年の上掲最高裁の判例は必ずしも本件に該当するとはいえない。

 遅延について正当な理由について

上掲最高裁判例の趣旨では普通ならば請求期間徒過ということで本件の場合も却下される恐れもあるが、

第一に、被告も認める通り(原判決5頁下段)本件政務調査費の議員及び会派による収支報告書の公開は平成25年7月1日からであった。

原判決は、本件政務調査費の条例によって会派及び議員の両方へ交付することは収支報告書を見るまでもなく条例などでわかるはずだから遅延について正当な理由はないという。

しかし、一般的にも条例に違法な規定があるからと言って差し止め請求はともかく、返還や損害賠償を求めて監査請求を起こすことができるであろうか。

違法な法令があってもそれが実行され損害が発生しなければ損害賠償請求は困難であろう。戦争法案が成立したからと言って、違憲訴訟はともかく、実際の被害が起こっていないのに、損害賠償の裁判を起こすことは困難であろう。

第二に、地方自治法242条の第2項は

「前項の規定による請求は、当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、これをすることができない。」と規定されている。

政務調査費は概算払い制度であり、それを交付したときに完結するわけではない。

概算払いの場合は、それを精算したときが完結したときである。したがって本件政務調査費の会計事務の終了は、収支報告書が議会事務局に挙がった時であり、厳密に言えばその審査が終了し精算(不要分の返還を含む)事務がなされた時が法に言う当該行為の「終わった」日であり、その日は普通一般の住民の感覚では、収支報告書が公開された平成25年7月1日とほぼ同時期であると考える。

したがって条例の存在や概算払いの支出命令などがなされたからと言って、その日を起点にして監査請求期間を算定することは法の明記を無視した粗暴な判断である。

 平成14年9月12日の最高裁判例

平成14年9月12日の最高裁判例は京都市の同和対策関係のずさんな報償費への支出について監査請求から住民訴訟に及んだものであるが、この判決で最高裁は、監査請求の遅延の「正当な理由」については

「普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである。」と一般的な基準を示し、地元の新聞記事で不明朗な支出との報道がされた期日をもって「監査請求をするに足りる程度に本件各財務会計行為の存在又は内容を知ることができたというべきである。」と判示した。

本件の場合、前記の通り当該行為の終わった時(概算払いの精算時)から期間を算定するべきであるが、一般住民は、不明朗な使途が公表されて初めて監査請求に立ち上がるのであり、その契機は収支報告書が公開されるという時をおいてほかにないであろう。

高知県の政務調査費の交付は年間3回ほどに区切って交付する。本来なら、県議会事務局は、次の第2回目の交付金が交付される時に第1回目の収支報告書を徴しこれを公開し、第2回目、第3回目と期間終了ごとに収支報告書を順次徴して公表するという仕法を取るべきであった。政務調査費といえども前渡し金についての県の会計規則第54条の3の規定(前の前渡し金の精算が終わらなければ次の同種の前渡し金は出さない。)を基本的に踏襲すべきであった。

24年度の4月,5月,6月に使用した交付金の収支報告書が翌年度の7月に公表されるときにはすでに監査請求の期間を徒過しているのである。これをしも住民側に遅延の責任として転嫁するのは本末転倒であり、権力者の身勝手によるおのれの咎を人民になすくりつける無法というべきであろう。平成14年の最高裁判例のように住民の立場に立った、法の趣旨を生かそうという姿勢と比べると原判決は極めて冷酷かつ粗暴というべきである。

④怠る事実の違法

ちなみに原判決がとったように本件監査請求を怠る事実の違法として解釈することも可能であるが、そうとしても昭和62年の最高裁判例にはあてはまらない。この最高裁の事例は町有財産が時価に比して著しく低額であることから起こった監査請求、住民訴訟事件であるが、本件の場合の財産(交付金の返還請求権)の行使を怠る事実の違法性は62年最高裁判例のように単純ではない。

62年判例事件では一応権限ある者による財務会計行為の内容が問われていたが、本件政務調査費の交付事件では、権限ある者が交付決定以下の財務会計行為を何もしていず、それにもかかわらず公金が支出された事件である。

交付決定書や交付決定通知書を作成していないことは被控訴人も暗黙の裡に認めている。議会事務局長以下の議会事務局幹部による支出負担行為等は完全な職権乱用の事件であり刑事事件の内実をもっている。

財務会計法規の違反ということで初めて返還請求権が発生するというのではなく、職権乱用による公金の不正使用、越権行為により他人に不当利得をえさせたという不法行為による損害の発生、との事実認定をすれば、監査委員も裁判官も財務会計行為の論点を離れても債権管理の怠る違法性を正当に判断が可能である。

政務調査費の交付決定というのは単なる財務会計行為ではなく、その前提をなす首長の政治的判断であり、この判断に手続きや公益目的などの違法性があれば、その公金支出は利権行為と判断され、直ちに背任等の責任が問われるものである。今その政治的決断の不存在が指摘されている。

それが違法であれば財務会計行為とは別個の次元で本件交付金の違法性と損害賠償責任の確認が可能であるから、本件はいわゆる真正財産の怠る事実として訴訟を構成することができるものである。

このことは平成14年7月2日の公共工事での談合事件で示した最高裁第3小法廷の判例で明らかである。すなわちこの最高裁判例では、請負契約の締結という財務会計行為の違法性とは独立して、談合という不法行為から損害が発生したという認定に基づいて債権管理を怠る事実と判断できるから、62年判決の趣旨は該当せず、請求期間1年の制限はないと判示したのである。本件の場合に監査請求段階でこの職権乱用の違法が指摘されていなくとも監査請求では何もすべての違法性を列挙せねばならないということではないから訴訟段階で問題にしている以上、この14年7月2日の最高裁判例の趣旨は同様に当てはまると考える。

「会派又は議員」への交付について控訴人の主張

原判決は、交付対象に関する争点について何も判断をしていないが、原判決によると被控訴人の主張は

法令における用語の表記の基準においては、「又は」と「及び」の両方の意味を与えようとする場合には「又は」を用いるとされており、地方自治法100条14項の規定は、政務調査費を交付することができる対象を、「議員、会派並びに議員及び会派の双方」としているものである。(原判決8頁)という。

地方自治法の規定は

普通地方公共団体は、条例の定めるところによりその議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。

としているだけであって、又はという接続詞の意味にについて上記被控訴人が言うように並びにとか及びとかの意味を持つなどというのは途方もない拡大解釈であり日本語の解釈とは思えない。

地方自治法の自然な解釈は、政務調査費は議員の調査研究に資するために議会の会派という議員集団か又は議員個人を対象としてこれを交付する、というものであり、「又は」の接続詞は2者双方ではなく二者択一のために用いられたものとみるべきである。

被控訴人が言うような用語事例をいうのであれば、特定法令(地方自治法)、さらにはその法の同じ章、同じ条項で、「又は」、「及び」、「並びに」等の用語がどのように使われているか検証すべきである。そのことについては原審の原告準備書面で分析したが、地方自治法、特に問題の第100条において、「又は」は①二者択一か、又は、②言葉の言い換えの接続詞として使用されており、「及び」とか「並びに」とかの用語とは明瞭に区別されて使われている。決して「又は」は及びとか並びにという意味で使われてはいない。

問題の第14項を含む地方自治法(現行)100条1中の「又は」、「及び」、「並びに」が使われている事例をすべて挙げると、

①100条第1項 「労働委員会及び収用委員会」、「関係人の出頭及び証言並びに記録の

提出」

②同条第2項   「拘留又は拘引」   ・・・・・(二者択一)

③同条第3項  「出頭又は記録の提出」、「記録を提出しないとき又は証言を拒んだとき」

        「禁固又は10万円以下の罰金」 ・・・・(いずれも二者択一)

 

④同条第4項、第5項、第6項  「証言又は記録の提出」・・・・(二者択一)  

⑤同条第8項   「刑を軽減又は免除」・・・・・・(二者択一)

⑥同条第9項   「第三項又は第七項」・・・・(二者択一) 

        この「又は」は第三項と第七項双方を罰すると読めるかもしれないが、実際には双方同時には罰せられない。第三項の違反があれば第七項は存在しない。

        第三項は証言拒否であり第七項は証言した場合であるから一方が成り立てば他方は成り立たないから二者択一となる。

⑦同条第10項  「照会をし又は記録の送付を求めたとき」・・・・(同趣旨の換言)

⑧同条第12項 「議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整」・・・(同趣旨の換言)

⑨同条第14項、「会派又は議員」・・・・(二者択一)

「「交付の対象、額、及び交付の方法、並びに当該政務活動費に充てることができる経費の範囲」        

問題のこの第14項だけで見ても、「又は」、「及び」、「並びに」の接続用語の使い分けは厳格でありそれぞれの区別は明瞭である。

⑩同条第15項 「収入及び支出の報告書」

⑪同条第17項、18項、19項  「官報及び政府刊行物」

これら接続用語の使い分けは地方自治法全般にわたっていて、「又は」が及びとか並びにの意味に使われている用例は見つけることができない。また逆に「及び」とか「並びに」を「又は」に替えることもできない。

したがって法律の文言を読み替えての政務調査費の会派及び議員への二重の交付は違法である。裁判所は法令の歪曲、利権に結びつく曲解について適切な歯止めとなる判断を下すべきである。

三、〈監査請求2及び3〉会派活動の実体がなく領収書など証拠不存在の支出について

1、知事の権限について矛盾した判断

原判決は監査請求2及び監査請求3については財産(債権)の怠る事実として住民訴訟ができる適法な請求であり監査期限はないと判示した。

しかしながら、ここでも控訴人の主張の内容については何ら論ずることはなく、被控訴人が債権の管理などの権限を議会事務局長に委任して権限がないから、控訴人の主張には「理由がないことになる」として棄却した。

被控訴人に債権管理等の権限がなくなっていることについて原判決は、

議会事務局長は、当該職にある間、地方自治法153条1項の知事の補助機関である職員に任命されたものとされるとともに(会計規則3条4項)、知事が、議会事務局長にその所掌事務に属する債権の管理に関する事務(県の債権について債権者として行うべき保全、取り立て、内容の変更及び消滅に関する事務)の権限を委任したことは、前記1(2)のとおりである。(原判決15頁後段)という。

しかし、「前記1(2)」(原判決9頁下段~10頁)の2頁にわたる記述は、そうはなっていない。確かに9頁~10頁の中段あたりまでは「議会事務局長は債権の管理に関する事務の権限を知事から委任されることになる。」という記述をしているが、その委任されているという話は始めの被告適格の判断の箇所で既述のとおり「しかし・・・上記債権の管理をする権限を委任したと認めるに足りない以上・・・」といってこれに反論し、否定したのである。

損害賠償の請求権も債権であるが、債権管理の権限について一方では委任したとは言えないと判断し、他方では委任されている、と判断して、後者を判決に取り入れた。

この重大な矛盾について原判決は何も説明がない。決定的な争点で矛盾した判断である。

委任されていないという前者の判断はさておくとして委任されているという後者の判断(被控訴人の主張)について原審での控訴人の批判的主張は少しも検討されず完全に没却されている。

2、県会計規則、財産規則の無効な規定に基づく判断

すでに【二】の一の4で既述の通り知事は、議会が知事の「補助機関」でもまた何らかの「行政庁」でもありえないから、地方自治法第153条に基づく権限の「委任」はできないことは明白であり県の会計規則第3条1項や同規則第2条3項、同規則3条第4項、又県の財産規則第107条2項、同規則108条等は、議会事務局への委任に関する限りすべて地方自治法第153条に基づくものであり無効な規定なのである。

実際、高知県会計規則でも、3条1項に委任先として県議会事務局長の名が挙がっているが、第7条では、全庁の各課、教育委員会はもとより県警本部、出先機関にいたるまで出納員への会計事務の委任ついて規定があるが、議会事務局については記載されていない。

債権に関する事務を委任されたといっても、「歳入金の収納に関する事務」を担当する正規の出納員が任命されないのにどのようにして委任事務を遂行できるのか。権限ある出納員なしに出納事務を行うのは違法行為であろう。

また、会計規則7条第1項では「公有財産、債権及び基金の記録管理に関する事務」は管財課の出納員に委任されている。議会事務局長に委任されていない。しかもこの委任する元の権限者は知事ではなく「会計管理者」(旧出納長)なのである。

さらにまた、「高知県議会事務局規程」を見ても会計規則第3条1に委任事務として規定された「歳入の徴収」事務については、議会事務局では誰も担当することにはなっていない。

原判決はこれらについて何の吟味もせず被控訴人の言説を鵜呑みにして判決文をつづった。

しかし、被控訴人の方は原審で、地方自治法153条についての控訴人の批判をかわすために知事からの委任の根拠に「併任」という説を持ち出した。しかし、その知事部局と議会事務局との「併任」(兼職)についても法的根拠がなく、やむなく地方自治法の逐条解説を引き出してきた。(原審乙第25号証)

しかしこの解説では根拠とすべき法令の代替はできない。学者のただの脱法的方便策の提案にすぎない。この解説の要点を抜き出すと次のとおりである。

「予算の執行権は地方公共団体の長に専属し、議会及び委員会又は委員はこれを有しない。…したがってこれらの機関がその事務に関し、支出負担行為、支出命令その他の予算執行を必要とするときは、原則として、普通地方公共団体の長に対して、これらの手続きを取るべきことを求める必要がある。」さすがにこの認識は正しい。

「地方自治法第180条2の規定により委員会及び委員に係る予算の執行権を委員会、委員会の委員長、委員又は委員会若しくは委員の補助職員等に委任して・・・予算の執行をさせ・・・・る道が開かれている。」 しかし、

「議会については、このような規定がないので」

「たとえば、議会事務局の事務局長、書記長又は書記を長の補助機関である職員に併任し、その長の補助機関である職員たるの資格において、これに議会に係る予算の執行権を委任し(法一五三1)あるいは補助執行させるよりほかに方法はない。」

ほかに方法はないというが①の原則的方法がある。

①②③は正しい。だが④の長と議会事務局との「併任」(兼職)方式は地方自治法第153条1項には当たらず、法的根拠はなく違法行為である。

兼任(兼職)が認められるのは地方自治法第180条3の規定であるが、それも行政機関としての委員会(教育委員会や農業委員会など)と首長の補助職員との間での話であり、議会事務局との間の兼職ではない。

ちなみに、昭和41年10月26日の行政実例では議会事務局の職員が首長の補助職員以外の執行機関の補助職員を兼任することは「差し支えない」とし、例として「議会事務局長と選挙管理委員会又は監査委員の書記との兼職」が挙げられている。

本件のような知事部局と議会事務局の職の兼任などは論外であろう。

したがって被控訴人は、自己の責務を放擲し政務調査費交付について適法な行政事務を遂行してこなかったという事実について原審裁判所は厳正な判断を回避している。

3、〈監査請求2〉会派活動の不存在について控訴人の主張

 仮に会派への政務調査費の交付が認められるにしても、それは会派活動による議員の政務調査研究の存在が前提となることは言うまでもない。本件ではその会派活動の証拠がほとんど存在していない。乙第17号証(ひな形は乙第8号証 48頁、49頁、54頁)に見るとおり、議員個人の任意の活動を束にして集約したものを会派活動の分として請求しているに過ぎない。弘田兼一議員の会派分であるが、100件ほどの活動が記載されているのに、会派活動の影も見えない。すべて議員個人の任意の活動記録である。

政務調査費交付に関して会派活動の実績の有無についてはこれまで各地の裁判で争点となってきたが、最高裁判例(平成21年7月7日最高裁第三小法廷判決)については原審(原告準備書面(5))で控訴人が詳しく紹介しそれに基づいて主張してきた。

この最高裁の事案は函館市議会の会派への政務調査費の交付であるが、原審で敗訴していた議員側が上告していた。判旨を要約すると、

A)

(3)上告人は、上記(2)の支出に関し、上記6会派の所属議員は、具体的な調査活動ごとに、その活動内容及びこれに必要な政務調査費からの支出を求める金額を会派に申請し、会派の代表者及び経理責任者からその活動内容及び金額の承認を得たうえで、経理責任者からその金員の交付を受けたと主張している。(最高裁判決2頁後段)

そこで最高裁は次のように判断した、

B)

そうすると、本件各支出について、上告人が主張する前記2(3)(上のA))の事実が認められ、本件各会派の代表者がした承認は、会派の名において、各所属議員の発案、申請に係る調査研究活動を会派のためのものとして当該議員にゆだね、又は会派のための活動として承認する趣旨のものと認める余地があり、そのように認められる場合には、本件使途基準にいう「会派が行う」との要件は満たされることになる。(同判決3頁下段)

ということで最高裁はA)の事実があるかどうか吟味しなおすために原審に差し戻すとした。すなわち、議員側がA)で主張するように、

会派に所属する議員が、

①具体的な調査研究活動ごとに

②活動内容や費用の金額を会派に申請し

③会派の代表者が②を承認したうえで

④経理責任者からその金員を受領する

という1連の事実があれば、会派活動の実績があると認められる余地があるという趣旨である。これを本件と照らし合わせると、①②③、すなわち活動ごとに→会派に申請し→これを会派活動として承認される、という手続きがが全く存在せず、④のみがあるという実態で会派としての政務調査費の交付が行われてきた。すなわち上記乙第17号証は、100件ほどの活動についてお金を使った後で作成された「支出伝票」及び「活動記録簿」であって、会派への申請書やそれの承認決裁書とは到底言えないものである。

これでは、上掲B)の最高裁判示のいう特定の調査活動ごとに、会派のためのものとして調査研究活動を議員が「申請し」、会派がこれに「ゆだね」たり、又は会派のためのものとして「承認」したということにはならない。

原審「答弁書」(答弁書10頁後段)でも被控訴人は「会派に所属する議員個別の活動についても、会派代表者及び会派の経理責任者が押印した「政務調査費支出伝票(会派用)」が提出されることによって、会派としての活動であることを会派が承認したものして扱われている。」といってそれを認めている。すなわち、これでは、会派活動としての決定的な申請、委任という契機が存在していず、議員が勝手に又思い思いに活動した実績を数枚の「支出伝票」の紙面で束にして記載し、これは会派分だといって提出するだけで会派代表と経理責任者が承認の押印する、それだけでて金員を請求し受領している、というのである。

この記述を厳密に見れば、「会派代表者及び会派の経理責任者が押印した政務調査支出伝票」が提出されるという記述からすると、会派にその伝票を提出する前にすでに会派代表者らの押印があったという事になる。

簡単に言えば、あらかじめ押した会派代表者らの押印がある伝票にお金を使ったという記載をするだけで、会派活動をした、承認したということになるというのである。

上掲最高裁判決の会派活動の要件とは遠く隔たっていることは明らかであり、会派の政務調査費としては違法な支出である。

知事は、その権限を行使して、根拠のない支出については公金を使ってはならないのであるから、速やかに返還させねばならない。 

4、〈監査請求3〉領収書等支出の証拠が不存在

本件交付条例第10条4項では会派の代表や議員は収支報告書を提出するときには、「政務調査費の支出に係る領収書その他の証拠書類の写し」を添付することになっている。

しかし、本件では、宿泊費や旅費を合わせて旅行会社などに支払うパック旅行様式の場合を除いてほとんどの、宿泊経費については領収書が添付されていない。

乙第8号証の「政務調査費マニュアル」では「県の旅費規定に基づく旅費額」の定額が支払われることになっていて、「領収書は不要だが、政務調査活動記録簿により議員が証明することとする。」とされている。

このマニュアルの規定と実際の行為は完全に前掲本件交付条例第10条の規定に違反する。

経費支出の客観的な証拠もなしに、金を請求するなどというのは、公的機関はおろかまともな一般の会社でもほとんどありえないことである。ホテルや旅館は必ず領収書を発行している。泊まった事実があれば事後でも領収書は手に入れることができるのである。

旅宿費の支払いを定額にするか実費にするかはともかく、宿泊をし代金を支払ったという事実の、宿泊先の証明がなければならない。議員の手書きの「証明」は証拠にならないということは言うまでもない。

原審でも紹介した朝日新聞の報道では高知県議会のある議員の話では、宿泊費のうち実際にホテルなどに泊まったのは、宿泊費として政務調査費を請求した全体の4割程度にすぎなかったという。

宿泊代について政務調査費の詐取が常態化している疑いがある。

定額支払いで1宿につき1万数千円というのも「実費支出の原則」(前掲「政務調査費マニュアル」5頁の「使途基準」)に反する。高知市内では1宿4千円~6千円が相場である。

知事は、根拠のない公金の支出についてはその返還を請求する権限を持っている。

【三、結語 当裁判の任務】

原判決は第一に、知事の交付決定について自ら主要な争点としてこれを掲げておきながら、判断をしなかった。これは住民訴訟を扱う上において監査請求前置について誤った想念をもってしたものと考えられる。監査請求段階での違法性の指摘事項以外の違法性が訴訟段階で現れた場合、これをも審理し判断することは当然であり、避けることはできない。

当裁判所においては、当然、知事の交付決定書の不存在、交付決定通知の不存在の法的意義について適正な判断をするべきである。

第二に、原判決は、知事の財務会計行為の遂行権限についての判断で、一方では明確に議会事務局長には委任してはいないしそのような規定もないと判示していながら、他方では、それを委任していた、という矛盾した判断を示し、そのうち後者の過てる判断で判決を下した。当裁判所では知事の権限委任につき原判決の矛盾を解き、厳正な法令の解釈をしめすべきである。

第三に、監査請求期間につき、本件監査請求について最高裁などの判例に照らし法令上の規定を正しく適用すべきである。

議会事務局の違法な開示行為の遅延や、政務調査費の支出が概算払いであるという性質を適正に考慮するならば、監査請求期間算定においてその政務調査費に係る支出命令の時点を起点にするべきか又はその精算段階(情報開示段階と一致)を起点にするべきか、自ずと明らかである。会計行為の終わった時点を起点とするべきことは法律の規定するところである。

第四に、被控訴人は、「併任」という手法を編み出したり自己の責任を逃れるために引用した文献で明らかなように、議会には交付決定の政治的判断やそれに基づく財務会計行為は委任できないという事を知っていた。それでもなお、自己の直接的な指揮監督のもとでとるべき事務を議決機関たる議会に委任し続けた。それは懈怠というよりも故意による職務の放棄である。

また委任したといっても、最重要な交付決定やその決定通知書の発行を委任先の事務局長が怠っていたことについて、点検もせずその指揮監督権限を行使しなかった。

委任しても知事の指揮監督権限まで委任できるわけではない。

まして「併任」であれば、委任というより被控訴人の直轄となるから、その指揮監督権限は忽せにはできない。原判決は、これらの被控訴人の責務と権限に関する懈怠又は放棄について何らまともに考慮せず、理由なくすべて放免した。

第五に、監査請求期間の問題や知事権限についての誤った判断により原判決は実質的な訴訟内容の審理を回避した。今日全国的に政務調査費の使われ方について世情の批判が厳しいものがある中で、正規の手続きもせず高額な報酬や手当のほかに億単位の公金を使う事案について、正当な訴えがあるのに、裁判所が何の吟味もせずにこれを放任することは許されない。

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3度目の最高裁

News & Letters/449

来る平成27年12月11日午後1時半 最高裁第二小法廷
 東洋町長松延宏幸の野根漁協1000万円不正融資事件
 松延宏幸側はあろうことか、虚偽の理事会名簿を最高裁に提出し、それで漁協理事会は
 成立していた、と主張した。やれやれ、最高裁も落ちたもので、事実審理はしないはずなのに
 虚偽の理事会名簿を取り上げて、審理をするという。
これで3度目の最高裁となりました。
最高裁は霞が関にあり、コンクリートの要塞です。
人権や正義を訴える人民の願いをはねつけるためにこのような頑丈な
要塞を作ったのでしょう。権力を守る砦→憲法を守る砦に替えなくてはなりません。
一度目は、大法廷へ。確か平成21年12月18日ごろ→勝利→地方自治法の直接請求で法律が変わった。
二度目は、小法廷へ。これも同じ年 →勝利 →四国銀行が損害賠償
三度目の今度は小法廷へ。→-?私の答弁書はすでに最高裁や松延宏幸側に届いている。

平成27年(行ヒ)第156号
上告受理申立人  東洋町長
上告受理申立て相手方 澤山保太郎
          答 弁 書
平成27年11月22日                     
最高裁判所第二小法廷 殿
                    高知県安芸郡東洋町大字河内1081番地1     
                        相手方(原審控訴人) 澤山保太郎
【一】 はじめに
上告受理申立て理由書で主張された平成23年11月3日の本件野根漁業協同組合(本件組合と呼ぶ)の理事会(これを単に本件理事会と呼ぶ)成立の可否について簡単に本件上告受理申立て(これを単に「本件申立て」という)の相手方として意見を申し述べる。
上告審は憲法、法令、これまでの最高裁判例などに関する事案を審理するのがその目的である。
本件申立ては、特別利害関係人は原則として理事会での議決に加わることはできないが、特別利害関係人が議決に加わった場合でもそれを控除してもなお議決権のある理事多数が出席しておればその理事会は有効に成立するという通説を本件理事会の出席者に照らしてどうかという問題と理解する。
そうすると、本件理事会の8名の理事が誰であったかという事実の認定が前提となる。原審までは本件理事会の構成メンバーについて確定的な判断はなされていなかった。
本件申立て理由書にはこれまで1審2審を通じて主張されてこなかった新しい理事8名が掲示された。(本件申立て理由書3頁目)
申立人は1審2審を通して本件理事会の成否については自ら終始否定的であり、理事会の手続き上の瑕疵は、総会によって治癒されているなどと主張していた。
本件申立てではじめて8名の理事の名前を掲げ、それをもとに親族である特別利害関係人を控除する上記の算術を試みたのである。
本件申立てが受理された以上、それが適法かどうかは別にして、その算術の元になる本件理事会の理事8名が誰であり、親族など特別利害関係人が誰と誰なのか、これらについて最高裁であらためて事実審理に応ぜざるを得ない。

1、申立人の掲げた本件理事会の8名の名簿(本件申立て理由書3頁下段)
は虚偽のものである。
この理事名簿が真実であるとする証拠は何もなく、第1審、2審を通じて申立人は一度もこれを主張していないし、原審判決でも8名の理事について何も確定的に判断されていない。
本件組合の総会で正規に選出された理事の名簿は甲第33号証であり、それ
を担保するのは甲第37号証の2の本件組合の総会議事録である。
 [甲第21号証によると、この甲第33号証の理事のうち本件が起こる直前までに辞任の通告が4名分(桜井菊蔵、桜井春雄、松田博光、桜井淳一各理事)あった。
しかし、後任の理事は正規に選任されていなかった。
したがって辞任したという4人も法令や定款の定めによって理事としての義務と責任があった。当然本件理事会にも招集され出席の義務があったが桜井菊蔵以外は誰も連絡されなかったという。]
2、申立人が本件申立て理由書に掲げた理事名では、8人のうち5人までが本件貸付金の借受け事業所である松吉保小敷組合の親族であり、松吉一家が漁協役員の過半数を占めるという異常な構成となる。すなわち、
松吉保本人、息子松吉保彦、孫松吉裕也、実弟松吉孝雄、甥で当該融資対象
者の松吉小敷の責任者松田安信の5人が本件組合の理事名にあがっている
が、これらは特別利害関係人である。(松吉保彦、松吉孝雄は正規に選出さ
れた理事) (甲第37号証の1)
本件組合は百数十名の組合員が現役の漁師として活動しており、その理事会
で1親族が半数以上を占めるような理事の選任をすることは、かつて一度も
なかった。
しかも甲第33号証に照らせば、松吉一家5人の理事中松吉保本人を含めて
3人(松吉保、松吉裕也、松田安信)が正規に選出された理事ではない。
3、そうすると、本件理事会は虚偽の理事名簿でもって招集され、そのうち松吉一家の特別利害関係人が出席して本件理事会の貸付金に関する議案を議決したということになる。
  辞任を申し出ていた正規の理事3人が本件理事会に招集されていないというのは、その3人に代わって部外者3人が理事に名を連ねていることによって判明する。
  8人のうち部外者でかつ特別利害関係人である欠格者が入り込んでした理事会が有効に成立するかという話は、法的な論考のテーマにもならない無法なものである。
  なぜなら、判例や通説で問題となっている特別利害関係人というのは、特別利害関係取締役(理事)ということであって、役員でもないまったくの部外者である松吉保が入り込んだ理事会の議決は無効と断ぜられるべきであるからである。部外者が入ってその部外者のための議決がなされた場合、その部外者を控除したり、それが議決に参加したという事実を拭い去ることはできない。2審の控訴理由書の11枚目で、その点を指摘した。
  その意味で原判決は正当である。
4、甲第33号証の8名の正規の理事のうち、辞任したが後任が選任されていない3人(桜井淳一、桜井春雄、松田博光)が招集されず、そのかわりに議事に直接利害関係があり、部外者である3人の利害関係親族を理事会に入れ理事会に出席させたり本件「確約書」に署名押印させた。
単にこの違法な出席者・署名者を控除すればよいという算術の問題ではない。
特に本件理事会から除外された桜井淳一理事は本件が起こる直前まで長年
当組合の組合長を務め、本件貸付金の借入れに強く反対していた者であるが、
現に大敷組合を経営しており、多数の組合員を擁し、漁場の利用権などの権
益に深く関係していて組合員総会では容易に過半数を制する勢力をもって
いた。その上組合はその運営には彼の経営する大敷組合に漁場料などで財政
的にも大きく依存してきた。
一人の理事や取締役でも理由なく不当に除外すればその理事会や取締役会
の成立が問題になるが、組合運営を現実に支え、常に漁港で陣頭指揮をして
いる有力理事に何の連絡もなく開かれた理事会は有効ではない。
正規の招集手続きを欠く取締役会や理事会の開催を有効とする判例は存在
しない。
ちなみに松吉保の小敷組合は漁場料など組合への賦課金は長年一銭も払っ
ていないといわれる。(甲第37号証の1)
漁場料などを支払わない組合員が漁業組合の正規の理事、しかもその理事会
の過半数を占めるなどということはありえないことである。
5、甲第33号証によって、本件理事会の正否について判断するべきである。
  理事8名のうち、本件申立理由書が出席して議決したという理事は6人であるという。この主張を仮に認めるとすると、そのうち特別利害関係人2人を除くと以下の4人がのこり、4人での議決が過半数で有効である、という。
   桜井菊蔵   井崎勝行
   松吉孝雄   桜井勇    (上告受理申立て理由書4頁)
しかし、すでに明らかにしたように松吉孝雄は松吉保の実弟であるから特別
利害関係人として除外されねばならない。(甲第37号証の1)
1親等及び2親等は特別利害関係人とみなされている。
そこで、甲第33号証の正規の理事8名のうち、親族の松吉保彦と松吉孝雄
の2人を除けば議決権者は6名(桜井菊蔵、桜井勇、井崎勝行、桜井春雄、
桜井淳一、松田博光)となり、そのうち本件理事会に出席して議決したとい
うのは上掲の桜井菊蔵と井崎勝行と桜井勇の3人となる。そうすると議決権
を持つ理事の過半数にはならない。
  申立人の出席理事だという主張を認めても本件貸付金に係る理事会の議決
  は有効に成立していない。
  また、甲第21号証によれば、上掲理事中の桜井勇理事は、長年理事の名簿
  に正規に挙がってきたが、本件理事会も含め一度も理事会に出席したこと
はないという。本件理事会の開催した日も、出漁しており出席しなかったと
いうことであるから、実際に議決権のある理事で出席したのは桜井菊蔵と井
崎勝行2人となる。議決権者6人のうち2人では過半数に遠く及ばない。
6、甲第33号証について
  原審までの裁判で平成23年11月の本件事件が起こった当時の理事会の正規の名簿は甲第33号証だけでこれのみが公判(第2審)に提出されたものである。
  これが正規の総会で選出された役員の名簿であることは甲第37号証の2の本件組合の「平成20年度第60回通常総会議事録」であきらかである。この議事録で第3号議案に「任期満了による役員改選承認の件」があり、甲第33号証の役員名簿通りの理事が選任されていることが分かる。この役員選挙が行われた組合総会には町役場から町長と担当課長が「来賓」として出席しているから、本件申立人が知らないという事はできない。
  特に総会に臨席した申立人の部下である「建設課長 奈良崎氏」というのは当時の東洋町産業建設課の課長奈良崎幸一のことであり、この奈良崎が本件貸付の実務を担当し又議会での本件組合の理事についての質疑に答えていた者である。
7、原審まで申立人は申立て理由書に掲げた理事名を挙証してこなかった。
  理事名が明確に出ているのは、甲第21号証の「別紙2」の「野根漁業協同組合理事会議事録」と同号証「別紙4」のNo.1とNo.2であり、前者の議事録では人数が足らないので後者のNo.1とNo.2とを接合して今回申立て理由書の8名の名簿を拵えたものと推定される。
しかし、甲第21号証の別紙2,3,4はいずれも本件組合特別調査委員会が組合内に残っていた事件の関係資料を調査のため集めたものであり、それら別紙に記載された理事やその者たちの行為を認めたものではないのである。調査委員会が無効な文書だという資料に基づいて合成して作り上げた理事名、これを元に特別利害関係人を控除するとの通説の計算で出た主張は、根本的に意味をなさない。
8、特別利害関係人(役員)の参加した議決に関する通説について
 通説では本件申立て人の言うとおり、取締役会や理事会などで議決権者のう  
ち、特別利害関係人が議決に参加した場合、これを控除したあと議決の成立に必要な多数が存在するならば、その議決の効力は妨げられない、という。
  この通説について本件申立て人は東京高裁判決と大阪地裁の判例を挙げていて、その両判例では、本件申立て人の主張を根拠づけるものは何もない。特別利害関係人が出席した取締役会などでその議決を有効であるとした最高裁の判例があるか不明である。
  学説では、欠格者が参加した議決は無効とすべきだとしている。
  「合議機関に欠格者(利害関係を有する議員又は委員)を参加させてなされた議決の効力について、欠格者の投票を控除してもなお結果に影響を及ぼさない場合には、その議決の効力は妨げられないとした例がある。
  しかし、欠格者が何らの発言をしない場合でも、その審議への参加自身が、公正な審議を妨げることになるのであるから、特別の理由のない限り、原則として、欠格者の参加した合議機関の議決は、無効と解するべきであろう。」(田中二郎著「行政法総論」第二編第二章第六節第三款「行政行為の  無効及び取消しの原因」)
  本件の場合、本件理事会に参加したとして議事録に署名押印のある6人の理事のうち松吉保、松吉保彦、松吉孝雄の3人は、2親等以内の親族である。
  仮に本件申立て人の言うとおり本件理事会が開かれたとしても、議長の桜井菊蔵を除けば、議決する5人のうち過半数の3人がその特別利害関係親族となる。役員会の議長が特別利害関係人である場合にはその役員会の議決は無効だとするいくつかの判例があるが、議場の過半数が議決権のない特別利害関係人である場合は、議長が特別利害関係人である場合よりも、より強くかつ直接に違法性(会社法第369条の2の水産業協同組合法への準用)を帯びると考える。したがって、本件申立て理由書の主張は認められない。
【二】地方自治法第96条1項12号規定と地方自治法第242条2の1項4号請求裁判について
本件は 地方自治法第242条2の1項4号規定(これを単に「4号規定」と呼ぶ)に基づく住民訴訟であり、
  被告 東洋町長
     松延宏幸
すなわち町長という執行機関を当事者とする訴訟という事になっている。
したがって従来の学説や判例によれば、本件は地方自治法第96条1項12号(訴訟提起の議会議決 これを単に「12号規定」と呼ぶ)に該当しない、上訴につき東洋町議会の議決はいらないということになる。なぜなら、「12号規定」が適用されるのは、「普通地方公共団体が当事者となる・・・訴訟の提起・・・」となっているからである。
しかし、これまでの「4号規定」訴訟について「12号規定」の適用の可否に関する判例(昭和30年11月22日最高裁第三小法廷判決)等は誤っており再検討する必要があると考える。
理由:
1、「4号規定」の「執行機関」を当事者とする訴訟は、地方自治法第242条3の2項以下の規定に見るとおり、究極的には普通地方公共団体を当事者とする訴訟に転化する。すなわち住民の起こす訴訟の究極目的は当該普通地方公共団体をして、問題を起こした長や職員に対して損害賠償請求をするだけでなく、その訴訟を起こさせることを求めるものとなっている。住民訴訟は必ずしも当該普通公共団体による訴訟にまで発展するわけではないが、その可能性を含んでいる。
それはたとえば、支払い督促は普通地方公共団体の長の事務であるが、これ自体は訴えの提起ではなく、必ずしも訴訟になるわけではないが、時に異議が出されると当該普通公共団体を当事者とする訴訟に移行するので、議会の議決が必要とされた。
(昭和59年5月31日最高裁第一小法廷判決)
「4号規定」による訴訟は、当該普通地方公共団体をも当事者とすると考えられる。
議会の議決を必要とするという「12号規定」は、本件のような執行機関を当事者とするがやがて当該普通公共団体をも当事者として登場させる場合には、地方自治法の条理上これを適用させるべきである。
2、「普通地方公共団体」の実体は、その執行機関が中核であり、また、特にその首長は、
 地方自治法第147条の規定「普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統括し、これを代表する。」との規定があり、長の行為は、単に執行機関の行為というだけでなく、当該普通地方公共団体の行為として表象されるものである。
 実際上でも、執行機関としての長の行為は、予算の編成・執行、条例の制定等も含めてすべての重要行為は、普通地方公共団体として遂行されている。執行機関、市町村長の名前で予算案などは議会に提出されない。公共工事、道路工事ひとつをとっても市町村長などの執行機関の名、首長の名前で遂行されるわけではない。すべからく首長としての執行機関の行為は普通地方公共団体の名義のもとに遂行されるのが普通である。
 したがって、職員の行為は別としても首長としての執行機関の(違法)行為の当事者は当該普通地方公共団体と同視されうる。
3、「4号規定」の訴訟の場合、首長や職員など執行機関が当事者として訴えられても、その訴訟の費用は首長や職員ではなく当該普通地方公共団体が負担する。弁護士を依頼しても首長や職員との契約ではなく当該普通地方公共団体との契約となる。執行機関である長や職員らが訴えられた場合には当然のごとくに訴訟費用は当該普通公共団体の予算を使う。 この場合、執行機関を当該普通地方公共団体と別個の法人格として区別することはできない。
また、訴えられた場合に議会の議決なしに応訴することはやむを得ないとしても、敗訴してからの上訴費用まで当該普通公共団体の予算を何の手続きや住民(議会)の了解もなく使うというのはあまりに特権的でありすぎる。
4、「12号規定」の「訴訟の提起」の意味については控訴や上告にもいえるのというのが通説であり、かつ、「4号規定」の訴訟が当該普通公共団体を前面に引き出すことを目的とし、究極的にはそれが当事者として登場することになることは地方自治法第242条3の2項、3項、4項、5項の各規定から明らかであるから、本件についても「12号規定」を適用し、議会議決を経ていない本件申立てを却下すべきである。訴訟提起の重要な手続きを履践していず、民事訴訟法第316条第1項1号に該当するからである。
 ちなみに、本件申立ての相手方が、本年2月24日に東洋町議会議長に対し、当該議決についての公文書開示請求をしたが、即日町議会議長は、その公文書は存在していない、本件上告の提起及び本件申立てについて議会に議案を上程されていない、と回答している。(甲第38号証)
【三】原判決と本件申立て理由書の内容
 原判決は主として二つの理由で申立人の賠償責任を認定した。原判決を図式化すると、
(1) 貸付規則の非公示→ 貸付規則の無効
(2) 理事会の不成立→貸付契約の無効
(3) (1)及び(2)の無効→本件申立て人の敗訴
一、本件貸付規則の無効について
第1審高知地裁判決では触れられていなかったが、原判決では、本件貸付規則が、「交付手続きを欠いた未施行のものであって、効力を生じていない」と断ぜられた。(原判決18頁下段~19頁上段)この一事からしても、1000万円の本件貸出しは違法となる。
 本件申立て理由書においては、本件貸付規則の無効という原判決の重大な判断については一言も反論するところがない。ただ理事会の成否をあげつらうだけである。
本件貸付規則が無効であることは本件申立人も反論の余地がなく、認めたという事であろう。本件貸付規則無効の意義は、たとえ金銭消費貸借契約が有効に成立したとしても(本件においては金銭消費貸借契約書が存在せず、そのかわり「借用書」が存在するが、その「借用書」には借主(野根漁業協同組合)及び貸主(東洋町)両方の署名押印が欠如している。)貸付規則がない以上貸付けの対象、貸付の要件や返済の要件、手続きなどが不明ということになり、到底公的機関の貸付行為とは言えず、このことだけですでに判決を左右する重大な瑕疵である。
 適正な交付手続きを踏んでいず、特定の漁家にのみ本件貸付規則を交付し、その規則にのっとった申請書を提出させた本件の場合、それ以外の多数の台風被災者(そのうちいくつもの漁家が申立人の町に救済の陳情書を提出していた)に対して極めて不公正な取り扱いとなった。公金支出の上で公益性を担保する民主的な適正手続きが欠如した。
 第二に、本件貸付規則は無効であるが、一応議会への提出があり、本件貸付についての規範となるはずのものであった。議会は当然この規範的規則にのっとって本件貸付が実行されるものと了解した。しかし本件貸付規則の公布手続(不存在)は非民主的であり、無効と判断された。本件貸付は規範となる条例又は規則を失った。
 町議会についても、規則が交付もされず、公募もされず、貸付け対象者(応募者)の審査・選考もなされず、特定の漁家にだけ全額貸し付けるという事が最初から明らかであったなら、到底本件貸付は承認されることはなかったし、本件貸付金1000万円の入った補正予算も可決されることは困難だったと考えられる。
およそ公金支出には、執行機関の規範的ルールの存在又は制定が必要であり、それにはその公金支出の公益目的や適正手続きが定められる。一応本件申立人がそれを新規に制定し議会に示したという以上は、執行機関(首長)の行為は無制限な裁量に掣肘が加わりそれによって拘束され評価されることになる。少なくとも執行機関内部の事務手続きに関する限り規範的拘束性を帯びている。
首長としての裁量行為による貸付という行政行為の事実がそれによって評価されるが、本件申立人は、規範的ルールたる本件貸付規則に対し、それの非公示という重大な瑕疵によってそれが無効になるほどに背反したのである。規則を公布したり、公募したり、審査・選考したり・・・これらの事務手続きについて何もしなかったということは、自らの行為の公正さや民主性を否定したことになる。
それでは、本件申立人は何をもってその裁量行為が正当なものといえるのであろうか。
 補助金支出や貸付金の支出において、何らかのルールも作らずに首長の完全な恣意に基づく裁量は認められない。それらは、対象事業の公益性や、公金支出に至る過程の民主的手続きが担保されていなくては、単なる利権行政に転化するからである。
 実際、本件貸付(又貸し目的)は、返済の能力も意思もない特定漁家に融通するため、その無能力を十分承知していた申立人が、漁業組合の名義を差し出すことを条件にして特定漁家の利益のため遂行したものであり、その返済を漁業組合に代替させようとした利権行為そのものである。
 本件貸付をめぐって漁業組合の総会で紛糾して拒絶されて、本件貸付金を申請し実際に借受けを実行した桜井菊蔵ら本件組合執行部は、逃げるように組合役員を辞職してしまったのである。
 貸付規則が無効と判断されたというのは、公正な手続きの不存在、貸付金の利権化を認定されたも同然であるから、本件申立人松延宏幸の責任は逃れられなかったのである。 
二、本件理事会の不成立について
既述のとおり、本件申立て理由書の主張通り6人の理事(桜井菊蔵、桜井勇、松吉保、松吉保彦、松吉孝雄)が出席して本件理事会が開かれその議事録に署名押印したとしても、その場合議長を除くと5人の理事による議決となるが、そのうち3人(松吉保、松吉保彦、松吉孝雄)までが松吉保の特別利害関係親族となる。3人は親子と実の兄弟同士であるからである。特別利害関係人が議場で過半数となり、そのうえで議決したというのは、水産業協同組合法が準用する会社法369条2の規定に甚だしくかつ決定的に違反して、無効である。
 1、本件申立理由書の掲示した理事名簿は虚偽である
既述のとおり上告受理申立て理由書3頁目に掲示された理事の名簿は虚偽のものである。
このうち3名(松吉保、松吉裕也、松田安信)は実際の組合総会など正規の選任手続きで理事に就任したものではない。勝手に理事にされたか、勝手に名乗っているだけである。
本件申立人は町長である前に東洋町の幹部職員であった。特に税務課長を長く勤めていてその課には全町民の家族名簿が直ちに見ることのできるパソコンがある。本件申立人は東洋町のほとんどの家族や親族について誰よりも詳しく知る立場にあった。本件申立理由書3頁目に掲示された理事の名前を見ただけで、直ちにこの理事名簿はおかしいと判断されねばならない。すなわち
  松吉(桜井)菊蔵    井崎勝行
  松吉孝雄        松吉保
  桜井勇         松吉保彦
  松田安信        松吉裕也
                    (  )内の氏名が正しい
一つの小さな漁村の漁協の定数8名の理事の中にその半数が松吉(まつよし)という苗字をもっている。いかに片田舎の組合(本件組合の組合員は百数十名)とはいえ組合役員の半数を同じ一族(二親等以内)に占めさせるというようなことはありえない。すなわち、松吉保の実弟が松吉孝雄であり、松吉保の息子が松吉保彦であり、松吉保の孫が松吉裕也である。また、松田安信も松吉保の甥であり、しかも安信は貸付け対象事業所「松吉保小敷組合」の操業責任者であった。
さらに、この松吉一家の5人の理事のうち松吉保、松吉裕也、松田安信の3人は正規に理事に選任されたものではない。組合員ではあるが組合理事としては無資格の部外者である。
他の少数の3人の理事に過半数の親族理事の存在が影響を及ぼさないといえるであろうか。
そんな異常な役員構成、1親族が過半数を占める理事会が正規の組合員総会で選任されたり承認されるはずはない、という疑問を本件申立人が本当に抱かなかったとしたら、それは本件申立人の重大な過失か、それ自体を容認していたとしか言いようがない。
漁業組合は特定範囲の漁場で互いに厳しく競合したりまた協同したりする組合員の集合体であり、普通は組合財政を支えるいくつかの漁家を中心に選任される。組合に対してほとんど何の賦課金も納めない1親族によって組合の執行機関である理事会が牛耳られるほど多数を役員に選任するというようなことはありえない。
2、本件申立人が挙げる理事8人を選任したという総会は存在していない。
本件申立人が第1審第2審を通して、本件理事会の瑕疵は平成23年11月9日の組合員総会で治癒された、などという主張を繰り返してきたが、その総会(臨時総会)の議事録なるものにも理事改選の議案やその議事の記載は全くない。
それ以前の役員選挙に係る正規の総会は平成21年5月23日のことであり、そこで選任された理事は甲第33号証の役員たちであって、その次の役員改選の総会は3年後の平成24年6月のものであるから、申立人の今回あげた理事名簿が何を根拠にするものか不明である。
申立人が掲げる理事名簿が本当のものであるかどうかを立証するものは何もない。
当時の真実の理事名は甲第33号証に記載された理事であって、この書証は実際の総会に提出され可決された総会議案(甲第37号証の2)をそのまま活版印刷したものの写しである。第1審第2審を通じて、本件に係る理事の名簿一覧は甲第33号証以外には法廷に提出されていない。
3、本件組合の本件当時の理事の状況
平成23年11月中の正規の理事は甲第33号証であるが、これについて本件組合の役員はいくつか整理しなければならない問題があった。すなわち、甲第21号証によると幾人かの理事辞任の申し出の事実があった。平成21年5月23日に就任の役員(甲第33号証)でスタートしたが、
理事のうち桜井菊蔵(正規の理事)が家族が高齢を理由に反対したため辞任を申し出た。
また、桜井春雄(正規の理事)も辞任を理事会で口頭で申し出た。
松田博光(正規の理事)についても辞任を理事会に口頭で申し出た。
組合は、理事会の決定として松吉保と武山祐一を理事として補充した。11月9日の総会に動議として出された理事の名前であった。しかしこの新理事については総会の承認を得ていなかった。当時の組合は理事の補充は理事会で決めることができるという誤った観念をもっていたと考えられる。
補充されたとする武山祐一(非正規理事)」も本件が起こる1年前に辞任が申しだされた。
そして、桜井淳一(正規)は数期にわたって本件組合の組合長を務めてきたが、本件貸付金を組合が受けることについて反対していたがため、松吉保(非正規理事 本件貸付金の実質的借主)によって強行に辞任を迫られ本件が起こる直前に辞任を余儀なくされ組合長を辞任していた。本件が起こる直前では正規の理事のうち4人が辞任し本件組合定款で定められた理事8人中4人がいない、理事は5人以上という水産業協同組合法に違反するという状態になっていた。それ故に平成23年11月9日の臨時総会で組合員から理事の定足数が不足しているという指摘があったのであり、第1審判決でその事実が指摘され、理事会の手続きに問題があるとされたのである。
定款や水産業協同組合法の規定では、理事が辞任してもその後任が選任されない間は辞任した理事が業務を引き続き遂行するということになっていて、本件組合はその後任の理事を総会などで正規に補充選任するという手続きは取っていなかったし、また、辞任した理事に理事の任務遂行を促すこともしなかった。したがって理事会を開催してもそれら辞任した理事には開催について招集状など何の連絡もしてこなかった。
ところが、松吉保らが本件貸付金について「理事会」を開くにあたって、辞任させた桜井淳一組合長に代わって、数年前に辞任していた桜井菊蔵を突然理事に復帰させこれを組合長に据えて貸付金の申入れを決議した、ということになったのである。
当時の野根漁協の正規の役員は甲第33証のとおりであり平成21年5月に総会で選任されている。原審判決文16頁には、この甲第33号証について正しいかどうか不明である旨の指摘があり採用されていないが、当時の役員が総会で認められたものとしてはこの活版印刷された名簿以外に存在しない。
理事の任期は3年間であり、上掲の理事名簿の者が本件事案を担当するべき理事8人全員であり、また監事3人であった。二親等以内の者は桜井菊蔵と桜井勇の親子二人だけである。このうち、本件当時、辞任したという者が、桜井菊蔵、桜井春雄、桜井淳一、松田博光らがいて、桜井淳一前組合長以外は数年間理事会に出席していないとのことである。
正規に総会などで後任の補充選任はされていなかったから、法令や定款の定めでこの辞任届をした3人も理事としての任務を遂行する立場にあった。
理事会を開催するときには当然これら辞任したという理事にも招集状を送付するか何らかの連絡をしなければならなかったが、事件当時の本件組合執行部は一切そのような手続きはしていなかった、といわれる。
4、正規の理事で判断すべき
既述のとおり本件申立て人が言うとおりの理事名で本件理事会の成否を判断しても特別利害関係人が過半数で議決を行ったということになり、社会的相当性を欠くというべきであり、到底承認できるものではない。
甲第33号証の正規の理事に照らして本件平成23年11月3日の本件理事会を検討すると、冒頭既述のとおりであり、利害関係理事は松吉保彦(松吉保の息子)と松吉孝雄(松吉保の実弟)の二人であり、後の6人(桜井菊蔵、桜井勇、井崎勝行、桜井淳一、桜井春雄、松田博光)は議決可能な理事であるが、この6人の理事のうち本件理事会に出席したとして議事録に名が出ているのは、桜井菊蔵、井崎勝行、桜井勇の3人だけである。
本件申立人が言うとおり本当に理事会が開かれたとしても議決可能の6人の理事のうち3人では過半数とはならない。
したがって、本件申立人の理事会成立についての申立て理由は成り立たない。
本件申立人は本件組合の役員については知らないとは言えない。
本件組合とは漁港(野根漁港)の町営の荷捌き場や製氷機など主要な漁港施設の管理委託契約を結んでいるから、常時接触する関係にある。誰が役員であるか知る義務がある。
まして、正規の理事選出の総会に前町長と担当課長が出席し議案書を手にしたのであるか
ら知らなかったと言い逃れることはできない。今回、地元の漁業関係者であれば直ちに偽
物と看破できるような理事名を裁判所に出してきたこと自体、過失ではなく悪意ある作為
であり、故意であると考えられる。
5、理事会議決の重大な瑕疵
理事会の議決は既述のとおりその理事会構成員の形式上から見て、到底成立しているとは言えないが、その内容の面でも著しく不正なものであって、無効である。
  ①裁判所が認めた不正 定款変更
 本件貸付(又貸し)は、漁業協同組合としてのものであるので、本件組合はその貸付事業を行うためには定款を変更する必要があり、その定款変更は知事の許認可による。
 第1審判決(9頁中段)で「本件貸付は、知事が上記定款変更を認可する前に実行されている・・・・」と認定された通り、知事の定款変更の認可(平成23年12月)が下りる前に本件貸付(平成23年11月中)が遂行された。これは些末な間違いではない。漁業協同組合にとって信用事業の一部貸付事業を行うのは大変な事業の追加である。
県知事の許可もなく定款にない新たな事業を勝手に始めることは無法な行為であり、水産業協同組合法第48条2項の規定「定款の変更は…行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。」という規定を直視するべきである。日本国の法律が無効だと定めたものを屁理屈を並べて有効だというのはあまりにも無法である。
 認可どころか定款変更の県庁への申請もまだしていない段階(本件理事会は11月3日、認可申請は11月10日)で、具体的な案件として貸付事業の新規事業を理事会で議決することはできないし、むろんそれを実行することもできない。
 無免許で普通乗用車を運転して捕まったものが、後で免許を取得したからと言ってその犯罪行為を元に戻して帳消しにはできない。無効な期間にした行為は無効である。
 ②裁判所が認めた不正 借入の最高限度額の設定なし
 また、第1審判決では、「野根漁協は、総会で毎事業年度内における借入金の最高限度額を総会の議決で決めなければ、借り入れをすることができないが、本件貸付がされた事業年度にはこれを定めていない。」(第1審判決8頁~9頁)と認定したが、本件組合が災害対策資金の借入れのために定款変更を議決したことが最高限度額の議決をしたことと「同視し得る」として違法ではないと判断した。しかし、定款変更はただ貸付事業を行うというもので、借り入れる話とは全く「同視」できるものではない。本件理事会で問題になっているのは借入金のことであるから、本件組合が資金を借り入れるという議決のためには総会で特別議決が必要なのである。それなしに理事会で勝手に大枚の資金借り入れを決議した場合は、その議決は総会のバックアップがなければ無効たらざるを得ない。法律で無効とされたものはあくまでも無効であり、裁判所が無効なものを有効と判断してもやはり無効なのである。
 このように理事会の議決は理事の定数問題だけでなくその内容においても裁判官の指摘がある通り議決できない事案を議決していて、無効であることは明白である。
③自己取引についての理事会承認議決の欠如
本件貸付金は小敷網を敷いている松吉保に対してであるが、その借主の名義はその息子で理事の松吉保彦であった。それはとりもなおさず親子が共同の借り受け人という事になるであろう。したがって名義上であっても松吉保彦は組合との間で金銭消費貸借契約を結ぶのであるから、水産業協同組合法第38条、本件組合定款第49条2項の定めるところにより理事会の特別議決でもってその契約が承認されねばならない。
本件理事会ではこの利益相反の自己取引についての承認決議はなされていない。
本件理事会が議決したのは組合が東洋町に対して1000万円を借り受けるという申請が承認されただけであって、組合と、事実上貸付が決まっていた特定理事との間の契約については何も議決されなかった。
 そもそも、本件貸付金(借受金)についての理事会は本件理事会以外になかったわけであるから、本件理事会で、借り受ける1000万円をだれに貸すのか正式に決定する必要もあったし、またその相手が理事(松吉保彦又は松吉保)であるなら、その理事との間の契約についても議題に挙げて決議する必要があった。
 もし松吉保彦は仮の名義人であり実質的な契約相手は正規の理事ではない松吉保であるとして、松吉保1人とすると、その場合、理事たちが第三者の利益のために組合と利益相反取引をするということとなるから、理事全員が特別利害関係人の欠格者となり、議決ができないことになる。(会社法第365条(356条1項準用))
 学校法人や医療法人などでは理事と法人間の利益が相反する場合は、所轄官庁が特別代理人を任命して事務を処理するという事になっている。
特別利害関係人とは、理事又は取締役が、自己または第三者のために債務の保証などその法人と利益相反取引を行う場合に、その理事又は取締役のことをいうのである。
いずれにしても本件理事会では本件貸付金(借受金)に係る利益相反取引について、いかなる議決もしなかったし、その後も本件貸付金についての理事会は開かれていない。
したがって、本件貸付金(借受金)についての理事会としては重大な欠陥を持ったまま終わり、してはならない議決を行ったというべきである。
5、本件理事会について第1審、第2審での申立人の主張
原判決の判示(「松吉保及び松吉保彦が加わらなくても、本件理事会決議がなされたと認
めるに足りる特段の事情は主張も立証もない。」)のとおり、本件申立人は第1審、第2
審において本件理事会の有効成立については積極的には何も主張しなかったし、むしろ、
それに瑕疵があったとしても総会の議決でその瑕疵は治癒されたという趣旨の主張を繰
り返してきた。第二審の答弁書でも「原判決が「11月3日の理事会決議には手続き上
の瑕疵がある可能性がある」と認定したことは明らかに間違った認定であって相当問題
がある」というのみでどこに問題があるか、どうしてその手続きに瑕疵がないというの
か何も主張もしていない。第二審の準備書面(5)でも「総会の決議は理事会の決議よ
り優先する」という風にむしろ理事会の決議に瑕疵があることを前提にした主張の仕方
となっている。
 第一審(高知地裁)でも理事会に言及したのは準備書面(2)だけであり、「・・・・何らかの瑕疵があったとしても・・・同組合理事会の瑕疵の有無を問題にする余地はない」などといって、本件理事会の成立については否定的か極力争点化するのを避けてきた。
 第1審高知地裁は本件申立ての相手方(当時原告)の請求を棄却したが、それでも理事会の不成立などで「違法な公金の支出という余地がある」と指摘している。
すなわち、平成23年11月3日の1000万円借入金の理事会決議には6名出席となっているが実際にはそのうち2名が出席していず、議決権者が過半数にならないという甲第21号証の指摘している点である。その時の理事会出席者というのは
     議長 桜井菊蔵
理事  井崎勝行    理事 桜井勇
理事  松吉孝雄    理事 松吉保
理事  松吉保彦 
以上6名であるが、事件後の組合の特別調査委員会が、そのうち桜井勇、松吉保彦は出漁していて理事会に出席していなかったから4人の出席では定足数8名の過半数に不足しているという事実を指摘していること、(第1審では利害関係者については問題にしていない)
また一方、組合総会において組合員から、そもそも辞任者が4人もおり理事の人数が絶対的に不足していて、理事会の決定などが無効になっているとの問題提起があった、という事実を認定し、調査委員会の指摘と相まって「理事会決議には手続き上の瑕疵があるという可能性がある。」と判示した。
第2審の判断はひとり特別利害関係人の問題だけでなく、上述のような理事会の定足数が絶対的に不足しているという第1審裁判官の指摘も前提にしているものと考えられる。
【四】結論
上告審は、憲法・法令やこれまでの最高裁などの判例に係る事案についてのみ受理し審理することになっている。
本件申立て理由書は、第1審、第2審でほとんど実質的に争わず、まともな主張もしていないばかりか、その成立を自ら否定的に評価していた本件理事会の成否について新たな事実を元に主張をしているものである。その主張を根拠づけるものとして本件申立て理由書(2頁~3頁)が挙げるのは、東京高裁及び大阪地裁の2つの判例であるが、これら判例では、本件申立て人の主張は裏付けられていない。
前者東京高裁の判例では取締役の議決権行使が利益相反する事例ではないと判示されているし、後者の大阪地裁の判例ではまさに利害関係人が議決権を行使してその議決が無効とされた事件である。
ただ、その判例タイムズなどの解説の中で本件申立人の言うような特別利害関係人を控除して云々の説が紹介されているだけである。何の判例違反なのか不明であり、何の法令に抵触するか不明であって、一般論(通説)として特別利害関係人の取り扱いを論じた解説の一論理を本件に機械的に適用することを求めるに過ぎない。
しかし、その判例解説の、控除の論理を採用するにしても、その控除の前提になるのは、本件組合の正規の理事である。本件申立てはその理事について組合総会で正規に選任されていないものを新たに出してきたのである。
第1審第2審では本件理事会を構成する正規の理事については本件申立人側が本件理事会の成立についてむしろ否定的な見解を述べ続けていたこともあって、明確に確定していない。
本件理事会の成立については第1審第2審を通じて申立人自身が否定的見解を述べ続け、第1審裁判官も理事の絶対的定足数に「瑕疵がある」、「違法な公金の支出の可能性がある」と指摘し、第2審では特別利害関係人の点からその成立が否認された。 
事実の審理をしない上告審であらためてこれを取り上げるとなれば、本件のようにいくらでも架空の事実を言い立てそれに特定の論理を付会して上告審で争うことができるという事になるであろう。もしそうであるなら、まさにその架空の事実について最高裁でも審理することを避けることはできない。すなわち、利害関係人控除の論理とともに、正規の総会で選任された理事をもとにしてその論理を適用するのか、それとも、部外者も含む過半数の特別利害関係人で構成された虚偽の理事名簿でそれをするのか、判断は避けられない。

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