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2015年9月30日 (水)

東洋町不正事件の住民訴訟準備書面

News & Letters/440

平成25年東洋町のヘリポート設置のための土地の購入についての裁判が明日高知地方裁判所で11時55分に開かれます。

2筆の山地をヘリポートと付属倉庫の建設のためと言って買ったのに有力建設業者が地主の一つの山地(約5町)には全く何も建てず、もう一つ(16町)には5反ほどの面積に施設を 作ったが大半(15町5反)は不要であり無価値のものであった。前者の1町の単価が400万円、後者が200万円という破格の値段だった。
これは住民訴訟というより背任罪で検察庁で扱われるべきものだ。

平成27年(行ウ)第7号 損害賠償請求事件
原告 澤山保太郎
被告 東洋町長松延宏幸

          原告準備書面(2)

平成27年9月29日 
高知地方裁判所 殿
                    原告 澤山保太郎

原告は原告準備書面(1)で被告の本案前の主張(答弁書)について反論したが、以下の通り被告準備書面(1)について答弁書と合わせて今一度意見を述べる。

一、 監査請求の期間についての最高裁判例

請求の期間については、地方自治法第242条1の2に規定があるが、「前項の規定による請求は、当該行為のあった日または終わった日から一年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときはこの限りではない。」という簡単なものである。

1、昭和53年6月23日最高裁第3小法廷はある町の町長と収入役の損害賠償義務について、財産の管理を怠る事実については地方自治法の期間制限はないという趣旨の判断を示した。

2、昭和62年2月20日最高裁第2小法廷は、新潟県のある町の町有財産の随意契約に基づく売却処分をめぐる住民監査請求について

「監査請求が、当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし、当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としているものであるときは、当該監査請求については、右怠る事実に係る請求権の発生原因たる当該行為のあった日または終わった日を基準として同上2項の規定を適用すべきものと解するのが相当である。」
と判断し、53年判決に例外(いわゆる「不真正怠る事実))があることを示した。

3、さらに、平成14年7月2日最高裁第3小法廷は、上の「不真正怠る事実」といわれるケースでも例外があることを示した。公共工事に係る談合事件で県が損害を被ったという事件についてである。

「怠る事実については監査請求期間に制限がないのが原則であり、上記(62年判決)のようにその制限が及ぶというべき場合はその例外に当たることにかんがみれば、監査委員が怠る事実の監査を遂げるためには、特定の財務会計上の行為の存否、内容等について検討しなければならないとしても、当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの判断をしなければならない関係にはない場合には、これをしなければならない関係にあった上記第二小法廷判決(62年判決)の場合と異なり、当該怠る事実を対象としてされた監査請求は、本件規定の趣旨を没却するものとはいえず、これに本件規定を適用すべきものではない。」     (  )内は原告の注

二、本件と上掲最高裁判例について

このほかにも住民監査請求の期間制限に関する重要な判例はいくつもあるが、住民側への監査請求期間の制限については、全体として緩やかになり、問題の行政側には厳しい判断となる傾向である。
被告が依拠した昭和62年判例と平成14年判例とに照らし、本件について検討する。

1、 昭和62年2月20日の最高裁判例

この判例の事案は、町有財産である土地の売却が時価に比して著しく低額であるとして住民が監査請求をしたものである。土地の売却という財務会計行為の違法行為についてはその売却行為についての監査請求が本来であり、その場合は1年以内の請求期間に限られ、その違法行為によって発生した損害賠償の請求権についての行使がなされていないとする監査請求については裁判所は怠る事実とは認めない、というものである。

被告はこの判例をストレートに本件監査請求に機械的に当てはめようとしているが、この最高裁判例が適正であるとしても、本件の監査請求の内容について、この判例を適用するべきかどうかきわめて疑問であると考える。

第1に、東洋町の本件事案の監査請求は、土地購入の財務会計行為の事実から出発しているが→その内実は土地の活用・管理の点に重点が置かれ、活用されていない、またはその計画がない土地について糾明していることは明らかである。
その証拠に、土地代金、購入価格が法外に高額であると指摘しているが、時価との差額を問題にしているわけではない。あくまで利用されない土地について地主への代金または土地の返還、またはその分について責任職員の賠償を求めている。

62年判決では、違法な土地売却代金の請求権不行使という財産管理が対象であったが、本件の場合は、売買契約の契約行為の違法性ではなく、購入した土地の財産管理の違法性を問題にしているのである。

 2、平成14年の最高裁判例 

上に掲示した平成14年7月2日の判決は上掲の原則的な基準を具体的事件に適用して次のように判示した。
「本件監査請求を遂げるためには、監査委員は、県が同被上告人と請負契約を締結したことやその代金額が不当に高いものであったか否かを検討せざるを得ないのであるが、県の同契約締結やその代金額の決定が財務会計法規に違反する違法なものであったとされて初めて県の被上告人らに対する損害賠償請求権が発生するものではなく、被上告人らの談合、これに基づく被上告人横川電機の入札及び県との契約締結が不法行為法上違法の評価を受けるものであること、これにより県に損害が発生したことなどを確定しさえすれば足りるのであるから、本件監査請求は県の契約締結を対象とする監査請求を含むものと見ざるを得ないものではない。
したがって、これを認めても、本件規定の趣旨が没却されるものではなく、本件監査請求には本件規定の適用がないも  
のと解するのが相当である。前掲第二小法廷の示した法理(昭和62年判決)は、本件に及ぶものではない。」

  本件東洋町の場合でも、確かに、原告は売買契約やその金の支出について問題にしないわけにはいかないが、あくまでもその購入した土地の利用状況を問題にしたのである。
また、売買契約の違法性については、施設建設の予定用地に何の施設も建設しなかった、もともと建設の予定もなかった、虚偽の議会説明をし、その土地を買ったには、利権がらみの不法行為があったのではないかと指摘している。すなわち土地の売買契約自体がのちの経過から判断して、実質的には背任行為である趣旨をも主張しているのである。

  談合や権限乱用などの不法行為がある場合には、財務会計行為の違法性とは独立して、その不法行為による損害についてはたとえ請求期間の超過があっても、住民監査請求の怠る事実について法の期間制限規定から除外されるというのが平成14年7月2日の判断である。
 法外に高い価格で買ったことは措くとしても購入土地に議会で説明した施設を建設せず放置して地主である町内の有力業者や大地主に不当利得を得させようとしたという事実は、単に財務会計行為の違法性を超えて、明らかに刑事上の違法性、権限乱用、背任などの犯罪の領域の事件である。
町の監査委員は、売買契約の締結など財務会計行為と離れて、被告のこの犯罪的事実に基づいて原告の請求の当否を判断することもできた。

 3、被告が挙げる平成14年9月12日の最高裁判例

  原告準備書面ですでに述べたがこの最高裁の事件は京都市の同和対策関係のずさんな報償費の支出事件についての住民監査請求であるが、被告答弁書3頁の主張はこの最高裁判例を誤読しているのではないかと思われる。
この最高裁判例は二つの事件であるが被告が挙げたのは平成10年(行ツ)第69号の方であろう。判決文によると、
原審大阪高裁判決では、当該監査請求は法の規定する1年を経過していること、徒過したことにつき正当な理由が存在しないことを挙げて、「適法な監査請求を経たものではない」として住民訴訟を却下した。正当な理由の不存在については、予算書、支出命令書、金銭出納帳などが秘密にされたわけではないということであった。
原審の判断について最高裁はこれを是認することができないとして、次のような判断を示した。

①当該行為があってから1年を経過してから監査請求がなされた。したがってそれにつき正当な理由があるかどうか検討しなければならない。
「当該行為が秘密裏にされた場合には、同項ただし書きは、「正当な理由」の有無は、特段の事情がない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである。」

②「そしてこのことは、当該行為が秘密裏にされた場合に限らず、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合にも同様であると解すべきである。」

③「したがって、そのような場合には、上記正当な理由の有無は、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである。」
最高裁は、このような判断基準を設定して事件について具体的な判断を下した。
すなわち、京都新聞の不明朗支出の報道がなされた期日をもって
「市の一般市民において相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件各財務会計行為の存在及び内容を知ることができたというべきであり、第1審原告らが同日ころから相当な期間内に監査請求をしなかった場合には、法242条2項ただし書きにいう正当な理由がないものというべきである。」
と判示し、住民側の監査請求に正当な理由があるとして原審に差し戻した。

④ここで注意すべきなのは、最高裁は、支出関係の公文書類の存在を知りえたというだけではなく、それが「不明朗」であるとか「使途不明」であるとかの新聞報道の存在を挙げていること、その新聞報道のあった期日を住民が監査請求ができる起点としている点である。すなわち
「前記事実関係によれば、支出金ア及び支出金イに係る各支出は、支出決定書及び支出命令書において種別、科目及び支出理由を明らかにしてされたものではあるが、その具体的な使途については、第1審被告Aが持っていた領収書と京都市会計規則に準じて作成した金銭出納帳に記載されていたというのである。そして記録によれば、

〈1〉平成元年12月12日、毎日新聞および朝日新聞は、同月11日開催の市議会普通決算特別委員会において、昭和63年度中に報償費名目で市民生局同和対策室長当てに3回に分けてされた計340万円の各支出は領収書がなく使途を明らかにしないまま行われた不明朗な支出である旨が指摘された事実を報道したこと、

〈2〉同月13日、京都新聞は、同月12日開催の市議会厚生委員会に置いて、市の昭和63年度決算の中に報償費名目で同局同和対策室長あてにされた計340万円の各支出は領収書等がないまま行われた不明朗な支出である旨が指摘された事実を報道したことが明らかである。そうすると、遅くとも平成元年12月13日ころには、市の一般住民において相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をするに足りる程度に本件各財務会計行為の存在及び内容を知ることができたというべきであり、第1審原告らが同日ころから相当な期間内に監査請求をしなかった場合には、法第242条2項ただし書にいう正当な理由がないものというべきである。」

一般市民が、公文書類だけをいくら見てもよほどずさんなものでない限り、監査請求をする契機としてとらえることは困難である。専門の行政マンが自分たちが作成する文書や広報などに不正が露見するような記述をすることはありえない。何らかの方法でその文書の内容が実際とは違っているとか、異常であるなどの事実を知らなければ住民は監査請求を起こすことはできない。

しかるに被告準備書面は、町のホームページとか議会だよりだとかの本件事業に関して被告が出した情報で住民が不正疑惑を起こすことが可能であり、「監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたと言える。」というのである。
被告が主張するように、ただ認識する、知るというだけではなく、最高裁が言うのは「監査請求をするに足りる程度に」特定の財務会計行為を知るというのである。
監査請求をするには、一つの事案について不正や不当な事実を把握するかまたは疑惑を起こしたりすることが前提となる。上掲平成14年9月12日の最高裁判例では、当該行為に問題ありの複数の新聞報道を監査請求の決定的な契機とした。

本件の場合予算措置や議会での承認の事実があり、土地購入の事実を住民が知っても、議会説明通りの施設が建てられるかどうかは、すべての施設の建設が終わらなければわからない。購入した土地が目的通り使用されるかされないかということを判断するのは、購入時点では不可能である。それを知ることができた時点から相当な期間内に監査請求をしておれば期間制限の法の適用はないのである。

平成25年本件購入土地の上に施設が建てられたのは平成25年~26年であり、建設請負代金の最終支払いは平成26年11月10日であった。それから半年以内に次年度の計画の有無などをうかがいながら本件監査請求はなされた。むしろ、土地利用の件では早すぎるといわれる恐れも無きにしも非ずであったが、平成27年3月末日の被告の説明を聞いた段階で監査請求に踏み切ったものである。本件監査請求は、議会での質疑や新聞報道を契機にしたものではないが、被告が依拠する平成14年9月12日の最高裁判例の基準に何ら違背するところはないと考える。

⑤なお付言するが、被告答弁書や準備書面(1)で当時の情報で十分監査請求をする材料を知ることができた、とか、不当に高い価格ではないかと疑うことができた、などとしきりに主張しているが、山林など土地の購入自体は、仮に住民が無駄だと考えたとしてもそれだけで監査請求の対象とすることは困難である。
価格の問題を別とすれば、現金を支払って町有地を増大させることはそれを直ちに財務会計上違法とすることはできない。現金が固定資産に転化しただけである。
原告は土地の価格が不当に高額に過ぎるという指摘はしているがそれの時価との差額を監査請求の対象にしていない。監査対象、違法行為の種別を選択するのは住民の権利であり、監査を受ける側が自らの他の不正をあげつらって原告に迫るというのは噴飯ものであろう。原告が土地の価格を問題にしなかったのは、本件で購入された土地のうちヘリポート及びその付属施設の造設に使われた土地は平地であり他にも宅地とおぼしきものもある。それらは相当な値打ちがあると判断した。その他の山地は十杷ひとがらげに不要な土地として返還されるか、かかった費用の賠償がなされるものと考えたから価格の差額は問題にしなかったのである。

特定目的の用地として土地を購入していながら、その目的のために土地を利用しない場合に監査請求は起こる。 

三、故意、過失について

1、被告は準備書面(1)の末尾で
「各土地代金の支出行為が違法であって、そのことにつき被告に故意、過失があったことを認める証拠はない。」
と主張するが、しかし、本件訴状及び書証には、

① 購入した2筆の土地とその価格、
② その土地の購入目的
③ 実際に利用した土地の範囲

これらが明確に立証されていて、まったく利用されなかったA土地、大半が利用されなかったB土地は、購入目的に反し違法ではないかとして訴えられているのである。
 被告は、この訴えについて誠実に答えるべきである。

2、他方、被告は答弁書で監査請求の期間について論ずる中で、
「東洋町がすでに防災用拠点施設整備事業用地として使用可能な町有地を有しおり、さらに用地を取得する必要がないにもかかわらず、1436番14の土地(48,961㎡)と1436番の1の一部の土地(160,564㎡)という防災用拠点施設整備事業用地としては使用に適さない部分を含む土地を購入したのではないか、また、その価格はいずれも不当に高い価格ではないか、それにもかかわらず被告が各売買代金の支出命令を出したのではないか、と疑うことができたのであるから、・・・・」
と、まるで住民側の口吻で原告の失策を追及する。このくだりで被告は、請求期間のことは別として、「疑うことができた・・・」などと言えるのは、本件監査請求の正当性を肯認しているということなのである。

  普通、被告であるなら、監査請求の内容について不当ないいがかりだとか言って憤慨したりして、その上に請求期間を徒過していると指摘する。
  被告の異様な主張ではあるが、請求期間の徒過が否定されたら、原告と被告の認識が一致したということで本件訴訟は直ちに原告の主張が認められるということになるだろう。被告は自分がした行為が、一般町民から厳しい疑惑の目で見られていることを自覚していると考えられる。

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