土佐電鉄の暴力団利用についての住民訴訟の進展
News & Letters/343
県議会での生ぬるし追及を潜り抜け、県は土佐電鉄の開き直りを肯定し、
新年度の補助金を従前通り、認めた。
暴力団利用で会長や社長までが引責辞任したのに、県庁では、暴力団利用の事実はなかったというのである。だが県民の裁判は続く。
土佐電鉄の内部調査報告書の弁解では、暴力団の後ろ盾があるという社長・会長の発言は、特定株主をその発言によって「牽制」しただけだという。
「牽制」という言葉は、国語辞典では、武力などの威力を使って相手を抑止する行為だとなっている。これでは弁解ではなく暴力団利用を肯定したことになる。
また、その内部調査報告書では、社長らの発言は、現役の日本最大の暴力団幹部を影響下に置く「元組長」の力で、他の暴力団から土佐電鉄を守ろうとしたのであるから、暴力団をなくす暴排条例の趣旨にかなっている旨の文章が記載されている。
最強の暴力団の力に頼って、地域の中小の暴力団からの干渉を排除してもらうという露骨な暴力団利用肯定の論理を臆面もなく発表しているのである。
県議会の委員会審議で何故このような開き直りを追及しなかったのであろうか。
この内部報告書は撤回されていない。県庁は、暴力団礼賛の報告書を受けて、何故これをたたきつけなかったのだ。
]
内部調査報告書は「不十分だ」とかで外部調査委員会の報告書が作られた。
ここでは、全体が人格分裂的な矛盾した記述が満載だ。一方では、社長らの暴力団幹部の名前を誇示した行為は、暴排条例違反でなない、といいながら、他方では、社長らの所業は暴力団横行を「助長」する行為であると強く非難している。また、暴排条例違反ではないと言いながら、社長らの発言を「コンプライアンス上重大な問題がある」という趣旨の批判もしている。コンプライアンスは普通法令順守という意味で使われる。法令順守上重大な問題があるということは、すなわち違法行為だということである。
この二つの報告書をうけて県庁は、暴力団関係については土佐電鉄は何も問題ないという。県庁が暴力団排除について具体的には何も真剣に考えていないという証明だ。
県庁自身が、過去のモードアバンセや闘犬センターの二つのやみ融資事件を痛切に反省していないと見える。
新しい土佐電鉄の役員体制というが、県庁と四銀が前面に出てきた。人は変われどいずれもかつての闇融資事件の関係団体である。県からの補助金は四銀が土佐電鉄への貸金の利息として確保しなければらないものだ。腐りきった会社であっても、そして乗客がほとんどいない空の電車やバスであっても、何が何でも走らせねばならない。
平成25年(行ウ)第12号 補助金返還請求及び支給差止め請求事件
原告 澤山保太郎
被告 高知県知事
原告準備書面(2)
平成26年2月12日
高知地方裁判所 御中
原告 澤山保太郎
原告は被告準備書面(1)について以下のとおり弁論を準備する。
一、原告の主張は、確たる証拠に基づいている。
1、推測で主張しているのではない
原告は訴状及び原告準備書面(1)で本件請求の正当性とその根拠を明らかにした。
今回の被告準備書面(1)の結語で「・・・あくまで推測の域を出ない主張しかなされておらず、不当利得発生要件事実を主張立証しているとはいえない。」などというが、今回の被告準備書面(1)を見ても、原告の主張に対して具体的な反論が何一つなされていず、ただ新しい言い訳として、すでに「元組長」が死亡していて死亡したものと交際はできないはずだなどというたわいないくりごとを述べているにすぎない。
法令に基づく原告の主張の根拠とするのは主に4つであり、一つは新聞報道であり、二つ目は土佐電鉄の内部調査報告書、三つ目は同社の外部調査報告書である。四つ目は被告発行の支出関係資料だ。これら根拠資料の事実を法令に照らして違法だと主張する。
被告は、原告が指摘する根拠資料の事実について反証を挙げるか、それら事実について別個の合理的な解釈を示すか、なにかまともな試みをするべきである。
二、暴力団排除条例違反の事実
本件においては、会社(土佐電鉄㈱)の最高幹部が指定暴力団と関係し、その名を使って、人を威圧して事業活動をしていたという事実があった。これは何人も否定できない事実である。それは高知県暴力団排除条例第18条等に違反し、その事実は高知県補助金交付規則第4条但書きの(2)等に該当しているから、その交付規則第4条により当該幹部社員が運営していた会社に対する補助金の支出が許されないというものであって、被告は、可及的速やかに補助金交付規則第15条(取消)、第16条(返還命令)等の手続きをしなければならない。
1、暴力団排除条例第18条違反について
被告は今回の準備書面(1)で本件が暴力団排除条例第18条に違反することにはならない、と主張する。その理由として二つ挙げる。(被告準備書面(1)6頁~7頁)
①「元組長」のD氏が平成21年11月にすでに死亡していること
②D氏の死亡後、土佐電鉄の元会長や社長が、現役又は元の暴力団員と接触、関与は一切なかったこと。この二つである。
①について
誰も死んだ人と交際したなどと言っている訳ではない。しかし死せる孔明仲達を走らすということもあり、死んだ者の影響力が生きている場合もある。
“俺は山口組の田岡組長にかわいがられていたんや”といってすごんだ時、普通の人は田岡組長はとっくの昔に死んでいるからこわくないと思うだろうか。むしろ、その男は今でも山口組の関係者だと思って畏怖するであろう。
しかも本件の場合は、死んだ人との関係だけをひけらかしただけでなくその死んだD氏の子分筋であった指定暴力団の現役最高幹部(山口組組長の司忍、山口組主流派の弘道会組長の高山)の名前も出していたのである。
②について
被告準備書面は、土佐電鉄の元会長らは、現役の暴力団と関係を有する契機はなかった、「具体的・現実的利用可能性があったとは認められない」、という。
土佐電鉄の元会長らが、「元組長」D氏の為に一般人が参加しない準組葬に参列したり墓参を繰り返していた事実は「元組長」D氏の死後であり、土佐電鉄が会社として暴力団と関係を続けていた証拠である。香典をもって葬式に参列すれば、当然出席者名簿に記帳したであろう。その名簿は暴力団の影響力を示すものであり、濃淡はあっても暴力団への忠誠の証だとみなされる。
そして、指定暴力団の死んだ最高幹部の墓(そこは一種の聖地)に供花をささげて墓参することも一般の人には許されることではあるまい。それは暴力団と意思が通じ合える関係者にのみ許可されたものと考えられる。
実際に、土佐電鉄がD氏の死後、現役の暴力団とどのような関係があったかは、不明であるが、少なくとも如上の事実は確かなことである。陰でこっそり暴力団員と会食したり、何かを頼んだりする連中は絶えないが、普通の人や会社の代表者が、白昼堂々と暴力団の葬式に参加したり、墓参を繰り返すようなことは想像もできないことである。
そういうことをすることが恥ではなく、誇りに感じていた可能性すらある。土佐電鉄の当該会社が、元会長や元社長らがこのように指定暴力団という恐ろしい反社会的勢力と特別な関係があるという事を、知らなかったということはあり得ない。
2、甲第12号証について
仮に、被告が言うように実際に現実の暴力団とは関係がない、としても、生きている暴力団の中で最も有名な暴力団組長の名前を出して相手を威圧したことは事実である。
名前を出した暴力団組長と、面識もなく交際もしたことがなかったとしても、本件は、なお、暴力団排除条例第18条に抵触する。
甲第12号証の新聞記事は、昨年平成25年10月に実際には特定の暴力団と関係ないのに「暴力団組員と親交があるかのごとく装」って、人を恐喝して金品を取ったという事件で警察が男を逮捕したというものである。甲第12号証は、被告が言うように利用された暴力団組員が何も知らず、勝手に名前が使われた場合でも、人を恐喝することができるし、それで畏怖せしめて金品を巻き上げることもできることを示している。高知県暴力団排除条例第18条は、ただ単に「暴力団を利用してはならない。」というだけで、現実に暴力団の出動の具体的約束や、暴力団との「意見の合致」(被告準備書面(1)7頁上から2行目)までを前提にしている訳ではない。
暴力団の名前を勝手に使うだけの「利用」でも刑事犯罪が起こるのであるが、本件暴排条例は暴力団の存在とその利用可能性を一般的に前提にしているのであり、被告や甲第12号証の男が現実には暴力団とは関係がなかったと主張するような場合でも、暴力団の名をかたっている以上、現実的利用可能性があると相手に受け止められるからである。
本件の場合は偽装でも何でもなく、具体的な利用可能性は如上の経緯からして極めて高い。新聞報道の「元組長」D氏の話からすれば、土佐電鉄の世話をするように山口組最高幹部や弘道会最高幹部に託してあった可能性があり、会社側としてもそれを信じるからこそ後の葬式参列や毎年の墓参を欠かさなかったと考えられる。
高知県下では戦前から、土佐電鉄に限らず、暴力団や侠客との深い関係があった企業があり(甲第5号証)、土佐電鉄の金融機関である四国銀行自体が裏社会との関係が取りざたされていた。その一つが露見したのが原告が株主訴訟を起こした前述の別件やみ融資事件だった。本件で主導的役割を果たしていた竹本元社長も四国銀行出身である。
甲第5号証には、「昔は、会社の社長連と侠客との付き合いは、ごく自然で、むしろ当たり前のこととされていた。ほとんどが事ある場合に備え、会社から金を出して、あるいはポケットマネーで侠客を抱えていた。」というふうに高知の古い時代の状況が書かれているが、それを土佐電鉄は社史に堂々と掲載したのであるから、その古い風潮が根絶されたとはいえないであろう。土佐電鉄の本件当時の会長や社長が、暴力団との関係を誇示すれば、それは、真実であると受け止められる素地が十分にあった。土佐電鉄の社長室に反社会的グループの者が出入りしていた可能性も否定できない。現に、事件のあった日、会社が暴力団からの強い後ろ盾があることについて、証人として名古屋方面から呼び寄せた人物などは、暴力団と無関係な人物とは思われない。
3、暴力団排除条例第19条違反について
被告は、暴排条例第19条にも違反していないと主張する理由として、暴力団への利益供与をしていない、平成23年11月16日の「元組長」の墓参も、死んだ人への「お供物」であるから暴力団への利益供与に当たらない、という。
しかし、もちろん供花を受けて喜ぶ者は死者ではない。死者は無感情であり物言わぬ。
死者はその墓地を所有している訳でもない。墓参を受け入れ供花を喜ぶものは墓を設営した遺族であり、その墓を尊崇する団体である。暴力団にとって元の親分の墓参は重要なイベントであって、その筋の週刊誌でも取材されて報道されている。
靖国神社の参拝で喜んでいるのはA級戦犯本人ではない。彼らは死んで物言わない。参拝されて嬉しいのか悲しいのか、そんな感情も何もない。
喜ぶのはその戦犯の遺族や戦犯を合祇した神社や右翼たちであろう。
暴力団が最も大事にしている聖地への墓参や供花は高知県暴力団排除条例第19条の1の(3)に該当し、「相当の対償のない利益の供与」に当たると考える。
そして、同条例19条の違反や、19条1の(3)の違反は同条例19条2に該当し、「暴力団の活動を助長」したことになる。このことは本件についての外部調査報告書に土佐電鉄の最高幹部二人の所業は暴力団の活動を「反社会的勢力の排除、関係の遮断とは逆に、助長するような言動に及んだもの・・・・」(乙第3号証 11頁)とはっきり断定していることでも明確である。
三、補助金交付規則による措置
本件における土佐電鉄幹部の所業は高知県暴力団排除条例の
① 第18条、
② 第19条の1の(3)、
③ 第19条の2
にそれぞれ抵触することは明らかであり、被告はまともな弁解や反論をなしえていない。
これらの違反は、高知県補助金交付規則第4条の1の但書き各項に当たり、被告はしかるべき措置を取る義務がある。すなわち、
土佐電鉄幹部の、上掲①②③を犯した行為は、
1、高知県補助金交付規則第4条の1の但書き(2)(「暴排条例18条又は第19条の規定に違反した事実があるとき」)に該当し
2、さらに、その但書きの(10)(「その役員が暴力団又は暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有しているとき」) に当たる。
3、そのことは、補助金交付規則の第15条第1項の(2)に該当し、補助金等の交付の取消しに該当し、さらにそれは、同条第3項に該当するから、補助金交付の確定があった後においても取消すことになっている。
4、また、被告は、すでに交付された補助金については、補助金交付規則の第16条に基づいて返還を命じなければならない。
さらに、被告準備書面が何も触れていないが、原告準備書面(1)の【第二】新聞報道から確実な事実 の一で挙示した⑦、⑧の事実は暴力団排除条例の第18条等に抵触し、本件補助金交付規則の第4条1の但書の(6)に該当する。すなわち、元会長が、会長職に就いたり、辞任しようとしたとき、「元組長」から「やれ」と言われたり、「辞めなよ」と指示されたこと、また、問題がある株主の株を「元組長」が買い取るという事実があったという。これらの事実はそれこそ「元組長」が死亡してから以降、その役割を誰が代替しているか分からないが、「元組長」が名前を挙げた直系の暴力団幹部が引き継いでいる可能性がある。
これは新聞で報道された事実でありながら、本件についての内部、外部の調査報告書には何も触れられていない。とくに株の売買に暴力団を介在させるという事実について確認もせず、反省もしないということは、依然としてそれを継続するということを意味するものである。
四、公共交通と補助金
1、被告の立場
被告は原告の訴えについて一生懸命抗弁しているが、被告にとって何の利益もないことである。本件請求の正当性を認めた方がむしろ被告や県民の利益となるであろう。
腐りきった交通会社を擁護することは、被告自身が不当な利権にまみれるばかりか、それが暴力団と癒着した会社であるから、被告自身が県の暴排条例に違反することになる。
暴力団と関係した会社に資金を回すということ自体重大な条例(第3条等)違反であり県民への背信行為である。土佐電鉄は十分反省しているというのであろうか。
土佐電鉄は十分反省していない。原告準備書面(1)でも指摘したように土佐電鉄は、元会長や元社長の所業について開き直っている。すなわちもう一度内部報告書(甲第9号証)の7枚目を引用する。
「まず、社長の発言内容を検討しました。発言内容は、字句通りに捉えると、「・・・が土佐電鉄の味方であって、暴力団又は暴力団員にも介入させないようにしてくれている」というものであります。ここでは暴力団又は暴力団員が土佐電鉄から排除されるべき存在として捉えられていることも明らかであります。」
・・・の部分は墨塗り(ブラックアウト)であり「元組長」D氏であるが、これを「土佐電鉄の味方」であるとし、この力で他の暴力団を抑止し土佐電鉄を守るという趣旨である。「元組長」は一人ではない。その背後に指定暴力団の現役最高幹部とその組織が控えている。このような見解、暴力団の利用を肯定している恐るべき連中を役員として置き、新体制になった今でも土佐電鉄に居座らせているのである。県民からひんしゅくをかったこの内部報告書を土佐電鉄は今も撤回していない。このような見解の発表自体が暴排条例第3条及び第5条等の重大な違反事件だ。
被告はいわば補助金と言う公金をだまし取られた立場であり、県民とともに土佐電鉄を糾弾し、被害を回復する義務がある。その過程で土佐電鉄が企業としてどうなるのか、多くの社員の運命がどうなるのかは、別個の問題である。
2、高知県の公共交通のあり方と補助金の行方
現在、高知県議会などで土佐電鉄を含め県下の公共交通のあり方が検討されている。
現状のバスや電車、鉄道は利用する乗客の数に比べ明らかに設備過剰であり、高速バスなど一部を除いて多くの路線で乗客がまばらか空車状態で運行されている。各社は慢性的な赤字を抱え、県や市町村からの巨額の資金援助なしには立ち行かない。昭和60年代以前の、多くの県民が公共交通に依存していた時代の体制のまま根本的な改革は進んでいない。
あらゆる産業部門で激しいリストラが避けられず、多くの企業が内部改革を繰り返し悪戦苦闘しながら生き延び蘇ってきた。土佐電鉄を含む交通各社も乗客の推移や時代の要請に対応し、県や市町村からの補助金という姑息な方法で目先をしのぐのではなく、統廃合を含む抜本的な構造改革を遂行し自立的な運営に切り替えなければならないはずである。
しかも、被告が出す数億円の補助金のほとんどは、実際には補助対象企業に回らず、いながら四国銀行などへの借金の利子の返済金になっていると言われている。
被告は、本件補助金を含め公金が、高金利の銀行への上納金のように使われている状況を座視傍観するべきであろうか。ある意味では補助金を担保に旧態依然の経営を強いられている土佐電鉄も被害者なのかもしれない。本件補助金を皮切りに、被告は、腐敗したこの補助金の構造を解明し、これを断絶する方策を模索するべきであろう。
| 固定リンク
「高知県政」カテゴリの記事
- 3月11日 東北大震災の教訓(2022.03.13)
- 東洋町の核廃棄物導入の策謀は誰か(2021.03.11)
- 県立図書館の高松控訴審の控訴人(澤山)の最終陳述(2020.01.24)
- 選挙(2019.11.09)
- 県立図書館焚書事件控訴理由書(2019.11.04)
「土佐電鉄問題」カテゴリの記事
- 高知新聞2月18日付「二罰二百戒」(2014.02.20)
- 土佐電鉄の暴力団利用についての住民訴訟の進展(2014.02.18)
- 土佐電鉄問題について(2013.10.18)
- 土佐電鉄暴力団事件訴状(2013.06.17)
- 監査請求書を補う意見陳述(2013.04.26)
コメント