使用済み核燃料の処理と三里塚
News & Letters/394
使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、核燃サイクルを実現しても核廃棄物は処理しきれない。むしろ普通の原子炉で出る使用済み燃料よりもはるかに毒性の高い高レベル放射性廃棄物が大量に産出される。原発や核爆弾開発の後に残る核廃棄物をうまく処理したという国はどこにもない。
フィンランドがオルキルオト島で試みているオンカロとかいう地底の処分場もどうなるかわからない。
火山列島の日本では、地震だらけで、どこを掘っても水や温泉がわいてくるから、とても地中に処分場を求めることは不可能だ。
それでも政府や電力会社は、処分場を造らなければならない。原発をさらに稼働し続けるにしても、これを今やめるにしても現状のように原発建屋や敷地に放置しておく訳にはいかない。これまでは、地方自治体からの応募を待つという姿勢であったが、現在ではそれをやめて、政府が適当に候補地を定めて地方に働き掛けて処分場を建設しようという事に転換した。応募方式は、東洋町の闘争で打ち砕かれた。
これまで政府が強権でもって処分場を決めるという手法を避けていたのは、成田空港建設の三里塚方式が、極めて危険であり、多大の犠牲と時間がかかったという認識があったに相違ない。
三里塚は空港建設であり、目に見える直接の犠牲者はその土地の農民に限られていたが、核廃棄物の処分場はそうはいかない、広範囲な国民に関係してくるから、三里塚方式の強権を発動すれば、巻き起こる大騒動は処分場どころかその本源である原発そのものの運命にも影響してくる。三里塚以上の大闘争が起こり政権がいくらあっても持たないということになりかねない。
それを避けるためには、利益でつって応募方式に如くはない、ということだったのであろう。その意味で三里塚闘争は、それ以降の国策の強権実施にとっては大きな重しであり歴史的教訓であった。日本では強権発動は、極めて困難だ。
今、政策転換した政府は、核廃棄物の地下処分場開発のために、第二の三里塚を強行するであろうか。
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