週刊朝日の橋下市長へのお詫び
News & Letters/319
朝日新聞11月13日朝刊に新聞社として、週刊朝日の橋本市長攻撃記事についての
見解が掲載された。
一応の総括はなされている。問題は何故今回のような事件が起こったのかだ。
朝日の「報道と人権委員会」の見解も総括が浅い。部落差別攻撃をしたという自覚が欠如している。今回の記事は、部落差別の原型を見るような差別事件なのだ。
それは単に地区名を公表した、とか、記者の認識不足や勉強不足だった、ではない。
執筆者や記者・編集部の悪意が露呈されている。
その原因について以下箇条書きしてみる。
一、第一には、部落解放運動の低迷だ。
世は格差社会が深刻化していて、部落差別も依然として根強く残っているときに、
解放運動はさまざまな不祥事などで低迷している。
この事件だけではないが、差別に対して憤りが見られない。火の出るような糾弾闘争が見られない。部落民の糾弾闘争が、それだけが、依然として差別者に対する差別
キャンペーンの社会的抑制として機能してきたのである。今度の事件はそのたがが
外れた一事例だ。週刊朝日社ー朝日新聞社屋が荊冠旗で埋められるほどの大闘争
が巻き起こってしかるべきである。今回の朝日、先行した新潮社らの編集部はこの解 放運動の低迷をしっかり見定めている。
二、新潮社の差別記事への不問
直接的には、先に新潮社の週刊誌や月刊誌の同様の橋下攻撃がほとんど不問に付
せられたことである。朝日がわびるのであれば、新潮社もわびるべきだ。同じように部 落民の出自を取り上げて橋下を攻撃した。これが宥免されるのであれば、週刊朝日も
許されることになろう。だから、週刊朝日はたかをくくって今回の差別キャンペーンを開始してよい、負けてなるものかと判断したのである。
三、新聞や報道機関の退廃的傾向
真実の報道を軸として、人権擁護や国際平和の推進、環境保全の論陣を張るというの
ではなく、第四の権力者として報道機関が世論操作を通じて権力に影響を与え政治的
野望を実現しようとする。そのためにはでっち上げ、隠蔽、虚偽や人身攻撃、集中攻撃
など多彩な卑劣手段を講ずる。客観的な事実の検証も何もない、おのれらの思いつき
しだいに記事を書く。福島の原発事故の放射能汚染の実態の隠蔽報道や最近起こっ
た「大誤報」の腐敗事件の連続が端的にその姿を現している。
四、民族排外主義と格差(差別)社会、いじめ事件の増悪。
日本の報道機関による「竹島」=独島、「尖閣諸島」=釣魚島の領有をめぐる排外主義キャンペーン、及び日本社会の格差社会の傾斜発展は著しく国民全体の精神構造を
ゆがめ、社会的少数派、弱者に対する差別意識に攻撃性をもたせつつある。
そして、これは皮肉なことだが橋下自身が率いる日本維新や石原慎太郎、安倍総裁などがその排外主義や差別主義の代弁者となってメディアでもてはやされている。
影の報道機関であるインターネットでもヘイト(憎しみ)サイトが横行し陋劣な差別意識の解放の場と化している。・・・・・
対処の仕方の問題点
1、週刊朝日や週刊新潮は問題記事を載せた週刊誌や月刊誌を回収するべきだ。
2、週刊朝日も週刊新潮も、問題の出版物は廃刊するべきである。
3、社長がやめるよりも編集長や執筆記者がやめるべきだ。
4、この事件に関連して部落問題とは何か広く啓蒙的な記事を新聞等で掲載するべきである。その際、今回の朝日新聞「報道と人権委員会」の見解でかけている重大な問題は次のとおりであるので、総括のしなおしをするべきだ。
* この事件が、人身攻撃についての明白な刑事犯罪であること。
* このような人身攻撃・人格攻撃が狭山事件等冤罪事件の温床となり、ひいては、差別排外主義が戦争やホロコーストなど大量虐殺につながる恐れがあること。
* 単に被差別地区名を公表したからいけなかった、とか、人権への配慮がなかった、とかいうのではなく、週刊誌が地区名を挙げて部落差別攻撃をしたという事実を認めな
ければならない。被差別部落に生まれた事を原罪のように指弾したのだ。
そしてその差別的攻撃には何の根拠もないこと、部落差別には正当な根拠は何もないということを闡明しなければならない。
差別には正当な根拠がないという事を言わなければならない。身分を明かしたから
悪かったといって謝るというだけでは、むしろその身分差別を強調するに過ぎない。
それは、松本清張の小説のように暗い事件の主人公の過去の出生・身分あかしと変わらない。
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