大阪府の学区制自由化
News & Letters/286
橋下維新の会は大阪府の高校の学区制を廃止する、とのことである。
これは子供たちの選択の自由をひろめる、ということで歓迎する向きもある。
しかし、維新の会は義務教育や高等学校で学区制が布かれた意義が全く分かっていない。私の町東洋町も学区制が相当崩れていた。いわゆる越境入学だ。
越境入学で東洋町にある二つの中学校の一つ(野根中学校)が消滅しかかっていた。
役場の職員でさえ子弟を越境入学させていたのだ。
越境先の中学校の運動会では、部落対抗リレーのとき、越境組の地区が優勝するなど
喜んでほめてやるべきか、それとも悲しむべきか、困惑したものだ。
私は越境入学に厳しく対処した。
学区制の崩壊は単にその地域の学校の存亡の問題だけではない。
それは明治初年の学制がしかれた時の歴史的事情にさかのぼる。
学区制によって、サムライだった家の子も商人の子も百姓の子も、そして旧被差別民の子供たちも、みんな一緒の教室、同じ机に座らされた。学区制は、身分や貧富によって学校が違うという前近代の制度を粉みじんに砕いた。教室の中だけは身分制度は廃止された。金持ちの子も貧乏人の子もみんな仲良く学び遊ばなければならない。それは単に学科の勉強だけではなく、教室が一個の現実社会を投影して、それを学ぶ場でもあった。金持ちの子や官吏の子が貧乏人の子供とも交流しお互いに理解し合うことになった。
そして、学問に王道なし、という言葉が毎日の教室にさらけ出された。貴族の子や金もちの子よりも貧乏人の子の方が学力が勝り体育も勝るという事態が遠慮なく実現された。
学校を一歩出れば旧身分差別を含む激しい階級差別の嵐が吹きまくっていたが、学校の子供の世界だけは、楽しい清風が吹いていた。
そこは雅に福沢諭吉の「学問のすすめ」の世界で、上下さまざまな身分や職業の子弟が集まり、彼ら自身はそれぞれ階級社会の出身と宿命を負いながらも、努力するものが称揚されるという自由平等の世界であった。この学区制は今も続いている。
学区制では、貧乏人を嫌い金持ちは金持ちの学校に、貧乏人は貧乏人の学校という事が許されない。
学区制を廃止するという事はとりもなおさず、学校を前近代の階級別教育機関に復旧させることである。そして、上流階級の子弟は、貧乏人の友達を失い、貧乏人の生活や感情について何も知らずに社会に出、権力を握り・・・・、ひどい階級社会や国家を形成する。橋下維新の会には、そのようなことは何も分からず、しゃにむに歴史への反動に挑んでいく。
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