(続)軋轢
News & Letters/248
越境入学は絶対に認められないという事ではない。事情によっては教育的配慮で越境して別の学校に通学させる必要もある。だが、住所をごまかし、ふるさとを嫌忌してする越境入学は法令上の問題だけでなく、人権問題でもある。これを放置していると特定の者たちにたいする差別感情を合理化する。
私は役場に入る前から東洋町のこの事実について聞いていたので教委の事務局にこれをただしたところ、そのような事実はありません、という回答であった。これを問題視し、議会内外で論議し出すと、多くの人たちから反目の目が私に注がれた。
いろいろな理由で多くの場合は教育委員会が現状を認めるという事になったが、越境して通学する子供の親たちは、苦々しい思いで私をみていたことであろう。野根中学校の生徒が激減し全校生徒が10人前後になっているのに、甲浦中学校の運動会では地域対抗のリレー競走で、野根地区のチームが優勝するという光景が見られたのである。
正常な心でこの光景を見ていられようか。だが、教育委員会や父兄の方々ににとっては私の言動は許せない事であったであろう。
②校舎・体育館等の耐震補強整備
高知新聞の記事では、東洋町の耐震補強整備率は県下最低であり、その前提である耐震診断すらも満足にできていなかった。教育委員会は何をしていたのであろうか。補強工事ができないまでも診断は完了させ、全校舎の補強工事の計画ぐらいは立てておくべきではなかったか。全体の2,3割しか進んでいず、整備工事の残りはすべて私の行政時代に完遂しなければならないという事になった。
教育環境の整備は教育委員会の最も重要な仕事である。私などは、予算を組む前に財政担当職員を連れて学校の状況を見て回り屋根裏までよじ登って修理個所を確認してきた。教育委員会が学校整備事業に無関心であったのではないか。
③東洋町だけではないが、学校教育で必要な教材はほとんど保護者負担ではないかという状況であった。
公費負担は極端に少なく貧しい子供たちへの請求書の方がはるかに比重が高いのであった。私は義務教育無償を段々と実現しようと決心し、公費負担分を拡大し、最後にはほとんどの教育費において無償化を実行した。
鉛筆もノートも学級費もPTA会費もそして給食費も無償にした。
教育委員会は、保護者や子供たちへの負担の転嫁について何の手だてもしようとしなかった。この4年間の教育に関する新しい事業はほとんど私の主導によるものであった。教育委員会の影がかすんだのではないか。
④東洋町の教育委員会では数年間教育長が不在であり、教育次長が教育長を代行していた。
議会が町長の推挙する教育委員を認めなかったからである。
それは、高知新聞等が騒ぐような違法なものではない。教育長が不在の場合は事務局の職員が代行することが法令で決められている。
しかし、実際上東洋町教育委員会では教育長は私が役場に入るずっと以前から不在であった。教育長は存在していたが、いないも同然であった。そのようなシステムになっていた。
東洋町教委のパンフレット(これは県教委にも提出されていたという)を見ると、教育委員会の事務局を統括するのは、教育長ではなく、教育次長ということになっていた。法令では教育長が事務局を統括し事務遂行の中心ということになっている。
東洋町の場合は教育長は教育委員として雲の上にあり、実務は教育次長が事務局職員を指揮してこなすというシステムだったのである。そのシステムが図表化されていた。だから、教育長はぶらぶらしていていいのであった。
県教委も新聞も、東洋町の従来の奇妙な教育委員会体制、教育長が存在しているが教育長の任務を解除されている状況を何も問題にしてこなかった。
このように社協や教委の問題点を浮き彫りにし、実践的に突き破っていく中では、軋轢も生じるし誤解も呼ぶであろう。社協や教委だけではない、行政の無責任体制について私は悪戦苦闘してきたが、これによって生じる軋轢や矛盾を恐れるようでは、行政をまともに担当することはできない。
実践というのは新しい矛盾の創造的展開であり、矛盾のないところに発展はない。
今までのやり方を続けていたのでは、自分の住む町や村が衰滅するという運命の中にある。
今の時代で封建時代のようにのたりくたりと同じ平穏の中で息をして時を過ごすことはできないだろう。時代を切り開いていく仕事は、文字通り白刃と白刃の切り結ぶ前線の、血の滴る戦いであって、不立文字の世界である。
これからおいおいにはっきりさせていくことになる。
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