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2010年11月 8日 (月)

尖閣諸島

News & Letters/213

尖閣諸島をめぐって、中国船員の釈放やビデオテープ隠匿などで日本政府の弱腰が非難されているが、領有権の主張については政府は極めて強行的である。尖閣諸島の領有はすでに外交的対立案件であるから、正規の外交的対談において、主張すべき事を主張すべきであろう。一方的な領有権の主張は、効力は発揮できないし、関係国に無礼とも言える。

日本側が出した争点は①1895年の日新戦争時明治政府の閣議決定②日清戦争後の下関条約③太平洋戦争後のサンフランシスコ平和条約のこの3点である。

①については、問題にならない。片方の政府が内部決定をしたからといって、無主地や他国の領土を「先占」出来るわけはない。日本が侵略戦争の最中にそのような政府決定をした場合、それは略奪行為の一環として認識される。

②下関条約での中国側の割譲地が台湾とぼうこ島だけであり、尖閣諸島は割譲リストから除外されていた、という。除外されていたということがどうして領有の理由になるのか論理的に合点が行かない。除外されていたということは割譲されなかったと言うこと以外に何の証明にもならない。

③サンフランシスコ条約では米軍の支配の事実があるが、米軍の支配や安保条約の米軍の管轄範囲であるなどということが日本の領有の証拠になるわけはない。米軍は日本軍ではない。人が占領した事実をもって自分の占有行為としてこれを主張するわけにはいかないであろう。もっとも日本が米国の属国であるというのであればその主張は通用するかも知れない。日本はポツダム宣言(カイロ宣言も)受諾という重い歴史的現実がある。それでは日本の領土は限定されている。その限定された中に尖閣諸島は含まれてはいまい。

ポ宣言を受諾した歴史的事実は重い。如何に屈辱的だと憤慨しても、無条件降伏を飲んだのだから仕方がない。

そうしなければ、日本はどうなっていたか分からないのだ。そのときに限定された領土から出発せざるを得ない。もとの領土をというのであれば、外国と交渉する以外になく外国の同意を得るように努力するしかない。

米国の虎の威を借りてでも、一方的な主張、一方的な「先占」行為は他国に宣戦布告すると同じ結果を生む。米国も巻き込んだ日中戦争を仕掛けるとなると、侵略戦争の再来であり、今の中国に侵略戦争を仕掛けるなどドンキホーテ的愚行である。相手がどこであれ、原発など核施設を持つ日本は一方的な攻撃を受けて沈んでしまうであろう。

尖閣諸島は地勢的には中国大陸の大陸棚にある。中国が領有権を主張するのは当然であろう。

人が住めるような所ではないから、中国とても歴史的事実でもって明確な領有権は主張しがたい。往古、中国の冊封使は沖縄(琉球)へ来るとき、尖閣諸島を通ってきている。琉球をも自らの支配地と考えていたのだから、当然尖閣諸島も中国の支配地と考えていたであろう。そこまで遡れば日本側は何も言えない。日本としてはそれは勘弁願いたいところだ。
問題は近代の漁業者であるが、中国(台湾も含む)、沖縄県民ら周辺住民が昔からこの島嶼周辺で操業していた。その事実だけからでは領有権はいずれとも決定できないだろう。

これまでと同じように中国や日本など関係国の国民が共同で利用する以外にないのではないか。領土紛争には、これからは、共同統治、共同利用を設定するというやり方で解決するという道を開くべきであろう。紛争案件がかえって共生共栄の絆となるというふうにして活かすべきだ。

現在のマスコミのあり方は尖閣諸島事件で排外主義を煽り、対中敵対、対中戦争へ世論を盛り上げようとしているとしか思えない。これこそが国民にとって尖閣諸島問題の最大の注意点である。我々は多数の良心的なジャーナリストにもかかわらず、今も昔も、巨大商業新聞を戦争勢力として部類分けをし警戒を怠ってはならない。

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コメント

小生、ここの所の報道等に愛国主義・排外主義的誘導を感じ、嫌になっておりました。
小生には対するものが、歴史的知識が乏しいため祖国敗北主義しかなく、悩んでおりました。
非常に分かりやすく、冷静なしかも明確な論理で整理してあり、やっと自分の意見の落ち着き先に出会えました。ありがとうございます。
共同統治良いですね。
益々のご活躍を、陰ながら応援いたします。御自愛下さい。

投稿: 小安太郎 | 2010年11月12日 (金) 15時31分

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