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2009年5月 2日 (土)

空虚な突撃ラッパ

News & Letters/172

高知県産業振興計画(地域アクションプラン)について

               東洋町長 澤山保太郎

                   平成21年4月30日  奈半利にて

新知事が、産業の振興を声高に唱え、計画とかプラントか騒がしいほどに産業重視の姿勢を見せている。これは前知事とは全く違った姿勢であり、大いに評価される。
しかし、この県庁からの突撃ラッパは、低迷する高知県勢の夜空にはただ空虚な騒音としてしか響いていない。知事の焦りはわかるし、そこがこれまでの知事とは違うところであるが、しかし、県は実質的に県民に何をしてくれるのか、県自身の内実が抜けている。
県の執行部とのアクションプランなる会議に出てもむなしい思いがこみ上げてくる。
若い知事にもっとリアルな話をする人はいないのか。

第1に、県の産業振興計画は県自身のものではない。市町村のこれまでの計画を収集したものでしかない。県は市町村の代表ではないし、市町村のまとめ役でもない。

 県庁の役割がそんなもんであれば県という地方自治体は要らない。
 県は大きな1個の自治体であり、多くの職員と施設と、財政を持っている。
 県は、市町村を越える独自の計画と実行力がなければならない。
 例えば、東洋町の「海の駅」はもともと県の施設(緑地公園)内のものである。
 大勢の海水浴客やサーファーで賑わうビーチに売店がなかった。
 県は、東洋町に県の施設内で道の駅なり「海の駅」なりを作ったらどうだ、とか、資金はこうして賄えばいいとか、しかるべき提案をし指導すべきだった。
 東洋町の「海の駅」は町民が要望をしてできたのではない。新町長が提案し、多くの反対意見を押し切り町民を説得してこしらえたものだ。この新町長の役割を本来なら県が担うべきであった。

 高知県の現状は全国最低なのだ。県庁は、市町村の枠を越えて県勢の起死回生のためには旧来のやり方と根本的に違う発想と手法を示すべきである。
 理論(県の計画)が現実(市町村)に迫り、また、現実が理論に迫るという双方の会話がなければ、何にも意味がない。
 県自身の市町村への提案があるべきだ、と投げかけても、返ってくる答は、市町村から出してくる計画を県がまとめて後押しをやっていく、というばかげた答だけだ。
こんなんでは、何の新味もなく、狭い範囲の旧来の陳腐な計画書の寄せ集めで終わってしまうであろう。

 県独自の計画は何か、という質問に対してゼロ回答なのだ。
 私は具体例としてたとえば二つあげた。一つは県の花樹栽培試験場が余りにもみすぼらしいということである。他府県に比べ、スタッフの員数といい、施設といい、予算といい、全て見劣りがし、激しい競争にまるで刃が立たない状況だ。戦略的施設が姨捨山かという有様である。

高知市西辺の針木の山のてっぺんで、女性ドライバーならよう運転しないと思われる急峻な坂道を上ると粗末な果樹園と施設がある。県の唯一の試験場だ。
産地間競争が激しい世界で次々と特産の新機軸を出さないと果樹園芸の農家は生き残れない。この質問に対して知事は答えず、隣の産業振興監なる肩書きの男に回答を回した。
この男が又大変な答を用意していた。高知県を愛媛県に比べてもらっては困る。向こうはミカン王国だ、高知県は野菜園芸王国だ、果樹試験場は現在の体制で十分対応している、という答であった。

会場には安芸郡下の市町村長が集まっている。馬路村や北川村のゆず、東洋町のポンカン、室戸のびわなど果樹栽培が戦略的作物になっている市町村長の前でそんな答で良いのであろうか。現状はどこも大変なのである。せめて、実情を調査し、足らないところ、充実すべき所を改善するよう検討してみる、というべきであろう。

具体例の第二として、森林資源の活用策について、木質ペレット工場を高知県東部・安芸郡下に設置できないか、用材だけでなく、燃料源として森林を活用する方策を立てないと、広大な森林は放置されたままに終わる、高知県は86%が山林なのである。
ハウスや施設の暖房用燃料を山から安定的に供給できれば、地域産業も助かる。

これは、1つ1つの市町村レベルでは実現できない。
この質問にも、知事の側から、検討するとも、何とも、答がないのである。
市町村を個々単発的に支援するだけではなく、県はそれを有効ならしめる広域的な戦略的事業を計画し実行しなければならない。

第2に、現実をよく把握し、分析して計画や施策をたてているのか、ということである。

 私が、高知県と県外との製造業の収支が6000億円のマイナスでその中でも食品産業の赤字が1000億円であるのは、県の産業構造に基本的な構造的欠陥があるのではないか、と問いかけたところ、1次産業は順調だ、しかし、その産物を付加価値をつけて加工して販売する力がないからそういう結果になっている、だから加工品の事業を強化しなければならない、という答だった。確かに加工品事業が弱いことはそのとおりだが、そんな上っ面の現象だけを捉えて政策を立てているとしたら、高知県庁は少しも有効な県勢浮上策は出せないだろう。加工すべき原材料そのものの生産量がどうなっているか、わかっているのであろうか。

第1次産業、たとえば水産業の漁獲高はどのように落ち込み、いかに惨憺たる有様か考えても見よ。遠洋マグロはいうもがな、80もあった県内の大式の定置網は半分以下になっている。担い手の問題、漁価や燃料の問題などを抱え、運転資金が枯渇して現状を維持できない。農林業も同様だ。1次産業、原材料生産の衰退が根因であり、それへのてこ入れ策がなければ浮上できない。

東洋町の「海の駅」はどんどん物が売れている。しかし、社長である私の憂いは、どんどん売れる商品の確保がむづかしいと言うことである。生産する者が少ないのだ。
この農山漁村で生産活動が枯渇しようとしている。一生懸命これを回復するために、農業団体を作ったり、町直営の会社を作ったりしているが、一朝一夕にはいかない。
私は、ビラを作って隣県の生産者に「海の駅」に出荷してくれるように頼んでいる。
都会には失業者があふれているのに、この山野には働くものの影が薄いのである。

現実を知らず、現実を変ええようという理念や計画も持たずに、どうやって県勢を回復するつもりか、毎度毎度集められて産業振興だ、アクションプランだの空虚なフラーゼを聞かされても時間の空費であり、眠くなっちゃうのだ。
市町村は県の下部組織ではない。市町村長は県知事のご託宣を垂らす対象者ではない。
県は県の理念とそれを実現する戦略を掲げ、独自に、又市町村に協力を呼びかけて自らの事業を進めるべきである。市町村の事業については、黙って財政的支援の手を差し伸べてくれたらそれで良いのである。

優秀な県知事だけに、ここはじっくり苦言を聞いてもらい、腰を据えて考え直してもらいたい。汗にまみれ、泥にまみれて仕事をする、そういうつもりが皆目無い周りの無能な小官僚どもにとりまかれて4年間を空費しないように。

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コメント

昔読んだ吉本隆明の『共同幻想論』を何故か思い出したなあ(^^)

投稿: たま | 2009年5月 2日 (土) 20時07分

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