県教委及び町教委
News & letters 73/県教委及び町教委
東洋町の教育行政はきわめておくれていた。
教育環境の整備の遅れ、教育費の負担、図書館の実質不存在そして越境入・就学・・・・・
教育長の不存在というような問題どころではない。
1、教育環境の整備
野根中学校の体育館の天井一面にはアスベストが施されていて破片が崩落している。また、南北の大窓のガラスは、腐った鉄の縁からはずれて一枚、一枚これも崩落している。きわめて危険だ。
甲浦小学校は運動場が民間の借地で毎年地代の交渉が必要だ。甲浦中学校には体育館が無く、公民館の体育館を共同使用である。ある学校の教室の廊下は雨が降ると一面水浸しとなる。・・・・
野根の小中学校だけではなく殆どの学校の便所は旧式でくさくて子供たちが怖がっている。
耐震構造化は一校を除いて施行されていない。
町には一応図書館があることになっているが、そんな看板の掛かった建物はどこにもない。よく聞いてみると野根の公民館の一角に本が無造作に並べてありそれが「図書館」だとのことであった。
町史もない。「高知県史」10巻すらも購入されていない。県史の1巻は野根の北川家文書であるのだ。
2、東洋町で最も深刻なのは、野根中学校の存続を風前の灯火とする越境入・就学の野放しだ。
野根中学校は今全校生徒10名前後しかいない。
普通学級がくめず複式学級になっている。
小中学校あわせて数十名のものが地元の野根小中学校に通学していない。以前はこの越境入学も問題にされていたが、最近では当たり前の風習になっていた。越境入学の際には住所を偽って変更し別の校区に住んでいるように住民票をごまかす。
学校も教育委員会もわかっているけれど、黙認してきた。クラブ活動を理由にするが、越境入学がなければクラブ活動は出来たはずだ。
東洋町の越境というのは、野根小中学校から甲浦小中学校へというケースが多いが、野根又は東洋町から徳島へというケースもかなりある。
町民の認識に問題があることは勿論だが、これを指導し、義務教育の法律を守らせるのは教育委員会であり町役場である。
義務教育というのは、ただに小中学校に就学させればよいという問題ではない。私立は別として定められた校区(学区)の公立学校に就学させるという義務のことである。
これは明治6年の学制改革の根本原則であり、貴族や士族の子も平民の子も、金持ちの子も貧乏人の子もみんな一緒の学校に就学するというもので、日本近代100年の鉄則なのであった。これまでのような貴族は貴族、武士は武士、町人・百姓は寺子屋という身分差別教育体制が根本から否定された。
この鉄則を東洋町教育委員会は守ろうとしなかったのである。
これを私は、議会内外でずっと正常化と、法律遵守を呼びかけてきたが、ものすごい抵抗にあった。
正常化できないので、住所偽装だけは正してもらって、暫定的に越境の現状追認でお茶を濁している。新規の越境入学の抑制だけには協力をお願いしている状況だ。
その結果今年の小学校6年生の卒業生4人は全員野根中学校への「進学」が決まっている。また、野根の保育園児8人のうち7人までが野根小学校へ入学してくれるということである。
昨年の7月25日、東洋町は、正式に県教委に対し、東洋町の他県にまたがる越境入学問題を提起し、そのため一つの小中学校が廃滅しようとしている状況について調査を申し入れたが、「そんなことは市町村教委の問題であって県教委の関与することではない」という趣旨の回答を頂いた。
南国市の被虐待児童の放置といい、東洋町の越境入学といい、県教委は真の教育問題にはほうかぶりだ。
市町村教委の問題に関与しないというのであれば、今回の東洋町の教育長問題に関与するのはどうしてなのか。関与して悪いというのではない。事前に折衝もなく、事前の指導もなく、なんらの事情聴取などしてくれなくて、いきなりの改善命令だ。これは内容的に実質的改善命令である。地方自治法で言えば、第247条の指導とか助言ではなく、第249条の是正要求に他ならない。「指導」する前に一種のショウを仕立て、テレビや新聞発表の一大センセーションを計画していた。教育長不在が東洋町の教育問題ではない。それは、現在の教育委員会が教育長を選任すればそれで終わることだ。新たな委員が要るというなら議会の承認があれば簡単に解決できるだろう。
越境入学で学校が消えようとしている事実、アスベストの破片が落ち、天井近くの大窓から数百枚のガラスが崩落しかかっている体育館、これらを放置していることこそ教育問題ではないのか。一度実情を調べに来たらどうだ。
東洋町の越境入学問題という重大な教育問題には、関与を拒絶しておいて、今回突然の関与を発表した。その姿勢と動機が解されない。
教育長の不在で何か実質的な重大支障があるのであろうか。
今、東洋町教育委員会には3人の教育委員がおり教育委員長がいる。教育委員会の権力者は、教育委員であり、教育委員は諮問委員や審議委員ではなく、行政の執行官なのである。その下の事務局には、課長級の教育次長(教育長代理)がおり、課長補佐がおり、その下に5、6名の事務局スタッフがいる。
3000人の小さな町でこれらの上にさらに教育長を置けば、どうなる。屋上屋を重ねる管理職の重層だ。
県は、市町村の教育委員会が形骸化し、余り機能していないし、経費がかかりすぎるから、市町村の教育委員会を廃止し、教育委員会を広域化(市町村合併の部分的推進)する計画の元で市町村長を集めて説教をしているところである。
私は教育委員会の機能の強化、効率的運営、経費の削減には賛成であるが、市町村教委の廃止・統合には明確に反対してきた。市町村長や県の担当職員のおる前でただ一人はっきり反対を表明してきたのである。県の方針の趣旨からすれば、委員がおり、教育委員長がおり、課長クラスの次長(教育長代理)がおり課長補佐がおるのは過大な管理体制であるから是正せよという「指導」があってしかるべきであろう。
越境入学問題は確かに市町村教委の問題であるが、市町村教委の重大な法令違反、法令遵守の懈怠、それによる学校教育の空洞化は県教委の問題ではないであろうか。県教委は県教委の事務をやっておればいいというのではない。今回のように市町村教委のあり方を指導する任務を持っているし、それが県教委の仕事である。
新聞社の存在意義
小さな町で、最高の責任者として教育委員長がおるのに「責任者不在」とは何のことだろう。
高知新聞やテレビは東洋町の教育問題で最も深刻な越境入学(「区域外通学」)問題はオミットしてきた。教育行政をむしばんでいる重大な社会問題には目をつぶり実質的に何の害もない管理職の存在不存在については大々的に取り上げる。
原環機構の核廃棄物は安全の宣伝をしている高知新聞は、東洋町の条例では、禁止措置の対象となる。核の宣伝は東洋町ではやらないでください。
東洋町の核禁止条例では、核を持ち込むだけではなく核の宣伝をすることも禁じられている。
彼らにとっては、核反対の地方自治体が高知県に存続することはにがにがしいことであり、許せないことなのであろう。
われわれはいかなる悪宣伝にも屈せず、住民のための行・財政改革を推進し、東洋町を、核に反対し、いかなる利権にも反対し、住民の自己権力の町として美しく発展させていくだろう。私はそのための犬馬の労を惜しまない。
教育長不在の10ヶ月
教育長はいないけれど、この10ヶ月間東洋町では教育分野で大きな前進をしようとしている。
1、越境入学問題は町内に浸透し、これを押しとど
めよう、改めようと言う町内合意ができあがりつ
つある。野根小中学校は入学生が増え持ち直し
始めた。保育所も延長保育や保育料金などの実
質大幅軽減などで充実し県外に出ていた園児た
ちも東洋町に戻って来つつある。それどころか、
町外の子供も東洋町転入の機を窺っているとい
う。
2、教育環境の整備をするため、
町長が予算編成担当職員を連れて、教育委員
会事務局と一緒になって学校現場を全て回って、
小さな改善は直ちに予算措置をし、アスベストな
ど緊急防災にも現場で大きな予算措置を講じ
た。学校図書費も倍増した。
父母に請求していた教育費も基本的に町への請
求に変え、総額100万円の教材費を予算に組ん
だ。日本で初めて義務教育無償の憲法理念を実
践的課題に取り入れた。
就学前までであった医療費も小学校3年生まで
に引き上げた。やがて中学校にまで無料化が準
備されつつある。
町史編纂委員会も立ち上げる予算を計上した。
全国の古本屋に問い合わせて高知県史10巻を
30万円で購入し、野根北川家文書の巻は複数
冊購入した。
全く名ばかりの図書館を整備するために毎年10
0万円の予算措置を講ずることにし、民間の司書
を中心にして運営委員会を立ち上げ、寄贈本を
全国に呼びかけて本を収集し、宅配サービスで
本の貸出業務を活発化することにした。
そして、低迷する学力を底上げするために、保育
園から教育的要素を取り入れ、学校での落ちこ
ぼれを無くし高学力を保証する事業を取り入れよ
うとしている。町長みずから保育園に出かけて子
供や保育士とともに数の遊び、ABCの歌などを
歌い始めた。
町長はまた、教育委員会に対し、町長が講師と
なって学校の教壇に立てるよう申し込んだ。
そして、今回の県教委の強硬措置の真の理由ではないかと思われる1件がある。それは、県教委が全県下でやっているCRTの業者テストを東洋町が拒絶したことだ。
文部省も、県教委も授業中に業者テストを実施することを固く禁止する通達を繰り返しだしていた。県教委はその業者テストをやれというのである。この業者テストは文部省関係の怪しげな団体が全国的に展開しているもので、高知県もこれを全校取り入れるに到った。しかしこのテストは、間違いだらけの上、答案用紙も戻ってこない、答えも分からない、一片の評価が来るが、生徒の人も成績も違っても同じ紋切り型のコメントがついているというふざけた内容のものである。回答方式もマークシート方式で当てずっぽで答えても30%の確率で当たるというしろものだ。
県教委はこれを毎年6千万円で契約しその半分を市町村に半強制的に負担させてきた。東洋町は今年それを拒否した。それがきにいらないのであろう。
反教育的内容の業者テストを授業中にやらせるための金は一銭も出せない。
高校でも「進研模試」など業者の模擬テストをやるが、他は知らず高知県の公立高校では絶対に授業中にはそれをやらせていない。今でも休日か放課後にやっているはずだ。1時間でも授業が大切だからだ。
CRTテストは欲にたけた怪しげな連中が作成し採点し評価まで下すという教育の代替行為であって、民間業者へ教育を委託すると言うに等しい。
それをかつての県教委も文部省も各新聞社も厳しく批判して、業者テストは全国的にやまったのであった。それをいま県教委が市町村に強制させているのである。
そもそも教育委員会の法律で決まっている役割は、教育環境の整備行政である。教育の内容にまで容喙することは権限外のことだ。内容にまで入りたいなら資格なり、許可を取って一個の教師となり教壇に立つ以外にない。教壇に立つ教師は良心以外には束縛されない、無冠の帝王であって、いかなる権力も介入してはならないのである。権力の教育への介入を東洋町は拒絶した。当然のことだ。
我々にも選択権がある。テストが必要なら業者テストではなく、先生方や教育委員会がみずから作成してやればよい。その場合は、答案用紙も返し、間違いを訂正させ、正解も教えなければならない。それがまともな教育というものだ。
教育長は現在、教育長代理が正規に任命されて仕事をしている。人材不足から教育委員の受け手がいない、常勤の教育委員はなおさら難しい状況だ。すぐには用意できない。教育委員の任命は町長であるが、実際には議会の承認が要るから、議会が任免を左右できる。議会が、気に入らない者は、委員になれない。町外はだめだというのが議会の意向であるが、地元にはさなきだに人材が乏しく、就任を要請してもなり手が少ない上に教育長はなおさら難しい。議会答弁など困難な業務があるからである。
町長としてこれまでつい昨日まで欠員の教育委員就任を打診し続けており、これまで数十人に当たっているのである。今も数人に折衝を続けている最中だ。教育委員だけではない。人口減少で各種の委員就任にはその人選が困難になっている。
そんな市町村の現状を熟知している県教委(だからこそ市町村教育委員会の広域化を進めて回っている)は、適当な人を推薦するなどアドバイスすることがあってしかるべきだし、少なくとも事前に事情聴取すべきだ。センセーショナルなパフォーマンスで新聞沙汰にして済む問題ではない。
かくて東洋町の教育行政は大前進中である。県教委は権力をかさに着て空疎なパフォーマンスに酔うのではなく、その改革の実情を調べに来て、成果と将来の展望を教訓にし、東洋町の教育行政を他に普及すべきである。
| 固定リンク
「教育行政のありかた」カテゴリの記事
- 議会開会中の私費韓国旅行(2020.03.19)
- 森友学園籠池夫婦の補助金裁判(2020.02.22)
- 憲法第26条 義務教育(2019.09.03)
- 教育に関する国の法律(2018.03.22)
- 文部省の越権行為(2018.03.17)
コメント